氷竜の子グラス~APPEND EPISODE~

早苗月 令舞

第4.1話 ドラゴンと遊びたい

 皆さんこんにちは、グラスですう。これからお話する事は、本編の第4話から第5話の間の時系列のお話ですう。いきなりこれを見てもお話が分かり難いと思いますので、少なくとも本編の第4話まで見てからこのお話を見る事をオススメしますう……と、言いたいところなのですが、このお話には、本編第20話以降の、が含まれていますう……。


 なので、もしも可能であれば、第20話まで見てくれると、このお話をもっと楽しむ事が出来ると思いますう。前置きが長くなってしまいましたが、それでは始めますう!


   * * * * * * *


 わたしは氷のドラゴン、グラスといいますう。幼い頃から両親の愛と厳しさで育ったわたしは、15歳になった日にとある山で一人暮らしをする事になりましたあ。


 わたしのお仕事は、麓にあるアルブル村の人々を手伝ってあげる事ですう。飛んで荷物を運んだり、釣れた魚を凍らせたりなどなど……。


 わたしがアルブル村に来て数日が経過して、今日もみんなのお手伝いがしたくて、いつものようにお仕事の依頼を受けに来ましたあ。


「氷竜グラス、お前に大きめな仕事だ」

「大きめな仕事……何でしょうかあ」


 今回仕事を紹介する人は、初老の男性のようですが、何だか独特の雰囲気を感じますう。


「依頼者は、ここから遠く離れた街の人だ。どうやら、ドラゴン族でしか解決出来ない事案らしい。訳あって仕事の詳細は明かせないとの事だ。それでも良いと言うのならこの依頼を受けて欲しい」


 男性の話に、わたしは答えましたあ。


「ドラゴン族でしか解決出来ないのなら、わたしが行ってみますう!」

「良い返事だ、だがお前はまだ若い、あまり無理をするな」


 仕事を請け負ったわたしは、依頼人がいる街の方へと飛んでいきましたあ。



 街に到着しましたあ。アルブル村と違って沢山の人がいる活気あふれる所ですう。わたしなんかがここにいたらさらに浮いてないか心配ですう……。


 すると、今回の仕事の依頼人と思われる人が近付いて来ましたあ。


「君が私達の依頼を受けてくれたんだね?」

「訳アリで詳細を伝えられなかったけど、受けてくれてありがとう」


 どうやら、依頼人は夫婦のようですう。


「は、初めまして、グラスといいますう。今回はどのようなご依頼でしょうかあ……」


 すると、依頼した夫婦の女性の後ろから、白い服を着た焦げ茶色髪の女の子が出て来ましたあ。わたしの事を興味ありそうに見ていますう。


「あ……これが、ドラゴン族……?」

「そうよ、この人が今日遊んでくれるのよ」

「え、遊んでくれるって、どういう事ですかあ?」


 すると、その子の父が言いましたあ。


「依頼というのは、ここにいる娘のシルビアと一日だけ、一緒に遊んで欲しいのだ」

「一緒に遊ぶって……この子とですってえ!?」


 思わぬ依頼内容に驚いちゃいましたあ。依頼内容を伏せた上での依頼という事で、ちょっと危険な要素もある仕事かと思い身構えていましたが、まさか子供と遊ぶのが今日のお仕事だなんて……!わたしは依頼人の夫の方に言いましたあ。


「この依頼を受ける前に、どうして内容を伏せて頼んだのでしょうかあ」

「それは、今住んでる所が、人間以外との交流がご禁制となっていて、このシルビアが、絵本で見たドラゴン族に会ってみたいと言ってね、場所をここに移して依頼を受けてくれるドラゴン族を探していた所だったのさ」

