第28話救助に来たのは…

これからどうするかを二人で考えたが、下手に動くと更に遭難してしまう危険性があるのでこの場にて救出を待つコトとした。


私は遭難した経験などなかったから不安に襲われると誰か早く救出に来てと胸元を握りしめる。

すると一瞬、紫色の淡い光が胸元辺りで輝いたように見え、今の光は一体なにかと胸元を確認しようとした時、ソフィが私の不安を感じ取ってくれたらしく励ましてくれた。


「エリー、大丈夫ですよ。今回は迷子になってしまいましたが、

私はこれでも魔法使いとしても聖職者としても優秀な部類ですから、

貴方のことは私が必ず守ってみせます。」


まだ八歳児の女の子の口から出たとは思えない程の男前な台詞に、私は驚くと同時に安堵させられる。


次にソフィは森に落ちていた乾いた木の枝を集め、地面にそれを積み重ねるとその中心に向かって手を伸ばし、


「紅く燃ゆ揺らめきよ、我を導く灯火とならんが為、ここに咲け。『イグニッション』」


すると、積まれた木の枝の中心から火の気が立ち登ると瞬く間に焚き火となった。


「これで暖も取れ煙も上がり、救援にも見付けてもらいやすくなるでしょう。」


「ソフィ、凄い‼︎」


「ようやく私の凄さを理解して頂けましたか?魔法だけではなく奇跡だって扱えますよ。」


「奇跡?」


「奇跡を知りませんか?奇跡とは女神選びし心澄みし者、奇跡与え他敬う。」


「はい?」


「すみません。それらしく難しく言ってみただけです。まぁ、簡単に言うとですね、

奇跡とは光の女神ディア様の名において、主に回復や防御、浄化等の奇跡を与えることです。」


「じゃあ、魔法とは違うんだ?」


「厳密には一緒ですね。ただ扱える属性の違いです。

奇跡は光。呪詛は闇。魔法は残りの属性ですね。代表的なのは火水風土雷などです。

中にはエリーのようなスキルから発生する特殊魔法もありますね。」


「ふーん。ならなんで奇跡とか呪詛とか分けちゃうのかな?全部魔法で良いのにね。」


「イメージもありますからね。光は神聖なモノ。闇とは恐ろしいモノ、みたいな…

まぁ、本音は大人達の都合と言った所なんでしょうが…


話は戻りますが、自分の魔力に合った属性って結構限られているんですよね。

大体の者は魔力無しで魔法を使えないか、もしくは属性一つ持っていれば良い方ですかね。


そんな中でも光属性と闇属性は希少なんです。

滅多にいないんですよ。奇跡を起こせる存在って…

他ならぬエリーにだから話したんですからね。他の人には言っちゃダメですよ。」


「わかった。できる限り秘密にするね。」


「フッフフ。できる限りですか。

まぁ、そうして下さい。あっ、あと雷属性も結構希少ですね…んっ?」


私がソフィに奇跡や魔法について教えてもらっている最中、近くの草が揺れると物音を立てた。

するとソフィが立ち上がり、音のした方へと警戒心を露わにする。


「警戒して下さい。立ち昇る煙を見つけやって来た者が人とは限りません。」


そう言うと、彼女は私を手で庇う様にしながら自身の背後へと隠す。


「やっ〜と見つけたよ。」


そう発言し、草むらを掻き分け出てきた人物はシスター服を着ていたがソシエではなく、見ず知らずのまだ二十代前半位か目を引く金髪をなびかせた女性だった。

背丈は高くなく、体付きは華奢であり、顔は童顔で可愛らしい。

その見た目は非常に女性らしいのに喋り方や立ち振る舞いは姉御肌っといった感じで、相手に不思議な違和感を与えるような人物だ。


「大丈夫、大丈夫だよ。人の姿に化けた魔物の類いじゃないからそんなに警戒しないでおくれよ、

私はあんた等が行方不明になったと聞いて善意で捜索しに来たんだからさ。」


「一人で来たのですか?他の方はいないのですか?」


ソフィの質問に女性は、


「安心しなよ。仲間数人で来てるから。

間隔を開けて横で連携を取りながら広範囲を捜索してたのさ。


ほら、待ってな。オーイ此処にいたよ‼︎」


女性が叫ぶと周りから複数の男性の声が返事を返すのが聞こえ、


「ほらね。一人じゃないだろ?

さッ、その焚き火を早く消しな。マザーメルロが心配してるから早く帰らないとね。」


女性に言われた通り、私達は焚き火に砂を被せて火を消すと女性に促されるまま、彼女がやって来た道へと足を運んだ。


「にしてもあんた等、よくこんな森の奥深くまで潜り込んだもんだね。

こっちとらここまで来るのに苦労したよ。」


「ソフィの足が思った以上に速くてどんどん森の奥に入って行っちゃったんです。」


「そ…それは、エリーが付いて来ないでと叫んでも、ずっと後を付いてくるからです!

私一人だけだったらこんなに奥深くまで来ませんでしたよ。」


「そっか…そうだよね、私のせいだよね…

ごめんね。ソフィ」


「あっ、謝らないで下さい。今のは売り言葉に買い言葉です。本当は全部私のせいです。

だから…こんな事に巻き込んでしまって

ごめんなさい…です。」


私とソフィのやり取りを聞いていた女性は、私達の背後で大笑いすると、


「あっはっはっは。生きて見つかったんだから、そんなに気にする事じゃないさ。それにアンタらはまだ子供なんだ。

これくらいのコトはしょうがない‼︎っても、まぁ、次からは気をつけなよ。


いくら南方の端の平和な村でもゴブリンやコボルトなんかが時々湧いたりするからね。」


すると左右の脇道から先程返事を返したであろう、捜索に来ていた男性が四人程表れ、


「この子達が例のぉ…?」


「そうさ。」


女性は男性と最小限の会話をやり取りすると隠し持っていた注射器を、突如、私の背後から首筋に刺すと中身を注入し、


「あんた達には感謝してるんだ。

なにせメルロのババア。それにいけ好かないソシエの野郎といい…

それと…あんたの父親。ありゃ何者だい?

なかなか隙が無くてねぇ〜、随分と手こずらさしてもらったよ。

私はねぇ、あんた等を監視しながら誘拐出来るチャンスを虎視眈々と伺ってたって訳さ。」


私は首筋に痛みを感じ、即座にその部位を手で押さえたが、直後、唐突に意識を失い地面へと倒れ込んだ。




ソフィアは倒れたエリーを見るなり、この女が敵だと瞬時に理解すると魔法による反撃を試みたが、完全に不意を突かれたコト、

魔法を使うには間合いを詰められ過ぎていた為、四人の男達に羽交締めにされると口元を抑えられ地面へと押し倒される。


「どっちらか一匹でも良かったんだけど、

あんたのお陰で二匹とも捕まえられたよ。

ありがとう。

お礼にちょっとの間、眠っといておくれ。」


そう言い終わると、新たな注射器をポケットから取り出し、エリーにしたようにソフィアの首筋にも注射器を刺し込んだ。


そして、


「くっくっく…あたしは運がツイてたよ!

あっはっはっは‼︎」


夜空に女のたから笑いが響き渡る。







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