第50話 開発テスト 1 豪氏 剛機(ごうし ごうき)

「こちらです。」


 ダンジョン専用装備の開発を任されたチームのリーダーが、剛機の前に、銃弾を一つ差し出した。

 そして、リーダーは、渋い顔で話し出した。


「お聞きになってると思いますが、まず、今のオートマに使える銃弾で、距離が指定のものを作れ、と、言う命令で作ったものです。内容は、現状の銃弾から、火薬を減らして射程を短くしたもので、威力などは、全く考慮していません。よろしいでしょうか。」


 剛機が頷く。


「大丈夫だ。話は聞いている。手にとって見ても?」


「はい。どうぞ。」


 剛機が、テーブルの上から銃弾をとり、目線に持ってくると、リーダーが補足を入れる。


「見てお分かりになると思いますが、オートマに使っているものと外観は同じです。火薬を減らしている関係で、中は変わっていますので、重量は変わっています。」


 剛機は、ゆっくりと、銃弾を回して確認する。


「試射は?」


「出来ます。こちらに。」


 頷いたリーダーが、促し、二人は、部屋を出た。





 射撃場のレーンの一つが、的が異様に近くに移動してあり、下に、白線が何本かひいてある。


「一番遠いラインで、六メートルになります。」


 脇にある小さなテーブルに、同じ型のオートマとマガジンが二つ置かれていた。


「弾は、全部、射程五メートルのものになります。試作なので、射程の差が大きくなっていますが、気にはならないと思います。」


「わかった。かまわなか?」


「どうぞ。」


 リーダーの許可に、剛機は、オートマを手にし、マガジンを挿入、スライドを引いた。

 五メートルの白線で、足を止めると、的を眺める。


「自分で言っておいてなんだが、こんなに近いとはな。」


 ポツリと呟く。


「はぁ。そうですね。本当に、近いですよね。」


 リーダーは、どう答えていいのかわからず、とりあえず、相槌。

 剛機は、少し、リーダーの方を横目で見ると、的に向って構えて、オートマの引き金を引いた。


パン


 いつものオートマの発砲音より小さい音が鳴り、弾道が、的の手前に落ちて消える。


パン


 今度は、的の枠の下の方に当たった。


パン


 全く表情を変えることなく、引き金を引く剛機。

 弾は、中央ではないものの、的には当たる。


パン


 的の中心のマークの隅に当たる。


パン


 的のど真ん中より、少しずれて当たった。

 

 剛機は、気が済んだのか、銃を下した。


「どうですか?」


 後ろから聞こえるリーダーの声に、剛機は、いったん、半分ほど顔を向けると、また、的に目を向けた。


「撃った時の反動が、半分より小さくなってる気がするんだが、そのくらい威力もなくなっている、と、言う解釈でいいだろうか?」


「はっ、はい。そのぐらいになります。」


 剛機は、息を吐くと歩き出し、今度は、二メートルの白線で足を止めた。


パン


 今度は、的の中心のマークに当たる。


パン

 

 次も、的の中心のマークに当たる。


 剛機は、いったん銃を下げ、一メートルの白線も通り抜け、的に銃口を押し当てた。


パン


 音とともに、的の枠に穴が開く。


パン


 剛機は、押し当てている銃口の位置をずらすと、またもや、押し当てた状態で、引き金を引いた。


 そして、銃のロックを掛け、下すと、自分が今あけた穴を確認した。


「聞きたいのだが。」


「はっ。はい。」


「弾の直接的な威力を測定するものがあると、助かるのだが?」


「すいません、直接的なのはちょっと、、、。」


「そうか、、、、。仕方がない。」


 肩を落とす剛機に、心配そうに、リーダーが声を掛ける。


「やはり、威力が足りないですか?」


「微妙なところだと思ってる。威力は、一体を、人数で囲んで撃つから、多少、少なくても、数を撃ち込めるからな。ただ、あれば助かるのは事実だから、、、例えば、少なくした火薬分、もう少しだけ弾頭を大きく重くして、重量で衝撃を増やすとかは、できないだろうか?」


「出来ないことはないと思いますが、そこまで差が出るかは、わからないです。」


 顎に手をあて、首を少し傾げて答えるリーダーに、剛機は、少し、首を振った。


「言っていることはわかる。が、一発、もしくは、数発で終わる人間が相手ではないから、一発、の小さい差は、最終的には大きい差になる。頼めないだろうか。」


 剛機は、真っ直ぐに、リーダーを見た。


「たっ、確かに、相手は人ではないですからね。わかりました。やってみます。」


「すまない。」


「いえ。他に、射程距離とかは、よかったですか?」


 止まって、考える剛機。


「そうだな。これで一度やってみようと思う。何しろ、ホブゴブリンだと動きが早いこともあって、外す可能性はかなり高い、外した、囲んで、反対にいる味方に当たった、では、笑えないからな。」


「確かに、笑いごとじゃないですね。」


 肩を竦めるように軽く言ってくる剛機に、リーダーは、苦笑した。


「他にはありますか?」


「この弾を使ってみたいのだが、ここにあるのが全部に?」


「はい。時間をもらえれば、数も用意できますが。」


「いや。これだけあれば、十分なんだが、流石に直接持っていくわけにはいかないから、配達を頼みたいのだが。」


「大丈夫です。明日中には配達できます。」


「助かる。よろしく頼む。」


「はい。」


「後は、盾の方も確認できると聞いているのだが。」


「大丈夫です。こちらに。」


 射撃場を出た二人は、盾が用意してある部屋に向った。

 途中、リーダーが、簡単に説明を入れる。


「バッグの大きさより、一回りか、もう一回り小型のものを、と、言うことでしたので、一応、二種類用意しています。」


 入った部屋には、中央に、二つの盾が用意しいある。

 剛機は、迷わず、小さい方の盾に向った。

 手に取ると、左腕に装着する。

 暫く腕を動かして、具合を確認すると、リーダーに顔を向けた。


「こちらも、一緒に配送を頼みたいのだが。」


「わかりました。」

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