第12話ヒーローからの贈り物

高笑いを終えたのち、ジャスティスは道場着の胸元の隙間に手を入れると、そこから六角形にカットされた紫色の小さな宝石が装飾されたネックレスを取り出すと、


両手でシルバーの細い鎖の留め金具をつまみ、それを私の首元に通すとネックレスを身に着けさせた。


「さぁ、お嬢さん。またキミがピンチの時、この石に強く念じてくれれば、私がまた駆けつけよう!」


助けて貰っただけではなく、まだ八歳の子供がこんなプレゼントまで渡してくるとは…

ダンには驚かされてばかりだ。


でも、流石に受け取るわけにはいかなく、ジャスティスにネックレスを返そうとした時、


「お嬢さん。遠慮しなくてもいいんだ。

それは高価な物でもないし、僕が父さんから貰った物だからエリーに預かってて欲しいんだ。」


そして、ダンが言うにはこれは魔道具と言う物らしく、離れていても魔石に想いを念じれば、石に込められた魔法によって彼に私の居場所がわかるようになり、いつでも助けに行けるようになるらしい。


なんとも不思議なものだ。


この世界には魔法なんてモノがあるのかと驚きながらも、ダンの身体能力の高さも魔法によるものなのかもと思い、質問してみたが、どうやらダンは魔法は使えないらしい。


替わりに氣(キ)と言う体から発せられる生命エネルギーを使って身体を強化するそうだ。


なんにせよ、私には無縁の話だろうし、魔法にも氣にも余り興味は湧かなく、なにより戦いのイメージしか湧かない。


私はダンが付けてくれたネックレスを指先で触りながら考えていた。


ダンはどうしてもネックレスを受け取らせたいらしく、子供の願いだし、なによりこの世界は未知のことだらけで危険かもしれない。

だから、今はお守りとしてありがたく受け取ることとした。


もし彼が返して欲しいと言ったのら、その時にでも素直に返せばいいだけだ。っと思い、


「分かったわ。素直に受け取らせてもらうね。ありがとうジャスティス。」


感謝の気持ちを述べ、


「私が窮地の時にはまた助けに来てね。ジャスティス!」っと首を傾げながら微笑んだ。


するとジャスティスは仮面越しで表情はわからなかったけど、「エリー…」っと私の名前を呟き、少しだけ棒立ちしていたんだけど、


「…ハッ!」っと急に我にかえったのか、


「はっ…はーッはッはッは!

すまないがお嬢さん。どうやら他にも私の助けを待っている人がいるようだ。

では、また何処かでまた会おう‼︎」


そして、ダンは子供とは思えない程の足の速さでこの場から去っていった。


最初の出会いの時、私を見て走り去られてしまったから、彼には嫌われてしまったのかも。っと思っていたが、そんなことは無く、

あれからダンとは時々家族ぐるみで会ったり、二人きりで遊んだりもした。


今のダンは男の子特有のヒーローに憧れたりする年頃で、勇者ごっこに夢中になっているのだ。


前世でも弟のカズマもよくライダーごっこをしていたもので、ダンを見ていると可愛い弟が出来たみたいで楽しかったりもする。


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