第18話両親へご挨拶
リリィは私を教育する前に、私の両親に許可を得たいそうだ。
だから、明日改めて挨拶に行くからと両親に伝えておいて欲しいと言われ、二人は私を家の前まで送ると今日はこれでリリィ達とはお別れとなった。
私は家に着くなり、アヴェントとエセルに今日あった出来事を話すと二人は驚いたようでありながら、やはり、私の力にどこか心当たりがあったのだろう。
リリィに会って話を聞くことを承諾してくれたが、その表情はどこか寂しげだった。
翌日の昼過ぎ。
リリィと付き添いの女性が家の扉を叩くと、両親は二人を家に招き入れ、茶菓子の用意されたテーブルの前まで二人を案内し、私を含めた五人で本題について話し合った。
まずは時間をつくって貰えたことにリリィと付き人の方が感謝の気持ちを伝え、次に二人は自己紹介する。
私もまだ知らなかったのだが付き人の女性はソシエと言うらしい。
歳は両親と同じくらいの二十代半ばといった所か。
口調や見た目から真面目さが伺える人物と言うか、折角美人なのに近寄りがたい印象を周りに与えている女性だ。
リリィ達に礼儀を返すように両親も二人への挨拶を終え、アヴェントは本題へと入る。
「昨晩娘から、お二方に良くして頂いたことを聞き及んでいます。先ずはそのコトに御礼を申し上げます。
そして、その時、娘エリーの能力の有無を見抜き、その扱い方について教育を施して頂けると話を伺っています…」
リリィは応える。
「はい。ご存知とは思いますが、ご息女のエリーさんは常人からはかけ離れた能力をお持ちのようです。」
「…。」
両親は二人共黙って聞いている。っと言うか私の力に気づいていたのだろうか?
「ですが、ご息女のエリーさんはまだ幼く、自身の力の使い方を把握できておりません。
今はまだ力が弱く、誰かを傷つける可能性は少ないかも知れませんが、このまま自身の能力を制御できないまま成長してしまったら、それこそ最悪の事態も起こりかねません。」
「確かに私達夫婦はエリーになにかしら不思議な力があるんじゃないかとは思ってはいましたが…」
アヴェントが私を見て言う。
「正直なところ、私達にはエリーがどんな能力を持っているのか検討さえつきません。
それに貴方様、エリザベス・メルロ様と言えば、かつて勇者様と共に魔神から世界を救われたお方。
聖女とまで呼ばれたエリザベス様が娘をそこまで気にかけて頂けると言うことは、娘の能力は最上級と言うことでしょうか?」
アヴェントが問い掛けるとリリィは、
「まぁ、随分とお若いのに私のことをご存知だなんて、ですが、私が聖女などと呼ばれたのは大人の都合であり、私には聖女としての資質などございませんのよ…
あらあら、話が脱線してしまいましたね。
今は私の話は置いておきましょうか、お父上であるアヴェント様が思うように私はエリーさんの能力を少なくとも最上級と考えております。」
エセルがリリィの話を聞いて驚きを含んだ声で独り言のように呟くと、
「少なくとも…最上級…」
リリィはその呟きに返事をする。
「えぇ、過小評価しても最上級ですね。」
「じゃあ、エリーは…」
「えぇ。私は貴方様方のご息女であるエリーさんを【理を越えた存在】ではないかと思っております。」
両親は唖然としたかのような表情だ。
そして、次にアヴェントは私の顔をのぞくと頭に手を伸ばし軽く触れ、
「そう…なのですね。やはり、エリーは『力』に選ばれてしまったのですね…
私は平凡でもいいから、この子には普通の人としての幸せを生きてもらいたかった。
ですが、エリーにはこれから…
私には想像も及ばない程の試練が待っているのですね…」
続く様にエセルが私を抱きしめるとそのまま抱き抱え、
「では、エリーは次なる『聖女』様になるのでしょうか?」
正直、私には皆んながなんの話をしているのか会話についていけない。
なんなの最上級って?
理を越えた存在?だから次なる聖女?
そんな私の疑問などお構いなしにリリィは少しだけ寂しそうな表情をすると会話を続ける。
「もしくは次なる『勇者』様の可能性もあるでしょう。ですが、これは風の便りですが、
現在、この世界では過去あり得なかった程、『強大な力を持った存在』が次々と確認されているようです。」
次は勇者‼︎私が⁉︎それは絶対無いでしょ‼︎ってゆうか話がどんどん大きくなる。
私はただ音痴を治したかっただけなのに…
「いち早く情報を得た国々が独自にその者達を自国に招き入れようと争奪戦が行われているなどと言う話も聞き及んでおります。
このままいけば、いつかわエリーさんの能力にも周囲の人々が気付きだし、本人の意思に関係なく国へと召集されて召し抱えられてしまうなんて事態も充分あり得るでしょう。」
それって徴兵ってこと⁉︎
そんなことになったらアイドルを目指す所の話ではなくなってしまう。
「ですので、わたくし的にはエリーさんの能力は極力広めず、ひた隠しにし、
彼女に自身の能力を扱えるよう、その他のことも踏まえて指導させて頂きたいと思っております。」
「確かに…エリザベス様の仰る通り、娘を権力の傀儡にされ、戦の道具として都合よく扱われるのは親としては避けたい事態です。」
そして、アヴェントとエセルは私の顔を見て、
「エリーはどうしたい?」
私の意志を確認した。
この世界に来てから、とんでもない話や出来事ばかりでこの先どうなるのか分からないけど、今はリリィに私の能力…えぇっと、そうだ。
『ジャパニーズアイドル』の扱い方を学び、
そして、音痴さえ克服出来れば、この世界でアイドルとして成就出来るのでは?っと思い、
「わたし、リリィ先生に指導して貰いたいです。」
かくして、私のアイドルとしての下積み時代が始まった。
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