第27話 ダンジョン探索 1 豪氏 剛機(ごうし ごうき)
都内、某所
住宅街の、それ程大きくない交差点の真ん中に、それは立っていた。
黒い、円盤、ゲートは、周囲を簡易のバリケードや、カラーコーンに囲まれて、異質さを強調していた。
早朝、ゲートの影が長く伸びる向こうに、自衛隊の大型トラックが現れ、囲うバリケードの手前で停車する。
隊員達が後ろか降りると、バリケードや、カラーコーンを移動し、誘導灯を持って通りに立っていく。
遅れるようにして、装甲車が現れた。
大型トラックの後ろに停車すると、剛機達が降りてくる。
「お疲れ様です。」
先に、大型トラックで来ていた一人が駆け寄り、剛機に声を掛ける。
「君が、警備の担当か、よろしく頼むよ。」
敬礼をする彼に頷いた剛機は、横で待つ隊員に声をかけた。
「ゲートの前に移動して、装備の点検をしよう。」
移動し始めた剛機に従い、歩き始めた隊員は、ゲートの前に並ぶと、装備の点検を始めた。
剛機達は、総理の命令により、渋谷のダンジョン以外に確認されているダンジョンの探索を開始していた。
渋谷のダンジョン以外のダンジョンは、現在、七十と少しが確認されていて、ゲートの大きさで、三種類程に分かれていた。
剛機は、ゲーム的に見て、一番簡単だと考えられる最小のサイズのゲートを、一番目の探索に選んでいた。
「よし。行くとするか。多分、入ってすぐの部屋は安全だと思うが、念のため注意してくれ。」
剛機は、そう言うと、銃を構えてゲートをくぐった。
渋谷のダンジョンのように、洞窟の様な壁の部屋に出た剛機は、後ろの隊員の邪魔にならない程度まで進むと、足を止めた。
やはり、最初の部屋は何も出ないようだな。
周りを一通り見回すが、襲ってきそうななにかは、確認できない。
両側に隊員が展開したところで、剛機は、一旦、銃を下した。
「大丈夫だろう。」
剛機の声に、ホッとして銃を下した隊員達は、思い思いに、部屋を眺め始める。
「やっぱり、急に見えるようになって、ゾンビが出るんでしょうか?」
向かいの壁にある、奥に続く洞窟の入り口を、剛機が見ていると、隊員の一人が声を上げる。
「可能性はある。注意して、もう少し近づこう。」
銃を構えて歩き出す剛機に、隊員達も、銃を構えて従う。
「何も出てこないですね。」
入り口まで三メートルほど、変化はなく、何かが出てくる様子は全くない。
剛機は、隊員の声に、ああ、と、答えると、指示を出した。
「俺は、右の方へよるから、お前は左を頼む。三人は、すぐに撃てるようにして、少し下がって、正面にいてくれ。」
僅かに左下へ向かっている通路。奥まで見えるように右によった剛機は、それを見つけた。
「スライム?」
壁の窪んだところで、伸びたり縮んだりしているスライムは、向かいにいる隊員からは、丁度、見えないあたりにいる。
「どこです?」
すぐには危険がないと判断した剛機は、銃を下した。
「全員、来てくれ。見ればわかる。」
剛機が下がり、場所をあけると、隊員達が覗き込む。
「スライムですね。」
「スライムだ。」
隊員達は、適当に感想を言っていく。
剛機は、近くにいた隊員に、持っていた銃を差し出した。
「持っていてくれ。」
「は、はい。」
不思議そうに受け取る隊員。
「あれに、こいつだと、ちょっと勿体ないからな。こっちで十分だろ。」
剛機は、代わりに、予備のオートマを手にする。
並んでいる隊員の横を抜け、慎重に近づく剛機。
「!」
程ない距離になったところで、飛び上がるスライム。
ほぼ同時に引き金を引く剛機。
パン
銃声だけが聞こえ、スライムが消えていく。
クリスタルだけが残り、下に落ちた。
剛機は、それを拾うと、後ろに来ていた隊員に渡した。
「流石に、ゾンビのよりは小さいですね。」
「色も薄いですよね。」
後ろで、クリスタルを眺める隊員達の声を聞きながら、剛機は、先にいる次のスライムを見つけていた。
「よし。俺がこいつで先頭を行く。何かあったら射線をあけるから、その時は頼んだ。」
隊員達の返事に頷いた剛機は、見つけていた、次のスライムに向かって歩き出した。
「いないですね。」
一時間と少し、通路を移動した剛機たちは、一層目の終わりらしい部屋に到着していた。
部屋は円筒形で、それ程の大きさはなく、何もいない。
「銃を。」
オートマをホルスターに戻した剛機は、自分の自動小銃を手にすると、構えた。
「先に入って確認する。お前達は、すぐに突入できるように準備してくれ。それから、向こう側の通りから侵入してきたら、射線をあけるから、撃ちながら展開してくれ。」
「はっ!」
漠然と部屋の中央あたりに狙いをつけながら、部屋に侵入すると、すぐさま、左右に銃口を向ける。
その後は、正面に銃口を向けた状態で、左右に目線をおくりながら、中央へ歩いていく。
剛機は、もう一度、銃口を部屋の一通りに向けると、肩の力を抜いた。
「いいぞ。本当に、何もいないようだ。」
隊員達は、一応、注意しながら、部屋に入ってくる。
「どうなっているんでしょうね。」
「わからんな。」
「もしかしたら、一番レベルが低いから、ボスがいないのかもしれないですね。」
「それはあるな。何しろ、ここまで、分岐もなく、一本道でこれたからな。」
剛機は、隊員達の意見に答えながら、もう一度、部屋を見回すと、奥へ続く通りへ向かう。
「大丈夫だと思うが、念のため、向こうを確認しよう。何もなければ、少し休憩して、奥へ向かおう。」
銃を構えて、奥へ続く通りの脇に剛機が立つと、隊員達も銃を構えて展開する。
ゆっくりと、注意しながら、通りの奥まで見通せるところへ移動する。
と。
先で、もぞもぞと動くスライムを見つけて、剛機は、息を吐いた。
「どうやら、この先もスライムのようだな。」
剛機が銃を下すと、隊員達もホッとしたように銃を下した。
「よし。五分、休憩だ。そしたら、さっきのように奥へ向かおう。」
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