特別編 楽しい竜人学園!
これは、私達の暮らす現代に少し似ている、とある世界の物語。この世界には様々な種族が暮らしています。
人間族、ビースト族、バード族、マリン族。そして、数ある種族の中でも最強のドラゴン族。
彼らは昔から学習も労働も同じ環境で行い、世の中をより良くしていために頑張ってます。
さて、この物語はあるドラゴン族の、一日の様子をお話します。一体何が起こるのでしょうか。
では、この世界を一緒に見てみましょう。
* * * * * * *
「それでは、行ってきますう!」
わたしはグラス。私立竜人学園の高等部一年の生徒ですう。この学校は、竜人学園といっても、ドラゴン族だけではなく、ビースト族やインセクト族なども通っているんですよお。周りを見回すだけでも、尻尾が付いてたり翼が生えてたりするのがいて、色々なタイプの生徒や先生がいますう。
「皆さん、おはようございますう!」
父サクスムと母リヴィエールの間に生まれたわたしは、地元の学校や両親からの訓練で成長して、もっと強いドラゴン族になるために都会にある竜人学園に入学したのですう。 ……あっ、わたしの挨拶に近付いて来た子がいますう。
「あっ、グラスちゃんおはよ〜〜〜」
「グリューさん、おはようございますう」
「今日も授業、ほどほどに頑張ろうねえ〜」
この子はグリューヴルムちゃん。蛍のチカラを持つインセクト族の女子で、将来の夢はお医者さんなんですう。
キーンコーンカーンコーン♪
今日も授業が始まりますう。
「それでは、今日の授業を始める!」
わたし達の担任のヴォイテク先生、熊のビースト族ですう。実は父とは親友同士で、彼が色々と手伝ってくれたおかげでここに入学出来ましたあ。
「国語や数学や社会科なども、みんながいれば勉強は楽しいですう!」
「そこ!あんまりベラベラ喋ってたら他の生徒の妨げになるぞ!」
「すっ、すみませんっ!」
だからといって、わたしを含め誰にも
「今日の授業も、なかなか大変だったねえ〜」
「そうですねえ、次は体育の時間ですう」
体育の時間、わたしが一番楽しみにしている時間がやって来ましたあ。
「今日のバドミントンの練習は、我が校が誇るこのお方が指導してくれる、さあこっちへ来てくれ」
そう、あの人がやって来たのですう!
「今日も良い風が吹く……」
「「「ヴェーチェル先輩ステキー!!!」」」
竜人学園のみんなの憧れ、ヴェーチェル先輩の登場ですう!緑の翼を持つバード族の彼は、頭脳明晰スポーツ万能、振り返れば10人中100人が釘付けになる魅力的なお方なんですう!
「今日はヴェーチェル先輩がみんなにバドミントンの練習のために来てくれた。みんなも存分に楽しんでくれ!」
ヴォイテク先生もテンション高いですう。いよいよヴェーチェル先輩とのバドミントン練習が始まりますう!
「ハッ!それっ!」
「やっ!たあっ!」
「「「すごーい!!!かっこいー!!!」」」
ヴェーチェル先輩の一挙手一投足に、クラスメイト達は男女問わず大興奮ですう!
「次は私の番……ドキドキしますう……!」
「気負う必要は無い、いつもの君で来てくれたまえ」
「はっ、はいですう!」
いよいよわたしはヴェーチェル先輩との練習に挑みますう!
「やっ!それえっ!」
「なかなかやる、君は才能がありそうだ」
プレイの途中でも褒めてくれるヴェーチェル先輩、素敵ですう……!
「さて、そろそろ本気を見せるとするか、グラスと言ったな、飛んでみせよ!」
バサアッ!
ヴェーチェル先輩が飛びましたあ!
「わたしも、飛びますう!」
バサアッ!
空に浮いたわたしとヴェーチェル先輩。ここに、竜人学園の誇る空中バドミントンが始まりますう!!!
「やあっ!」
「ハァッ!」
空中でシャトルを打ち合うわたしと先輩……!
(誰にでも分け隔てなく本気で向き合うヴェーチェル先輩……とっても素敵ですう……!)
(グラスの打ち返すシャトルにも、優しさだけではない本気の心も伝わってくるよ……!)
