第24話異世界アイドル誕生
私は二人にアイドルとは歌って踊って皆んなに生きる活力を分けあたえる仕事だと伝えると、
「詠って踊る?はて…吟遊詩人のことかしらね?」
「詩人でも踊りながら詠う方は見たことありませんね。多分ですが舞台女優のことではないかと思います。」
どちらとも本当に知らなさそうなので、私は実践を踏まえてアイドルとはどうゆう存在か、及び特訓の成果の確認も含めて二人に見せてあげることに、
なお、選曲は元気の出るアイドルソングを歌ってみることとした。
それはめっちゃくちゃ休日祭日を喜び希望する歌詞で少しだけ夏のラブソング要素も入っている。
そして、私が歌い始めようと体に合図を送った時、それは突如起こった。
私にもどこからか聴こえてくる。その曲のメロディーが…
そして、それだけじゃない。
あのアイドルがPVで着ていた衣装にいつの間にか服装が変わっていて、
先程まで小屋の中にいたのに、私はアイドルがコンサート会場で歌うかのような舞台上に立っていて、そこから客席を見渡すと最前列には先生とソシエが、
そしてよくわからないけど、黒いシルエットで全身が影で隠れた人のような軍団がまるで私のファンとでも言うかのようにペンライトを振り、歓喜の声を上げ会場を埋め盛り上げてくれている。
「まぁ!!こ…コレは!?」
「えっ、エリザベス様ご無事でしょうか!」
私だけではなく、あの二人でさえ突然の出来事に驚きを隠せないでいる。
「ここは一体⁉︎幻術?転移かなにかの魔法でしょうか⁉︎それにこの者達は…」
取り乱すソシエを静めるようにエリザベスは、
「ソシエさん。大丈夫ですよ。」
舞台の上で歌う彼女を見上げながら、
「今はエリーさんの詩を静かに聴きましょう。」
そんなエリザベスの視線の先を見たソシエは驚愕を隠せないでいた。
「これは…エリー?…すごい……」
薄暗い世界の中、エリーの立つ場所だけが明るい光に照らされていた。
そんな光の中心に立ち、詩を詠い、その歌詞を体現するかのように踊るエリーを色とりどり鮮やかな無数の光達が彼女を引き立てるため目まぐるしく動き回る。
いつの間にか着替えたであろう服装は、南大陸中を旅して来た自分でさえ見たこともない奇抜な服装だったが、不思議と嫌悪感など抱かなかった。
多少破廉恥にも見えるその衣装にむしろ斬新さを覚えると同時に着こなしている人物と舞台の演出の効果も重なり、目を釘付けにされている自分自身を認めざるをえない。
エリーが立つ舞台、彼女を引き立てる全てが全く見たこともないようなモノであり、
そんな未知のモノの全てがこの世界の主役は彼女だと言わんばかりの主張にソシエは言葉を失う。
そして、なによりも彼女の歌声はこの空間に響き渡り、力強くもありそれでいて聞きごごちも良い。
それを補佐するかの如く聴いたこともない旋律が彼女の歌声と重なり、感情が激しく揺さぶられる。
正直な所、詩の内容はなにを言っているのかソシエには全く理解などできなかったが、
そんなことは気にならないくらい、勢いに圧倒されてしまった…
むしろ、エリーと一緒にこの詩を口ずさみたい。
そんな想いが普段冷静沈着な彼女からは想像も出来ないような行動に一歩足を踏み出させてしまう。
周りの騒ぐ観客達と共にソシエは、
「いっ…いぇーい。イェーイ!」
片腕を何度も振り上げながらリズムに乗っかってしまう。
そして、それはエリーが歌を歌い終わり、コンサート会場から現実世界に戻ってもなお続いていた。
「Yeah〜!ホリデー‼︎ホリディ‼︎」
ソシエが我に帰った頃には、あの不思議な空間からいつもの古びた小屋の中へと世界が戻されていることに気が付くと周囲を見渡し、
妹弟子のエリーと師エリザベス。
二人の好奇心に溢れた眼差しを感じ取り、ソシエは振り上げていた右腕を腹部まで下すと両手を重ね、いつもの冷静沈着な彼女に戻ると何事も無かったかのように、
「エリー…大変…素晴らしいかった…ですよ。」
そう言うソシエの顔は今にも火を吹き出しそうなほど赤く染まっていた。
それを見た先生は、
「おっほっほっほ。エリーさん。ソシエさんの言う通り、大変素晴らしい詩でした。」
笑顔で笑いながら両手を叩き拍手喝采すると
、それに連なるようにソシエも拍手してくれた。
「エリーさん。アイドルと言う職業は大変素晴らしいモノなのですね。」
私は二人にアイドルの凄さを伝えられて鼻高々だった。
ただ、先生はコンサートを体験したことで、私の能力の新たな効果を発見したようだ。
「エリーさんの先程の詩を体験してから、
体の内側から力がみなぎってきますね。」
その発言を聞いて、もう一人の体験者でもあるソシエも、
「確かに…エリザベス様のおっしゃる通り、私も内側から力が湧き出るような感覚があり、さながら高揚感が抑えきれなかったと言いますか…
一体なにを申し上げたいのかと言いいますと…先程のアレも…その…エリーの詩を聴いた効果と言いますか…
アレは本来の私ではなかったという訳です。」
先生とは違い、ソシエは分析ではなく弁解をした。
話は戻り、先生曰く、私の【コンサート】には魔法でいう所のバフの効果というものが、聴いた相手に乗るらしい。
今の所、効果を聞く限り、誰しもが歌を聴いた時得る感情が、
私の魔力により何倍にも増幅されバフの効果と言われる位の力となって聴き手の体内で効果を発揮するようだ。
まぁ、まだ詳しいことはよくわからないけど例えば感動が気力回復だったり、高揚感が攻撃力上昇とかかな?
そして、先生は私の能力を把握した上である人物に会ってもらいたいと私に頼むのだった…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます