第15話固有能力
創さんの話を聞く限り、もしかして私の行動は全て把握されている?
「ちょ…ちょっと待ってください。もしかして私の行動を全て監視してるんですか?」
「そうしたいのは山々なんだけどね。
ここは地球ではないし、僕の管理下にはないからさ、今は彼女の目を掻い潜りながらなんとかキミに接触してるんだよ。
っと言っても、本来、僕達管理者は見守るだけの存在だから、下界に降りて直接的な影響は与えてはならないのさ。
それに僕が管理している世界には子供達が沢山いるからね。
いつまでもキミだけを見守っている訳にはいかないんだよ。ってキミが心配してるのはそこじゃないか…
そうだね。ちゃんとお風呂やトイレなどの生理現象によるプライバシーは尊重するからさ、当然覗いたりはしないから安心していいよ。」
そもそも人の人生を勝手に覗くなと言いたい所だが相手は自称創造主。
なにが目的でそんな覗きをしているのかは知らないが、一応ある程度のプライバシーが確保されていると知り、私はホッと胸を撫で下ろしたが安堵したのは束の間。
先程の発言を思い出し、
「…そう言えば、私の歌声を聴くと皆んなが体調を崩す原因を貴方は知っているんですか?」
「それくらいは分かるよ。これでも創造者だからね。
それは前世でキミの魂に深く刻まれたアイドルへの想いがこの世界に来たことでスキル化し、それによって目覚めたキミ固有の能力【ジャパニーズアイドル】の影響だね。」
「わっ…私の固有の能力‼︎そんなモノのがあるんですか⁉︎しかも名前がジャパニーズアイドルって、フッフ…そのまんまですね。
でも、それってやっぱり…フッフフ、」
思いがけない話にやはりアイドルになるのは私の運命だと知り、口元は緩み、表情はニヤけ、言葉は嬉しさのあまり最後まで言いきれずに終わる。
自分自身の表情を見ることは出来ないが、今の私の表情は卑しいような気がして、口元に手を当て表情を隠した。
「エリー、キミの魂はこの世界への『適合性』が非常に高く、その肉体は『相性』も非常に良いんだよ。」
いけない。嬉しさの余韻に浸り創さんの話をまるで聞いていなかった。こんな簡単に浮かれてはいけない。
いくら運命とはいえ、このままじゃアイドルには程遠いので、
「あの…じゃあ、どうやったら歌声が治るんですか?」
私は創さんに顔を近づけ食い気味に聞いていた。
「うーん、それはよくわからないな。歌声は特に問題ないんじゃないかな?
関係あるとすれば、キミが自分の能力を把握してないことと、あと音程をよくハズしてる所じゃないかな?
アレは創造者の僕ですら間近で聞いたら気絶しちゃいそうだからね…あっ、エリー、
これは創ちゃんジョークじゃないからね。」
創ちゃんさんは最後の一節を話す時、それまでとは違い声のトーンが下がると、
それと同時に眩しい顔を近づけて忠告するように言い放ったので、私はソレを遮るように両手で隠し、顔を背け瞼を細めながら、
私の歌声が地球の創造者を気絶させるなんて冗談にしか聞こえない。っと思いながらも、頭ではコトの深刻さを理解していたから、
「じゃあ、どうやったら…私の音痴が治るんですか?」
「んー、頑張って練習すれば治るんじゃないかな?」
「頑張って練習しても治らないから困ってるんです!」
創さんは急に相談に対する返答内容が投げやりになると、次の瞬間にはなにかを閃いたかのように手のひらを軽く叩くと、そのまま人差し指を立て、
「そうだ!明日からもっと見晴らしのいい場所で歌ってみたらどうかな?
そうだね…村の中で大海原が見渡せて、そう遠くない場所に古い教会があるような場所なんかが良いと思うよ。」
妙に場所の指定先が具体的だと思いながらも望むようなアドバイスではなかったので、私は落胆の色が隠せないでいた。
創さんはそんな私の姿を見てか、
「エリー、そんなに悩まなくても大丈夫さ。僕の助言にはご利益があるんだよ。信じて行動してごらん。」
表情は分からないけど光の奥で創さんが微笑んだ気がし、なんだか急に元気が湧いてくると、
私が勝手に創さんに頼っているだけで彼が問題の解決策を知らないからといって、創さんに落胆するのは失礼だと自分に言い聞かせると自身に喝を入れ気合いを入れる。
「分かりました。地球の創造者である創さんがそう言ってくれてるんですもんね。
信じて頑張ってみます‼︎ご利益頂きます!」
「エリー…水臭いじゃないか、創ちゃんて呼んでいいんだよ。」
「はい!創さん‼︎」
「まぁ、僕も呼び方を無理に強要したくないからね。好きに呼ぶと良いよ。
それにキミの悩みもある程度は和らいだようだから…エリー、キミはそろそろ現実世界にお帰り。」
創さんは会話の終わり間際、おもむろに右手を動かし、指をパチンと鳴らした。
「えっ…」
すると白面世界は私を中心にして一瞬で縮小すると、それと入れ替わるように私が先程まで居た自分の部屋の姿が一瞬で広がった。
「夢…じゃないんだよね。この世界…本当になんでもアリだわ…」
白昼夢にしては余りにも記憶がハッキリしているし、立ち姿のまま眠りについたりなどしない。
未知の出来事ばかりで驚きからか、未だ鼓動が落ち着かない胸もとに手を添え、
「まだ聞きたいことが一杯あったのに…」
正直な話、あの人物が地球の創造主かなんて私には分からないけど、この悩みを和らげてくれただけでも彼に会えてよかったと思い、
「でも、いっか。ご利益を頂いたみたいだし。」
明日から創さんの指定した場所を探して歌の練習を頑張ろうと誓うのだった。
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