第16話創造者の本音

エリーとの会話はなかなか有意義な時間だった。

本来、地球の創造者であり管理者でもある僕には誰かと会話する機会など滅多にない。

同じ創造者同士でも会う機会など例外を除く限り無いに等しい。


だからか、あれほど待ちわびていた彼女との会話は少々冗談が過ぎてしまった。


エリーは少しばかり困惑していたが、初対面の感触はそう悪くはなかっただろう。

そう思いながら、今しがた見送ったばかりの彼女との時間を彼は少しばかり振り返り始める。


彼女に固有能力の名称を教えてあげた時のあのニヤけ顔ときたら、自分がアイドルになるのが運命だとか勘違いしている様子だった。

あれはただ、彼女の中にある強い想いがスキル化しただけで、アイドルになる運命だとかそういう類の話ではないのだ。


そもそも、エリーが転生したこの世界にアイドルと言う概念は存在してなどいない。

すなわち、アイドルという職業は存在していないのだ。

時代背景からして気づきそうなモノだが…


まぁ、彼女がなにやら嬉しそうだったので、そのことは秘密にしておくことにした。

それに、彼女が自身の能力の内容についても何一つ質問してこないことにも少々驚きを隠せない。


こんなに重要なコトを聞かずに音痴の治し方を聞いてくるとは…

まぁ、それも重要と言えば重要だが、そもそもアイドルを目指していたんだから、音痴の治し方など前世の時代で学んでおいて欲しかったが、まだ子供だったから仕方ないということにしておこう。


それが招き結ぶ縁というモノもあるからね…


それに、彼女のことをあのまま放置すると自身の強力過ぎる能力を扱いきれず、他者を意図せずとも傷付け、周りから畏怖の対象となり、それが原因でアイドルを目指すことを挫折してしまい、


本来の役割を果たせなくなる可能が視えたからこそ仕方なく、この白面世界へと呼び寄せ、音痴を治せるだろう人物に出逢えるよう導いた。


前世から彼女を見守っていたから分かってはいたが、やはり、あの子はあまり地頭が良くないようだ。

その点が少々心配だと言わざるを得ない。


やはり、他の代役を送り込むべきだったのだろうか?


いや…僕のチルドレンで彼女ほどこの世界への【魂の適合者】は他にはいない。

それはあの固有能力一つに置いても…だ。


まぁ、また道を見誤りそうならば、今回のように最低限の助言を与えればよいのだが、話はそう簡単にはいかないから困り物だ。


あの世界の管理者に僕の存在を勘づかれるのは面白くない。

先程の、あの世界からの彼女の呼び寄せも、あちらの管理者の目を掻い潜らなければならない。


本来、管理者同士、他者の管理世界には余程の事態がない限りは干渉は厳禁。

当然、自身の使徒である転生者、転移者を送り込むなどもってのほか、


だが今の所、彼女は僕達の存在には気づいていない。だからこそ圧倒的有利な立場にいる。


この強みをまだ失いたくなどないからね。


それに僕は結構忙しい。


だからエリー、キミに助言を与えるられる機会はそう多くないだろうから、頭を良く使って慎重に役割を果たしてくれるよう期待しているよ。




僕は創造者であり管理者だ。

自分がいつから存在しているかなど、もう忘れてしまったが、地球を誕生させてから46億年の歳月が過ぎた。


少なくとも46億年の時を存在している。


創造者は死を超越しており、その命は永遠。


そして、永遠とは退屈なモノだ。


永遠からすれば46億年だろうが1日だろうが1秒だろうが久しく平等であり無価値。


僕はね、永遠とも思える時の中でもキミの物語には特に期待しているんだよ。


扶翼渚。


-舞台は整えておいた-


僕からしたらキミの人生はほんの一瞬の出来事になるだろうが落胆だけはさせないでおくれ。


でなければわざわざキミを殺し、この世界に送り込んだ僕の苦労が無駄に終わってしまうからね…








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