第10話 ウォルター



 金髪おかっぱの、魔法使いのようなローブを着けて木の上で優雅に座り込みドヤ顔する少年の見た目をした男────名をウォルター・ファニーという。

 海ノ旅団においては主人公たるリデルがトワと共に国から逃走するのを阻む中ボスだ。

 こいつは人の苦しむ姿を見るのが好きで、抵抗してくる奴等には拷問、人質を利用して殺し合いをさせ、その他様々な胸糞悪いことを仕掛けてくる。

 女にすら容赦なく、こいつに負ければグロいエンドにも行き着いてしまう程度にはヤバい男。

 そいつがリルに向かって笑いかけた。

「君がリル・オライオンだっけ? スライムの亜種みたいな変なのが喋ってるけど……君も召喚士なのかな?」

 ニッコリと笑った顔は整っていて女が見惚れるほど。

 しかし奴は綺麗な顔で指を鳴らしつつ、マンティコアもどきの身体を半分引き裂いてみせた様子はとても気味の悪いものだった。

「……なんだ、あれ」

 あんな核、ゲームにあったか?

 その腐ってる身体には合わない、人間の拳より大きく赤い核が心臓のごとく鼓動を鳴らす。

 そして、その核に老人の男がいた。半身を埋め込まれていたのだ。

 見たような顔だけど誰なのか分からない。しかしリルは違った。

「あっ……あぁ……お祖父様!?」

「そう! そうだよ! かつて学者として名を知らしめた君の祖父さ! まあもう死んでるけどねぇ!」

「お祖父様を離して!」

「せっかくキメラの良い材料になったんだから解放するわけないだろ? あっ、君のお爺さん以外にもいるから安心してよ」

「そんなっ!」

 核にじわじわと溶けていくリルの爺さん。その様子からファンナム村の人の死体を材料として作られたのだと気づく。

「ああ、みんな……お祖父様……っ!」

 リルが身体を震わせ涙を流した。

「ふふっ────」

 その顔が見たかったんだ!

 そう、ウォルターは歪んだ笑みを浮かべる。

 俺らは魔物としてしか見てないのか、リルの心を折ることばかりを注視する。

 それはとても気分が悪く吐き気のするものだ。

 でもそれがウォルターの生き甲斐。帝国で優秀な召喚士として認められるぐらいには、数多くの生き物を従属させてきた男のやり方。

「さて、君は死体にするなって王からの命令だからね。おとなしく拘束させてもらうよ……まぁ、四肢が破損する程度は問題ないでしょ」

 マンティコアもどきをけしかけたウォルター。

 リルが彼を睨み、雷撃魔法を放つがそれすらもマンティコアが防御し、迫り来る。

 それをボーッと見ているわけにはいかなかった。

 俺達に興味がないのは分かる。ウォルターに勝つためにはまだレベルが足りない。

 逃げればいいんだ。リルを見捨てて俺達は森の中でのんびり隠れて生きていればいい。

 ────でもそれは、後悔しない選択肢といえるのか。

「させるわけねぇだろ!」

「キュッ」

「────!」

 俺の感情が伝わったのか、ヒビキ達も前へ出る。

「何のつもりかな。スライム亜種」

「お前のやってることがムカつくから全部壊したくなっただけだ……系譜する気にもなれねえぐらいにな」

「へぇ? ……人間みたいに生意気なこというね。そういうの好きだよ。絶対に勝てないと分かったときの反応が楽しみだ」

 目を細めたウォルターが、俺達を獲物と見定めた。





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