「きっとこの依頼を受けてくれたあなたなら、シルビアちゃんのお友達になってくれると思うわ。改めて、この依頼受けてくれますか?」


 ドラゴン族でしか解決出来ない依頼、それはなんとこの子供と一緒に遊ぶ事みたいですう。子供はわたしの事を見つめていますう……。


「何だかこの子、初めて会ったって感じがしないですう……」

「何だこのドラゴン、寒さの中に、暖かさを感じるっていうか……」

「この感じ、初対面なのに仲良さそうね!」


 妻の声に、わたしは答えましたあ。


「はいですう!きっとこの子に良い思い出を作ってあげますう!」

「それじゃあ、夕方までこの子をよろしくお願いしますね!」

「私達夫婦はしばらくこの街の観光を楽しんでいくよ」


 夫婦はこの子、シルビアちゃんをわたしに預けると、二人で街の観光に行きましたあ。改めて、向き合うわたしとシルビアちゃん。


「あなたがシルビアちゃんですねえ」

「そ、そうだよ……」

「今日は何をして遊びましょうかあ?」

「じゃ、じゃあ、尻尾、触らせてくれる?」

「いいですよお、でも、先端の黄色い棘は危ないから触っちゃダメですよお」

「わかった」


 シルビアちゃんは、わたしの青い鱗の尻尾を触ってきましたあ。指の感触が伝わってきますう。


「ひんやりしてて、気持ちいい」

「そうなのですかあ、良かったですう」

「もうちょっと触ってていい?」

「い、いいですよお……」


 シルビアちゃんは続けて、わたしの青い尻尾をまんべんなく触ってきますう。付け根の辺りを触られると、ちょっとくすぐったいですう。


「えへへ……ええっと……わたし、そろそろ、空を飛んでみたいなあと思ってましてえ……」

「やっぱり、ドラゴン族って空飛べるの!?」

「もちろんですよお!良かったらシルビアちゃんも空の散歩をしてみませんかあ?」

「うん!したい!飛んでみたい!」

「分かりましたあ!ではしっかり掴まっててくださいねえ!!!」


 わたしはシルビアちゃんを抱えて、空高く飛んで見せましたあ!


バサアッ!!!


 陸はぐんぐん遠くなり、数秒後、わたしとシルビアちゃんは街の上空にいましたあ。


「ほんとに飛んでる……すごいっ……!」

「さて、この街を空の上からお散歩してみましょう!」


 わたしはシルビアちゃんを腕に抱えながら、街の至る所を飛んでみましたあ。


 時計塔の近くを飛んだり、橋の下をくぐったり、人通りの多い道を空から眺めたり……。


 すると、シルビアちゃんが観光中の両親を見つけましたあ。


「あっ!お父さんとお母さん!」

「本当ですう!良く見つけましたねえ」


 わたしとシルビアちゃんは、両親の近くに寄って挨拶をしましたあ。


「こんにちはですう!シルビアちゃん、とっても良い子ですよお!」

「うん!今日はとっても楽しい!」


「二人共、すごく楽しそうだな」

「今日の日記にはシルビアちゃんがお話した事沢山書いてあげるからね!」


 それからしばらく、わたしとシルビアちゃんは空の散歩を楽しみましたが、気付いたらすっかり日が暮れそうになりましたあ。


「そろそろ降りる時間ですう」

「もうちょっと飛んでたいな……」

「じゃああと10秒ほどですよお」


 わたしとシルビアちゃんは地上に降りて、両親の所へ帰してあげましたあ。シルビアちゃんはまだ帰って欲しく無いって表情でわたしを見ていますう……。


「わ、わたし、グラスさんともっと遊びたい……!」

「グラスはこれからも沢山の人の役に立つために頑張らないといけないからね」

「うんわかった……!」

「今日は娘がお世話になりました、こちらが今回の報酬です」

「わあ、こんなに沢山……こちらこそ、楽しく過ごせましたあ!」

「あの……グラスさん……また一緒に遊ぼうね!」

「はい!また一緒に遊びましょうねえ!」


 こうしてわたしはシルビアちゃんと両親の前から飛び去って行きましたあ。


 ……帰り道の空。


「ハァ……今日は何だか色々あって疲れましたあ……あっ!?」


ビュウウウウウン!!!


 あまりにも突然の突風で、わたしはバランスを崩して吹き飛んじゃいましたあ!!!


「わあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」


   * * * * * * *


ヒュウン、ドサッ!!!


「いっ、いててですう……!」


 気が付くとわたしはベッドから転げ落ちていましたあ……。あれは夢だったのでしょうかあ……。


「……ううん……でも、あのシルビアちゃん、どこかでまた、会えるのでしょうかあ……」


 こうしてわたしは着替えて、朝食を食べて、いつものように、アルブル村へと飛んで行きましたあ



 その日、村の木こりが何者かに襲われて重軽傷を負っていましたあ。その日から、森には人を襲う恐ろしい怪物が現れるという噂が広まりましたあ。


 その後、わたしは噂の怪物の姿を見ようとして、夜の森を歩き回ると、傷と泥だらけの子供を見つけ、思わず保護して一緒に暮らす事にしたのですがあ、それはまた、別のお話なのですう……。


 本編第5話へ続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る