第21話能力を把握しよう③

突如、意気消沈した私を見て、先生はどうしたのかと質問をして来た。


「私の能力は他人を無理やり魅了してしまう能力でそれは本当の私の魅力ではないし、本当の私を好きになってくれた訳じゃない…


それに能力を掛けてしまった相手を騙しているようで罪悪感を感じてしまうんです。」


私の言い分を聞き終わると先生は首を横に振り、


「それは違うわ。エリーさん。


貴方の能力はサキュバスやセイレーンのように思考を停止させて相手を強制的に虜にするような力じゃないわ。


相手の自由意思を奪う訳でもなければ、幻覚を見して自分の姿を偽り相手を騙してる訳でもないのよ。

皆んな本来の貴方に魅力を感じているから、それが増大されてしまうの。


それにね、エリーさん。魔力によって貴方の魅力が増大されようがされまいが、貴方の人としての魅力はそれでも表せないくらい大きくて素晴らしいものなのよ。」


そして、先生はにこやかに微笑み、


「私は貴方の力に触れれて良かったと思っているわ。

なにせ、こんなに誰かを想い嬉しい気持ちになれたのなんて一体いつ以来でしょうね…」


先生の表情はその言葉とは裏腹にどこか寂しそうで、きっとその最後の誰かを想い返しているんだと思う。


「エリーさん。貴方の能力は皆んなを幸せにする為の素晴らしい能力よ。

だから恥じるのではなく、この力に選ばれた自分に誇りを持ちなさい。」


ーこの力に選ばれたー


先生の話を聞いて、私は自分の誤った認識に気づかされた。


皆んなを魅了し、私を見て嬉しい。元気を貰えたと思ってもらえるなんて、

まさにそれこそがアイドル冥利なんだと何故気づかなかったのだろう…




前世の子供の頃、テレビの画面で虜にされた女性アイドルを渚は思い出す。




あの人は私のことなど知らない。

でも、あの人は私に色々なモノをくれた。


彼女を見るたびに元気を貰え、喜び、憧れ、それだけじゃない。

夢まで私に与えてくれて、それに向かって夢中なって生きるということが楽しいことだと教えてもらった。


そうだよ。この能力こそ私に相応しい能力じゃないか⁉︎

むしろ、私にとってこれ以上の能力は存在しない‼︎


皆んなを魅了してしまったのなら彼女が私にしてくれたように、今度は私がみんなに元気を分けて、喜んでもらって、人生に新たな楽しみを得てもらう為に頑張ればいいのだ。


この能力を絶対にモノにしなければいけないと私は胸の前で両手を握りしめ気合を入れた。


そしたら、それを見た先生は「おほほ。理解してもらえたようで良かったわ。」っと笑うと、次は歌声以外でも声に魔力が乗るのか試すこととなった。


最初は発声練習で先生は昨日、海辺で一人で発声練習をしていた私を見ていたようで、発声練習は最初は小さい声から始めると良いと教えてくれた。


先生もシスターとして教会で合唱をしたりするらしく、歌の練習にも詳しいらしい。

まず、最初は少ない力、少ない呼吸からはじめる。そして徐々に筋量と呼吸量をふやしていく。


いきなり大声は失敗する。


声は息が声帯を振動させて口などの空間で共鳴して声になる。

など色々教えてもらい、特に力まず脱力して発声すると良いようだ。

そして、うつ伏せに寝転びながら練習すれば体に余計な力が入らず尚良いとのこと。


ただ、この小屋にはベットはないので先ずは小さな声で発声練習をすることから始めた。


でも、前回の発声練習で鳥が空から落ちて来たことから分かるように、発声にも魔力が宿るようだ。


次に先生は普通の日常会話にも魔力を宿すことができるのか検証した。


ただこれは今までも私達は何度も会話をしているし、その都度、私の声に魔力が宿った形跡はないようだったと先生は語る。


「じゃあ、エリーさん。心の底から想いを込めて、私にありがとうとおっしゃってみて下さいな。」


私は言われた通りに心の底から先程の出来事や、先生と会ってからまだ数日しか経っていないが感謝の気持ちしかなく、それを想うと胸の内から込み上げて来るものがあり…


「リリィ先生。私に出会ってくれてありがとう。」


余計な台詞まで付け足してしまったが、例の先生の、


「まぁ!?かっ…かわいいわ。私こそありがとうだわ⁉︎」


驚き声と発言内容が結果を物語っていた。


どうやら、私の魔力は感情の昂りや想いなどに敏感に反応するようだ。


そして、先生は私の能力をある程度は把握できたからとまた胸元を握り締めながら、


「きょ…今日のエリーさんの能力の分析はここまでにしましょうか…ハァ…ハァ…

でないと、私の心臓が持ちそうもありませんわ、オッホホホッ。」


「えっ…えへへ。」


私的にはまだ隠された力はないか調べて欲しかったが、先生が心臓発作を起こす前に今日の能力の把握はここまでとした。


ただ、先生曰く、コレはあくまで能力の影響を受けたことによる体験からの分析であり、私の能力の本質が本当に分析通りとは限らないとのこと。


だから、もしかしたら検討違いかもしれないし、まだ知らない力が他にもあるかも知れないと先生は語った。


でも、私の印象としてはおおむね正しいように思えた。

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