第13話氣と魔力

今回の出来事は私に深い衝撃を与え、今後を真剣に考えざるを得ない状況となった。

いや、今までも充分真剣だったのだが…


どうやら私は前世も今世も歌があまり上手くないらしい。

だからと言って、アイドルにとってソレは完全にデメリットっと言う訳ではないのだ。


80年代アイドルはむしろ歌を上手く歌うより、わざと下手に歌っていたという歴史があるくらいだ。

コレがなにを意味しているかと言うと、女性アイドルが歌を歌うなら、ちょっと下手なくらいが可愛いのだ。


完璧過ぎる人間は近寄りにくいように、少しぐらい欠点がある人間の方が親近感が湧きやすい。


故に軽い音痴は武器。


だから前世では余り気にしていなかったのだが今世ではそうはいかなくなってしまった。


具合を悪くされたり、気絶されたり、何故こんなコトになるのか原因がわからない。

この世界の人達は歌が弱点だったりすのだろうか?不思議な世界だし…もしかしたらあり得るかも知れない。


いや…エセルは子守唄などをよく歌ってくれたが、それによってアヴェントの具合が悪くなったりする様子はなかった。


じゃあ、原因はやはり私か?


でも、前世ではこんな事態は起きなかったのに…私は過去を一瞬だけ振り返ると気づいてしまった。


そうか‼︎前世の世界と今世の世界では決定的に違う所があるじゃないか!!


前世では無くて、今世では存在するもの…


それは魔法!


日中の出来事の後、私は自宅に戻るなり、アヴェントやエセルに魔法や氣について聞いてみたのだが、


「まぁ、エリー。魔法に興味があるの?

魔法と言うのはね、体内から湧きでる魔力を練り上げつつ、魔法特有の呪文を詠唱することによって発動させるのよ。」


エセルの説明によると魔法は何種類もあるようで、それによって各々特有の詠唱があり、それを唱えなければ発動しないらしい。

他には魔法陣を書いたり、魔法の力が込められた魔石や書物を使用すれば使えるそうだ。


これらを踏まえて考えると魔法が原因で私の歌声が凶器になっている訳ではなさそうだ。


「氣かい?氣は生き物なら誰しもが持つ生命エネルギーのことだよ。

常に体内から発せられているんだけど、それに精神を通わせ扱えるようになれれば、身体能力の強化、免疫力や自己回復力などを強化でき、様々な恩恵があるんだ。

主に名高る戦士の人達が扱えたりするね。」


アヴェントの説明によれば、氣とは人間なら誰しもが持ち合わせているモノで、主に戦士や格闘家の人達が稀に扱えたりするらしい。


もしかして私の歌声が凶器化しているのはこの氣のせい?っとも思ったが、氣は身体の能力を強化したりするだけで、


言うならば、喉の力や肺を強化したりして大きな声を出せたりはするが、声自体を強化は出来ないし、ましてや具合悪化や気絶の効果を付加することなど出来ないそうだ。


それに氣も魔法も才能ある人間じゃないと扱えないらしく、扱うにしてもそれ相応の訓練を必要とし、なんの訓練もしていない私が扱えるモノではなさそうだ。


数少ない心当たりの二つだったがその両方がハズレなようで、私は肩を透かし落ち込んでしまう。


そんな姿は二人には見せたくないと自分の部屋へと戻り、改めて解決策を考えるが…


私がいくら大人の精神と知能を持ち合わせていようが、この世界は謎が多すぎる。

はっきり言って歌声のトラブルの原因かわからない。

もうこの世界でアイドルなんて無理かもしれないと諦めかけた時、


不意にソレはやって来た。

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