第25話ソフィア・ハーガリィ
先生が私に会って欲しい人物とは教会の孤児院にいるソフィアと言う名の少女で年齢は私より一つ年上らしい。
どうやら彼女はほんの数ヶ月前に事故により両親を目の前で亡くしており、事故現場で一人生き延びていた所を先生とソシエにより救助され、この孤児院に引き取られたようだ。
二人は私の授業が終わったのちソフィアの元に毎日通うも、最愛の両親の死を目の前にしたことにより彼女は心を固く閉ざしてしまっているようで、
要は私にソフィアの友達になって欲しいようだ。
先生とソシエはかねてよりソフィアの両親とは親交があったようで、二人は残された彼女を心配している。
私達は小屋から教会へと戻ってくると別館の中に入り、彼女のいる部屋の前へとやって来た。
扉の横には人が立っており、先生達と挨拶を交わした後、この場から離れていった。
本来、孤児の子供達は大部屋で皆んなで共同生活しているらしいのだが、ソフィアはまだこの孤児院に来たばかりで、
尚且つ、両親を失ったばかりなので今は個室を割り当てられているらしい。
先生達の話によるとソフィアはまだ七歳にして数多の魔法を習得している天才肌の少女のようだ。
それ故にこの孤児院では彼女の存在を余りおおやけにせず、保護しているとのこと。
なにせこの時代。
将来有望な子供は人さらいに狙われやすく、何処の国やら権力者に奴隷として高値で売られやすいのだ。
先生がソフィアのいる部屋の扉をノックすると、数秒待ったのち扉が開くと中から女の子が節目がちに立っていた。
そんな少女の姿を見るなり、これはアイドルとしての性なのか…
私はソフィアの外見について細かくチェックしていた。
この子、顔が小さく目鼻立ちも良い。美人さんだわ。
まだ若いのもあり髪の色艶も良く肌も綺麗。
スタイルも良く、まさに容姿端麗と言う言葉が似合うわね。
表情に影がある所もファンからしたら守りたくなる要素でもある。
歌声やらダンスの腕前はまだ分からないけどまだ若いし、この先どうとでもなりそうね…
…合格だわ。
この子となら…一緒にアイドルグループを組んでやっていけるかもしれない。
私は先生の願い通りソフィアと仲良くなり、
アイドルグループの一員として引き込むことを決めた。
そうこう考えているうちに先生が私を紹介していたようで、
「こちらは私の生徒のエリーさんよ。」
「‼︎っ…初めまして、エリー・ガーランドです。」
「…ソフィア・ハーガリィです。」
玄関先で立ち話もなんなんでっと先生は部屋の中に上がらしてもらうことにした。
すると部屋の入り口辺りに変な魔法陣みたいな絵が描かれていて、これはなんだろう?っと私は目を惹きつけられていたが、
その時、
「ソシエさん。お願いしますね。」
「お任せください。」
先生がそう言うとソシエは頷き、部屋には入らず、小屋でそうしていたように外に残り部屋の扉の前に待機した。
そして、私達は部屋の中にあるテーブルを囲い椅子へと座りこむと、
「ソフィアさん。どうかしら?もう此処にはなれたかしら?」
「…。」
先生の問いかけに応えられずに俯くソフィアの表情はどこか辛そうだ。
「そうよね。まだ辛いわよね…」
そして、先生はこのタイミングでなぜか再度私を彼女に紹介した。
「そうそう…そうだわ。ソフィアさん。
こちらのお嬢さんがね、今、私が教えている生徒のエリーさんよ。」
ソフィアは俯きながら少しだけ私を見ると、すぐさま視線を逸らした。
「ソフィアさんも魔法や奇跡を覚えるのが大好きでしょ?エリーさんの使う魔法も凄いのよ。」
するとソフィアはこの話に多少興味を惹かれたのか、私は彼女と目が合うと…
コレもアイドルを目指す者の性か、目が合った相手には反射的ににこやかに微笑むように私の体はなっているのだ。
するとソフィアは一瞬、ビクッと体が驚いたかのように動くとすぐさま顔を赤くし、私から視線を逸らすと先程よりも更に俯き、
「なっ…なにこれ?いっ、いや…嫌よ。」
そう言うと彼女は胸元を押さえ、次の瞬間には部屋から飛び出してどこかへ行ってしまった…
この場にとり残された私と先生は突然の出来事に唖然としながらも、
「あらあら…多少、荒療治でもエリーさんと仲良くなってもらいたかったのだけど、この方法はイケなかったのかしらね…」
「えっ?」
「ごめんなさいね。エリーさん。ソフィアさんには早く元気になってもらいたかっただけなのよ…」
「えっ?」
「うーん…どうしましょうか…」
「あっ…私、ソフィアさんを追いかけてみます。」
「まぁ!そうしてくれると助かるわ。
ほら、わたくし、もうおばあちゃんだからあんなに早く動けないのよ。おほほ。
それではエリーさん。後はよろしくお願いしますね。」
まさか、あの先生がお手上げ状態だったなんて、私は慌てて部屋から出ると扉の前でソシエが彼女の走っていた方向を教えてくれた。
「エリー、ソフィアは正面玄関の方に向かって走っていきました。」
ソシエに教えてもらった通り、私は別館の玄関を出てみたが庭にはソフィアの姿など無く、教会の敷地内を出て草原を見渡してみると、
森の中に向かって走っていくソフィアの姿が見えたので慌てて後を追いかけたのだが、彼女が入っていった森への入り口の直前で、私は一旦立ち止まってしまう。
私はこの森の中に立ち入ったことがない。
だから、この中に一人で入って行ったら迷子になるかもしれない。
そう思い後ろを振り返ると教会の入り口辺りからソシエがこちらに向かって走ってくる。
だが彼女を待っていたら、まだ辛うじて見えているソフィアの後ろ姿を見失いかねない。
あの子は私とは違い、まだ本当の子供だ。見捨てる訳にはいかない…
私は意を決して彼女を追いかけることとし、ソシエを待たずに森の中へと入り込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます