第14話分岐
私は今まで自宅の一室に居たはずなのに、瞬きをした瞬間に世界はその姿を変えていた。そこにはなにも存在しなく、目に映る限り、白い空間が無限に広がっている。
私は突然の出来事に状況が飲み込めず、その場に呆然と立ち尽くしていると、次は背後から、
「やぁ、お久しぶり。」
っと誰かに呼びかけられ、突如聞こえてきた声に驚き「ひゃあ⁉︎」っと情けない声を上げてしまう。
私は急いで声のした方へと振り返り、
「えっ?久しぶり?だ…だれ?」
「冗談さ。どうも初めまして。」
声をかけてきた人物は挨拶をしているようだけど、私は狼狽えてしまい、まともに返事など返せない。
なにせ、そこに立っていたのは人のようだが人物像がよくわからない。何故わからないのかと言うとこの人物、発光しているのだ。
まるで太陽を直視しているかのような眩しさに私は顔を背けたが、それだけでは堪えきれず目元を手で覆い隠すと、
「あっ!ごめん、ごめん。眩しすぎたね。僕、いい男過ぎだね。」
などとよく分からないコトを言っていたがその後、光は急激に弱まる。
それでも彼がどんな顔をしているのか、どんな恰好をしているのか、こんなに近くにいるのに肉眼で捉えるコトが出来ない。
唯一わかるのは、彼の真っ白に光り輝くシルエットで、それが細身の人型のナニカということ。
「あっ、あなたは?」
「ぼく?僕のことは創ちゃんって呼んで。」
「そっ、そうちゃん?」
「うん。これからよろしくね。エリー。」
創ちゃんと名乗る人物は何故か私の名前を知っていて、
「なんで…私の名前を?」
「そりゃ知ってるさ。僕はキミのことを気にかけているからね。」
「気にかけてるって…何故ですか?私は貴方に会ったことも誰かさえわからないのに…」
「エリー、僕の存在は極秘であり特別だから知りもしなければ分からないのも当然さ。
そんな僕に誰もが簡単に会えたら有り難みが無いでしょ?
それに僕に会いたかったら、まずは秘書にアポイントを取ってもらわないと。」
「えっ?でも私、誰にもアポイントなんて取ってないのに、今、貴方に会ってますけど…」
「エリー、今のは冗談さ!僕に秘書なんていないよ。創ちゃんジョークさ。
むしろ、僕がキミをここに呼んだから、こうして僕達は顔を合わせることが出来ているんだよ。」
何者かわからないけど、このほんの少しの間で、この人物が多少面倒臭い人なのかもしれないコトだけは充分理解した。
「あの質問してもいいですか?」
「質問するには先ずはマネージャーを通してもらわないとね。」
「…マネージャーはいるんですか?」
「エリー、今のも勿論、創ちゃんジョークさ!」
多少どころではなく、この人、完全に面倒臭いタイプだ。
そのせいか発光する謎の人物に話を聞きたいのになかなか話が進まない。
だから構わず質問してみた。
「此処は何処なんですか?私はなぜここに呼ばれたんですか?」
「エリーは聞きたがりだね。でもいいのかい。本当にそんな質問で?
実は僕が彼女持ちか、それともフリーかどうかを聞きたいんじゃないのかい?」
「いえ…それは大丈夫です。」
「そうなのかい?まぁ、キミをこの場に呼んだのは僕だからね。少しだけキミの疑問に答えてあげるとしようか。
まず、ここはね、『白面世界』て言う場所だよ。簡単に言えば君と僕の魂が繋がった二人だけの世界さ。」
白面世界?魂が繋がった世界?私は全然意味が分からず、
「貴方が創った世界ってコトですか?」
「そうだね。一時的な仮初の世界さ。」
仮初の世界だなんて、そうゆうのも魔法でなら創れるのだろうか?いや、それ以上にこんな場所を創れるなんて何者なの?っと疑問が湧き、次なる質問は、
「貴方は一体何者なんですか?」
「僕達は知り合ってまだ数分しか経ってないのに、そんなに僕のコトを知りたいだなんて…エリーは積極的だね。
でも、二人には時間がある訳だし、これからゆっくりお互いのことを知っていけばいいんじゃないかな?」
「あの…創さん…そういう意味で聞いてるんじゃないんです。」
「いやだなエリー。今のも勿論創ちゃんジョークだよ。だから…
そんな憐れむような目で僕を見ないでおくれ。それと創さんだなんて他人行儀じゃないか。ちゃんでいいんだよ。ちゃんで、」
私の困惑する表情に自身の冗談が全く通じていないとようやく理解したのか、創さんは私から視線を外しすと後ろで手を組み、体を少し横へと向けた。
「僕は管理者なんだ。」
「管理者?」
「そうだね。君が思ってるようなビルやらアパートやらの管理者とはスケールが違うよ。」
「いや…別にそんなこと思ってないですけど…」
「僕はね、地球の管理者さ。」
「それもジョークですよね?」
「エリー…酷いじゃないか、これは本当の話さ。僕は地球の管理者。言わばキミの父親と言ってもいい存在なんだよ。」
流石に父親は違うでしょ。っと思いながらも、
「じゃあ、あなたは神様ってことですか?」
私の質問に創さんは指で顎先を触りなが首を傾け、
「うーん、神なんてものはキミ達が勝手にいると思っているだけの都合のいい存在でしかないんだけど…まぁ、意味合い的には似ているかもね。
でも、僕はね、言うなれば地球の創造者さ。」
「地球の創造者…」
「そしてキミは僕の創った世界で生まれた我が子みたいな存在なんだ。だけどキミは地球からこの世界へと異世界転生してしまった。
こんな剣と魔法が全てのような芸術性の欠片もない世界に転生してしまったキミが不憫でならなくってね。
だから僕はね。可愛い我が子を見守るかのようにキミを気にかけていたのさ。」
創さんは光を放つ特殊な体質上、表情が読み取れない。
でも、その替わりに少しだけみせた口調の荒さが、この世界を嫌っているのでないかという印象を私に与えた。
「そしたらどうだい?
キミが自身の歌声に悩みを抱えているように見えたからね、少しでも力になれればと思い、キミをここに呼んだという訳さ。」
歌声の件も大事なんだけど…
今の私にはもっと気ががりなことがあるのだが…
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