第5話散歩

それから数ヶ月もしない間に両親が私を連れて村の中を散歩したのだけれど、それはそれは驚きの連続だった。


そして、二人に感じていた違和感の正体にもようやく気づくことが出来たのだ。


私はアヴェントに抱き抱えられながら村の中を見て回ったのだけど、ここはとても自然豊で、部屋の窓から見えていたから大体は予想していたつもりだったけど、

窓枠に切り取られた一部の景色と実際に外に出て体感する景色とではスケールが違っていた。


まるで金色の海のように視界一面を飾る小麦畑。

時おり駆け抜ける風は空気の美味しいさを実感させ、川のせせらぎは心が洗われるようで心地良い。


本来ならエンジンを積んだボートの方が利便性が良いのだろうけど、景観を損なわない為と自然を汚さないようにと配慮しているのか、人が数人乗れそうな小さな手漕ぎの木造船が所々にあって、その心意気が素敵だわ。


この村は自然への配慮が凄く、アスファルトで固めらた道などはなく、そのほとんどが未舗装の土の道。

村の中心に近づくにつれ石畳の道へと姿を変えていく。


自然と暮らしの一体化。


でも…いくら自然へ優しい街づくりを目指しているからっと言って、この村には自動車一つなく、ちょっと度が過ぎている気がする。


道中まばらに見えた家のほとんどが古民家か、人が何人も住めそうな藁葺き屋根の長屋。

こう見ると、私が今住んでる家って結構裕福な方なのかもしれない。


もしかしてここって外国のどこかの集落?

もしくは世界文化遺産登録された村落かな?

いや、近代化の波に乗り遅れただけなのかも…


そうこう思考を巡らしていると農家の方々だろうか、クワや鎌、色々な農具を入れた背負い籠を担ぐ六人くらいの老若男女の集団とすれ違い、両親はすれ違いざまに挨拶をした。


「おはよう御座います。」「おはよう御座います。」


「はい。おはよう御座います、ガーランドさん。」

「おやおや?その子が最近生まれたと噂のお子さんですか?」

「おー、可愛い子ですね!女の子ですか?」


「はい。娘のエリーです。さぁ、エリー。初めまして。って挨拶しましょうね〜。」


母エセルに促され、私は皆んなに向かって挨拶をする。


「初めまして…エリー・ガーランドです。」


「まー、可愛いわ。もうこんなにしっかり喋れるのね〜。」

「初めまして、エリーちゃん。これからもよろしくね。」


一通りの挨拶を終えた後、両親は軽く会釈をすると農家の人らしき人達とは別れ、また散歩を続けた。


両親は景色を楽しんでいて道端に「エリー、綺麗な花が咲いてるわよ。」や「エリー、大きな牛さんだよ。」などと散歩を楽しんでいたが、私はそれどころではなかった。


なにせ疑問は深ばるばかり。


先程のすれ違った人達の服装が中世の農家の人が来ていていそうな服だったからだ。


いえ…現に今の私の両親だって、まんま中世の人達が来てそうな服装だし…

もしかして私、時代を遡って中世ヨーロッパの時代に転生してしまったんじゃ…














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