第3話 ゲート

 おいおい、もしかして、ゲート?


 三下は、何故か、黒い円盤のようなものの前に立っていた。




 三下は、目の前で問題が解決したのに、ちょっと遠い小学校までは行く気にならず、運動不足を少しでも解消する為に散歩をするルートを歩いていた。

 地元の人でもまず通ることのない林道だ。


 天気は良く、散歩日和の中、三下が、さっきの怪物を思い浮かべながら歩いていると、通りから少し離れた場所にある地蔵の後ろに、大きい黒い影が見えた気がして、慌てて隠れた。


 さっきのオーク?


 三下の中では、さっきの大柄な一体は、完全にオークになっていた。

 よく見ないとわからないが、確かに、黒い影が地蔵の向こうにある。


 動かない?


 黒い影は、全く動く様子もなく、人型にも見えない。



 三下は、迷ったものの、影に向かって移動を開始した。





 ガサガサ、ゴソゴソと、影に近づいていく三下。

 一応、音を出さないよう注意はしているものの、通りを外れた林の中、どうしても音が出る。しかし、影は、全く動かない。

 結局、何もないまま影の前に来て、


 おいおい、もしかして、ゲート?


 と、なっていた。





 真っ黒な円盤は、直径が2メートルと少し、真円で、横から見ると、厚さは1センチほど、そして、驚くことに、自立している。

 いや、自立している、と、言うよりも、全く微動だにする様子もないことから、空間に固定されている、と、言っていい。しかも、木の枝を円盤に突っ込むと、後ろからは出てこない。反対側からも同じで、突き通すことはできない。

 三下は、またもや、目の前のものが信じられず、暫く、呆然と木の枝を円盤に突き刺していたが、何度、突き通しても木の枝に変化がないことから、思い切って、人差し指を突き立てた。


 痛みはない。


 引き出してみる。


 見た目に変化なし。

 動かしてみても、変化はない。


 次は、円盤の縁を握るように、指を通してみる。

 握れる。

 が、指は、反対側からは出ていない。


「、、、、。」

 

 もう少し悩んだ三下は、円盤の縁をしっかり握ると、思い切って、頭を突っ込んだ。


 かなりビビったが、何の抵抗もなく頭は円盤を通り抜け、


 洞窟?


 そんな感じの、岩場をくり抜いた部屋に、顔を突き出していた。

 正面には、円盤より少し大きい感じがする穴があり、奥へと続いている。

 不思議と中は明るく、全く明かりは必要ない。


「、、、、。」 


 何も言えずに中を眺めていた三下は、急に戻れるか不安になり、慌てて顔を引き抜いた。


 なんともない。


 一応、顔を触って確認する。


「、、、、入ってみるか。」


 足を上げ、円盤へ差し出し、通過したところで下して、足場を確認する。

 かなりしっかりとした感触が返ってくる。


 いきなり崩れることはないな。


 そのまま、通過している足に体重を移し、ゆっくりと、三下は円盤を通り抜けた。

 抜けた先は、先ほど変わらず、どういうわけか明るい。円盤は、部屋の隅にあるらしく、後ろは壁になっていて、正面には、洞窟の入り口。

 三下は、少し入り口を見ると、念のため、円盤を通り抜け、外に出てみた。

 まだ昼には早い角度で太陽が輝いている。

 なんとなく周りを見渡して、変化のないことを確認すると、もう一度、円盤を通り抜けた。


 さて。


 三下は、奥に続く洞窟の入り口を見据えると、ゆっくり歩き出した。


 絶対、何かいるだろ。 


 ゲームそのままの展開に、確信して足を進めていく。

 そして、入り口から、そっと奥を覗いた三下は、すぐにそれを見つけた。


「スライムか。」


 ブヨブヨした、ゼリー状の何かが、壁の窪んだところにへばりついて、伸びたり縮んだり、動いている。

 流石に、いきなり近づくのも怖いため、慎重に近づく三下。

 スライムは(三下の中では決定している。)、三下の手が届くのに少し、といったところで、急に飛び上がって三下に飛び掛かってくる。


「おわっと!」


 三下は、反射的に手を出して、それを叩き落とした。


 バシャ


 それなりの音がして、スライムが下に叩きつれられる。


「倒したか?」


 先ほどの怪物のように、消える様子はないものの、動く様子もないため、慎重に足元に落ちているスライムに顔を近づけると、再び、飛び掛かってくる。


「おっと。」

 

 消えていないことから、注意していた三下は、あっさりと、もう一度、スライムを叩き落した。

 今度は、落ちる音もなく、消えていくスライム。


「よしっ、と。」

 

 既にゲーム気分の三下は、倒したことに満足すると、スライムの消えたあたりをもう一度、確認した。


「アイテムとかは落ちないのか?」


 よく見るまでもなく、何かが光っている。

 拾い上げて見ると、小さなクリスタルだった。

 縦長で、一円玉より小さい。


「つまり、報酬ってわけね。」


 ちょっと、テンションの上がった三下は、クリスタルを財布に放り込むと、更に奥に向って歩き出した。

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