ラリーは長く続き、お互い地上に降りると、みんなが拍手で迎えてくれましたあ。
「ヴェーチェルセンパイサイコー!!!」
「グラスちゃんもかっこよかったよー!!!」
疲れ顔のわたしを優しく見つめるヴェーチェル先輩……。
「あ、ありがとうございますう!」
「良いプレイだった。グラスよ、その高貴な精神をこれからも大切にしてくれたまえ」
「は、はいいっ!大切にしますう……///」
体育の授業が終わり、お昼ご飯の時間ですう。普段はお友達のグリューさんと一緒に食べてますう。
「グラスのお弁当、今日もいっぱい詰まってるね〜」
「そうですか?グリューさんのもヘルシーだと思いますよお」
「医者たるもの、自身の養生も必要だからねえ〜っと、それにしても、グラスの卵焼き、いつ見ても大きいよね〜」
「え、ええ……今日も良く出来たと思いますう」
「ともかく、どんどん食べて、大きく強くならないとねえ〜」
グリューさんは一ヶ月に一度わたしのお弁当に入っている大きな卵焼きに何かを察している様子ですう。
そんな感じで、お昼ご飯の後の授業も問題なく終わって、下校の時間になりましたあ。
「では、今日の授業はここまで!」
「「「ありがとうございました!!!」」」
わたしも、お友達も、それぞれの家へと帰って行きましたあ。
・・・
学校から歩いて40分かかる所にある自宅も、翼で飛んでいけば10分で着きますう。
「ただいまあ!」
わたしは自宅の鍵を開けてドアを開き中に入りましたあ。
「あれがこうでこうなって……お、グラスか」
「あっグラスさん、ちょうどシビルに勉強教えててさ!」
居間には、6歳ぐらいの女の子が、同じぐらいの歳の男の子から読み書きを教わっていますう。シビルちゃんとエイリーク君ですう。
「シビルちゃん、ただいまあ!エイリーク君も良く来てくれて嬉しいですう!」
「グラスか、ああ、今日も色々教わったよ」
シビルちゃんはある夜遅くの帰り道で、全身ボロボロの状態で出会い、わたしが保護している女の子ですう。話によると、彼女は両親から虐待されて家出したみたいで、もう帰りたくも無いと言ってましたあ。大の人間嫌いで、私の家からはあまり外には出ませんが、エイリーク君だけには心を許していますう。
「初めてシビルを家に入れた夜、お風呂に入れてあげたり、食事を食べさせたりで、大変でしたあ……」
「それにもうあんな家に帰る理由もこないだ無くなったしな」
「そういえばそうだったよな……この間のニュースである夫婦が事故に遭い亡くなったというのが、シビルの両親だったって話だったよな」
「だからと言って特別な感情も何も湧いてこなかった。あっそうですかって感じだった」
……ちょっと暗い話をしてごめんなさいですう。先ほどシビルちゃんに勉強を教えていたエイリーク君は、人間の通う小学校に通ってて、ひょんなことからシビルちゃんと会って以来、お友達同士なのですう。
「俺、実は今度、学校の裏山へ冒険ごっこへ行こうと思っているんだ、グラスとシビルも来てくれるか?」
「はいですう、この日は予定も何も無いので、勉強の息抜きも兼ねて行ってみますう!」
「読み書きだけが勉強じゃないって、エイリークは言ってたからな」
「よーし!当日は時間通りに全員来てくれよな!」
エイリーク君と冒険ごっこへ行く約束をしましたが、尺の都合もあってこの話はまたの機会にお話しようと思いますう。
「じゃあな、グラス!シビル!」
「今度の冒険ごっこ、楽しみにしてるぜ」
「また来てくださいねえ」
エイリーク君が帰っていった後、わたしとシビルちゃんは一緒にお風呂に入りましたあ。
シャワアアアアアア……
「シビルちゃん、お湯加減はどうでしょうかあ」
「ああ、良い湯だよ。それにしてもグラスのシャワー、水で出してるよな」
「わたしの身体にお湯がかかってもすぐ冷たくなっちゃうので、ガス代節約も兼ねて水にしているんですよお」
「ガス代ねえ……グラスも色々大変だよな」
お風呂から上がったら、一緒にカレーライスを作って召し上がりましたあ。
「シビルちゃん、野菜を切るのが上手になりましたねえ。いつもより美味しく感じますよお」
「そうか?言われた通りにやってるだけだが」
「やっぱり二人で食べるご飯は美味しいですう」
「……ああ、俺もグラスがいると楽しいよ」
そんなこんなで夜は更けて、そろそろ寝る時間になりますう。今日も色々な事があって楽しかったですう。明日もきっと楽しい事があるかもしれないですう……。
パジャマに着替えて、寝ようとした時、シビルちゃんが一冊の漫画を読んでいましたあ。
「シビルちゃん、何を見ているのでしょうかあ」
「甘い香りのする人達の物語だよ、俺もこんな風に楽しく過ごしてみたいよ」
「そうなのですかあ、わたしも寝る前にちょっと見ていきますう」
わたしは、シビルちゃんと一緒に漫画を読みましたあ。
そこには、バニラの香りの少女とチョコの香りの少女が溶け合うように同じ時を過ごす様子が描かれていますう……
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