第29話 ダンジョン探索 3 豪氏 剛機(ごうし ごうき)

 一週間程がすぎて、剛機達は、いくつかのダンジョンの調査を終えていた。

 今回は、三種類程に分かれているゲートの大きさのなかで、渋谷のダンジョンを除いて、一番大きいサイズのゲートの前に来ていた。


「ここも、やっぱり、三層なんですかね?」


 慣れてきた隊員が、ゲートを眺めながら呟く。


「今までの調査結果からすると、その可能性が高いな。」


 剛機も、同じ様に、ゲートを眺める。


「通りはスライムで、ボスはゴブリンとして、他にはないんですかね。」


「まぁ。他にないほうが助かるな。今回の装備も、それを前提としているからな。」


 剛機たちは、装備のメインを普段なら予備として使うオートマにして、自動小銃をサブにしていた。


「でも、三層目のゴブリンが、五発になると、足が遅いとはいえ、結構近くまで来ることになりますよね。危ないんじゃないですか?」


 ゲーム的な予想にたがわず、ゴブリンは、ゲートの径が大きくなるほど、下の階層になるほど、HPが大きくなっているのか、体を撃った場合に、倒せるまでに必要な弾数が増えていた。

 剛機は、自動小銃を小突いた。


「その時は、こっちだ。それか、頭部に三発だな。」


 急所判定があるらしく、頭部は、倒すのに必要な弾数は少ない。


「一本道は確定ですよね。きっと。」


「それは、確定だろうな。そもそも、全く迷宮としては考えてない感じだからな。」


 剛機は、隊員達の雑談の延長のような質問にも、なるべく答えるようにしていた。

 迷いは、一つでも少ない方がいいからだ。


「よし。」


 装備の点検が終わり、ゲートに向き直る剛機。


「行くとするか。」


 ゲートをくぐると、ここ数日、毎日見ているのと同じような光景の部屋に出る。

 剛機は、向かいに見える奥に続く通路の横に着くと、一度、奥まで覗き込み、後は、いつものように奥へ向かった。



 スライムを撃ちながら一層目を抜け、一層目のボス、ゴブリンを撃ち倒し、また、スライムを撃ちながら、二層目のボス部屋の手前に、剛機達は来ていた。


「ここも、ゴブリンですね。」


「さっきは、三発でしたから、こいつは、四発ですよね。」


 隊員が予想したのは、ゴブリンの体に弾をあてた場合の、倒すまでに必要な弾数になる。


「だろうな。」


 剛機は、一言、肯定し、慣れた足取りでボス部屋に踏み込んだ。


「ギッ。」


 一声とともに走り出すゴブリン。


 剛機は、容赦なく引き金を引いた。


パン、パン、パン、パン


 一発、一発を、確認するように撃つ剛機。


 ゴブリンは、剛機を攻撃しようと肩を引いたところで、四発目が、体にあたり、消えていく。


「四発でしたね。」

 

「あぁ。次は本当に、五発になりそうだな。」


「頭部を狙って、三発にした方がいいですよ。どう見ても、今の感じでは、五発でやるのは危ないですよ。」


 心配そうに眉をひそめる隊員に、剛機は、軽く肩を窄める。


「それは、次に着いてから考えよう。」


「でも、簡単ですよね。何のためなんでしょうね、このダンジョン。」


 もう一人が、周りを見ながらつまらなそうに、口を尖らせる。


「それは、こいつのお陰だ。極端な話、まぁ、そんな馬鹿は、希にもいないと思うが、素手で攻略したいか?」


 その彼に、剛機は、銃を振って見せる。

 彼は、考えるように顎をかくと、頭を振った。


「最初のゴブリンで死にそうですね。」


 と、話しながら歩き、奥に続く通りへの入り口に来たところで、剛機が足を止めた。


「どうかしましたか?」


 突然止まった剛機に、隊員達も止まって、顔を見合わせる。


「いや。いつもより大きくないか?この入り口。」


 剛機の一言に、あらためて入り口を見直す隊員達。


「言われてみれば。確かに。」


「大きいですね。」


 カチャリ、と、音を立てながら、オートマをホルスターに戻し、自動小銃を手にする剛機。

 隊員達を見ると、頷き、同じように、オートマをホルスターに戻し、自動小銃を手にする。


 剛機が壁際によると、隊員達も配置についた。


 ゆっくりと、通りを覗き込む。


 奥には、見慣れた影が立っていた。

 剛機は、目を凝らして確認した後、隊員達を見た。


「ゴブリンだ。」


「え?」


 隊員達が、驚いて、確認しようと近づいてくる。


「落ち着け。今のところは、動く様子はない。」


 剛機が、確認させるために場所をあけると、交代で覗き込む隊員達。


「どうします?」


 顎に手を当て、少し考えて、剛機は口を開いた。


「時間は、まだ少しある。途中まででいいから、他に出ないか、慎重に確認しよう。」


 剛機達は、二列に並ぶと、奥へ向かった。


 パンパンパン、と、銃声を響かせながら、走りくるゴブリンを倒していく。

 他が走り寄る様子もなく、剛機は、二十分ほど進んだところで、足を止めた。


 丁度、通りが長めの直線になっていて、他のところよりかは、見通しが良かった。

 距離が離れているおかげが、向こうに見えるゴブリンが走り寄ってくる様子もなかった。


「そろそろ、半分前ほどまで来たな。」


 見えるゴブリンを警戒しながら、剛機が隊員達へ向き直る。


「とりあえず、ここまでゴブリンしか出ないから、この後も、ゴブリンだけだと考えようと思う。弾数もあることだし、楽しみは明日にして、今日はここまでとしようと思うが、どうだ?」


 隊員達は、頷き、引き返すことになった。

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