第26話 修行に明け暮れる 5 (戦闘編)
ゲートの前に立った三下は、今、通って来た林を見下ろした。
足には、先ほど用意した安全靴を履いている。
「ここまでは、いい感じだ。」
流石に強度があるらしく、尖った石や、枝などが足に刺さりそうな感覚はなく、防水加工もしてある為、先日の雨で湿気った地面を歩いても、足が不快になることはない。
「あとは、硬いのが気になるぐらいか。」
三下は、靴紐を縛りなおすと、ゲートをくぐり抜け、早速、スライムを見つけて殴りかかった。
三下は、先日のように、飛び掛かるスライムに突きを食らわせ、落ちたところを二度踏みしながら進んでいき、一層目のゴブリンのところに到着していた。
小さくため息をつくと、足元を見る。
「やっぱり、やっちまったか。」
かかとに、靴擦れができていた。
中程をすぎたあたりから、痛いと思っていた三下だったが、予想はしていた為、気にしないでいたのだ。
程々の大きさで、靴下に、血の染みが付いている。
どうするかな。
はっきり言って、靴擦れによる微妙な痛みは、ゴブリンとの戦闘時には邪魔になりそうで、何とかしたい三下は、少し考えると、屈みこみ、下に手をついた。
いけそうではあるな。
下は、土よりかは硬く、ざらざらしているが、砂などが浮いている様子はなく、接地力は高いと思えた。
変なものが落ちてることもないしな。
おもむろに座り込み、靴と靴下を脱ぐと、素足のままで立ち上がった。
何度が足を動かして、具合を確認する。
靴擦れが擦れて、変に痛むこともなく、足が滑る感じもない。
「よし。」
三下は、そのまま、ゴブリンに向かうことにした。
三下が、ボス部屋に入ると、走り寄って、攻撃してくるゴブリン。
いつものタイミングで下がり、躱す三下。
数回、躱して、ゴブリンの肩にフックをあてて、また、躱す。
軽い?
三下は、多少、動きがよくなっていることに気が付いた。
靴分のズレが無くなった感じだ。
「もしかして、正解?」
更に数回、確認する為に躱し、試した三下は、逆関節のコンボ攻撃でゴブリンを倒し、リュックのところに戻った三下は、強引にリュックに靴をぶら下げると、素足のままで、奥へ向かった。
「やっぱり、こっちもちょっと調子がいいな。」
下の様子に変化はなく、靴分のズレが無くなった分だけ軽いのも変わらない。
三下は、調子を維持して、二層目のボス部屋の手前で引き返すと、一層目のボス部屋に戻ってきた。
リュックを下し、軽く体の具合を確認する。
「疲れ具合は、あんまりかわらんな。まぁ、靴ぐらいでそこまでかわっても怖いけど。」
軽い感じが残ってるだけましかね。
三下は、続きを頭に思い浮かべ、ゴブリンの前に出た。
「ギャッ。」
声を上げ、ゴブリンが走り出す。
三下は、わざと左右を確認してから下がる。
ゴブリンの爪が、三下の服をぎりぎり掠めていく。
やっぱり、軽い感じがするぐらいでは、逆関節は無理っぽいな。
もう一度、攻撃を躱し、距離をとって構える。
走って殴るか、フックでちまちまか。
互いに警戒し、止まった状態で、三下は、どうするか?と、思ったところで、ニヤッと笑った。
慎重に下がって、ゴブリンとの距離を開ける。
そして、いきなり走り出す。
警戒していたゴブリンも、走り出した。
三下は、タイミングをとって、飛び上る。
飛び蹴りだ。
と。
咄嗟に止まって、ゴブリンは、両腕で顔をガードしてしまう。
ちっ。しまった。
三下は、前蹴りの気分で、ガードするとは思っていなかったのだ。
しかも、ゴブリンが止まったせいで、タイミングも合わない。
間合いが離れ気味になり、力ののっていない、三下の飛び蹴りがゴブリンのガードにあたる。
「このっ!」
着地するなり、ヤケクソ気味に左の突きをゴブリンのガードに放つ三下、そこに、丁度、ゴブリンがガードから顔を出し、拳が突き当たった。
ゴブリンの頭部が弾ける。
が。
その状態で、無理やり左腕を回して攻撃してくる。
三下は、下がらず、右腕を体にそわせて、脇をガードしながら踏み込んだ。
体が、ゴブリンの攻撃範囲内に移動して、左の前腕部が、三下の右腕にあたる。
同時に、右腕を押すようにして、ゴブリンの左腕を振り払う。
爪が、腕を引っ掛けていくが、無視して振り切ると、さらに姿勢を崩したゴブリンの左脇に、右の拳を打ち込む。
「アギッ!」
右腕をだして、転倒は防ぐも、下がっていくゴブリン。
三下は、追わずに構えて待った。
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