「2面相。」~10代から20代に書いた詩

天川裕司

「2面相。」~10代から20代に書いた詩

「2面相。」

 あの娘を思うことが、あとあとになって悪いことなら、早くこんな感情失くしたい。女を好きになる、男としてあたり前のこと?笑わせる。そのために犯罪も起きているんだ。俺は何度あの娘を心の中で殺したことか。俺にはキャスティング・ミスだ。ずっと天国に居たかった。この世におりて、犯罪を心に見るのがたまらなく嫌だ。だからと言って身を引く気もない。あの娘にとっての幸せが、俺の居ないところにあるのなら、俺は居ない方がいい。何故に運命の人以外の人と出逢うのか。こんなことは何の意味もない。道行く人を見て何になる。道行く人がどうであれ、俺の善・悪は変わりない。他人も同じだ。俺はただ、幸せが欲しいだけだ。あたたかさが欲しいだけだ。それでも現実はまだ、俺の上に雨を降らせてゆくのか。(笑)


「影響。」

 彼は読書が好きだった。それも自分と気の合う本が好きなのである。結構哲学的で面白く、少し暗さを秘めた青年だった。今、彼が読んでいるのは、“愛”というものについて述べられている本である。そこには男と女が写真ではられてあって、その合間をぬって字を書いているのである。しかし最近、彼はあるページまで読んだところで止まっていた。幾度か同じページを読んでいたのだ。そこにはとても美しい顔をした女性の写真がはられてあった。彼はいつものようなそれらに対する否定はせず、純情っぽくその写真を見ていた。いつも、ひとりで本を読んでいたのでその写真を見る時間も長かった。そして次ページにいき、また今まで通り読んでいった。だがやはり気になって何回かさっきの写真つきのページまで戻るのである。一時は、前にすすまなくてもいいか、などと思ってしまうこともあった。がしかし、彼は読書に憧れていて、哲学青年を美化していた。それでも先へと読んでいった。読んでいく内に、いやらしい文章の羅列があった。彼はそのままそこを読んでいった。すると、まただんだんとあの写真の女性の顔を見るようになっていった。

 そうして本を読んでいる途中で家のベルを鳴らす者がいた。友人だった。彼は読書をやめ、コーヒーを入れて友人をもてなした。“丁度暇だったから..”などと文句を言い、友人との時間を楽しく過ごそうと試みた。そうして友人と話している内に、女の話になっていた。

“誰が好みだ”の、“こういう流行の女はどうの”とかいうのである。彼はそこでとたんにさっきまでの気持ちが変わった。『さっきまでの自分は一体何をしてたのか、そう、本を最後まできちんと読まなくては、感情が入るのは大いに結構なことだが、もう読まないでもいいか、などは絶対にいけない..』哲学への憧れの心が友人の前に顔を出したのである。彼はその友人と流行、女性関係についてたくさん話した。何時間かしてその友人は帰った。帰ったあと、一人で彼はさっきとはうってかわってさっきまでの読みかけの本を読み始めた。今までにない程の集中力で最後のページまで読んだ。

そして最後のページをめくったその裏にさっきの女性と、男の顔が二人一枚で映っていた。彼は即座に本を閉じ、読んだ感想を思い描こうとした。が、またあの女性の顔が散らついた。そして今度は男の顔が女性の顔より強く頭を散らついた。結局、感想をノートに書いてみよう、と試みたが、たくさんの言葉は出なかった。途中で止まって、同じページを読みすぎていたせいだ、彼は思っていた。


「炎天。」

今日終止符をうった。いつになく寂しい思いだ。でも明日が来ることへの思いは昨日とかわっていない。私の道とはもう決まっているものなのか。“考えちゃいけない.”って人と、“考えてちゃいけない”って人がいる。“たかが人生”などとは思えない時がある。愛情と欲情、その2つはワン・セットなのか。愛情に浸っていれば欲情も湧き出てくる。それへの罪悪感はどう肯・否すればいいのか。道はたくさんある。ひとつの動作でものごとがかわる場合がある。 ところで、恋人のいない人生というのは素晴らしいのかい?もしそれが素晴らしいのなら2つの存在とは?我ながら恥ずかしい。


「理想の人。」

私はこの世の人に、永遠なる平安をすがったのだ。だけど、この世の人は、“それは真実の平安じゃない.”とはねのけた。私はしばらくして納得した。この世では私の思っている幸せは荷が重すぎるのだ。生まれてきた以上、自分勝手になるのは当然だ。欲がある以上、自分に得なものがあればそれを欲しがる。それ故私は理想を愛した。この世でいう、いわゆる架空だ。架空などでは生きてゆけない、と言うがそれも人それぞれである。生きる勇気、死ぬ勇気、この場合、生きることを勇気とは言わない。ただ、生かされているのだ。私がこう思う理由はきっと天にある。天でなければその上か下にある。この世と私はとてもマッチしている。このように思い描くことができたのだから。これも生きている人間なのだ。心の中で私の理想の人は呟いた。“すばらしい.”と。

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「2面相。」~10代から20代に書いた詩 天川裕司 @tenkawayuji

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