第24話 キラキラ世界ではしゃぐコト
突然ゲームセンターに行くことになった30分後、僕達三人は駅前のコインロッカーに、この前のように荷物を入れていた。
「ふあぁ、これで肩が楽だ〜〜! じゃあ早速ゲームセンター行こ!」
「うん! 早く行こ行こ! なんかこういうの初めてでワクワクする!! というか、二人ともここに入れてからこの前ショッピングモール行ってたんだ」
「そう! 流石にランドセル背負ったままだとバレちゃうからね」
灘さんが背伸びをしながらそう言うと、相田さんは目をキラキラさせてコインロッカーを見つめながら頷いていた。どうやら何かに納得しているようだった。
そんなやり取りをしてから、二人とも歩き出したので、僕もその後を追う。
でも、ふとした疑問があったので二人に後ろから尋ねてみる。
「そ、それでゲームセンターってどこにあるの??」
「そりゃもちろん、この前のショッピングセンターの中だよ!」
よく分からないけど、僕の心の不安が少し消えた。
ーーーーーー
ショッピングモールに着くと、三人で通路奥のエレベーターに向かった。
灘さんと相田さんは最近の音楽について話してて、僕は一人で歩いていた。
二日前に来たけど、心のワクワクさは今日の方が上だなぁと感じる。
ゲームセンターかぁ。二回ぐらいはお父さんに連れられて行ったことあるけど、それもだいぶ前だし、ちょっとドキドキするなぁ。
それに小学生の僕達だけで行くのもなんか、ちょっとダメなコトな気がしてくる。
うーん。でもああいうところ行くとよく同い年ぐらいの子も遊んでるし、どうなんだろう?
でも楽しみだ。
なんて思っていると、あっという間にエレベーター前の広場に辿り着く。
ーーーー
エレベーターで4階に降りると、そこから暫く歩いた所にゲームセンターがあった。
たくさんの照明が光っていて、UFOキャッチャーからメダルゲーム、カードゲームまで。
色とりどりの光が点滅し、ゴワゴワとした音が鳴り響いていた。
「うわぁ! すご!」
思わず全身の毛が立ち、声を出してしまう。
見るだけで楽しい場所に早く行きたいと、そう思った。
「マコトくんゲームセンターあんまり来たことないの??」
灘さんがビックリした目でそうきいてくる。
「う、うん。久しぶりだったから思わず声出ちゃって……それにここのゲームセンターが思ってた以上に大きかったから」
「そうだったんだ。じゃあマコトくんも今日は一緒に楽しも! ね、るみちゃん! ってあれ??」
僕も我に返って灘さんに返事をして、そっちを振り返ると、そのさらに奥に居るはずの相田さんが消えていた。
「あれ?? るみちゃんどこ行った??」
キョロキョロ辺りを見渡す灘さんの横で、僕も周りを見る。
すると、そこには既にゲームセンターの中に入って両替機で両替してる相田さんの姿があった。
「二人とも遅いよ!! 早く中で遊ぼ!!」
僕と灘さんはその姿を見て呆気に取られつつ、すぐにゲームセンターの中に入った。
ーーーー
中に入ると、灘さんと相田さんは慣れた様子で店内を回り始めて、僕もその後を追うようにして歩いて、すれ違うUFOキャッチャーを一つずつ覗いていた。
そうしていると、二人が急に立ち止まって、ガラスケースの中を指差しながら話し始めた。
「これやろるみちゃん!! パンクウサギのぬいぐるみ超可愛い!!」
「ホントだ!! やろやろ! しかもこれ一昨日出たばっかりのやつだよなこちゃん!! ネットで見た!」
そんな会話をする二人の横で、僕もその台の中を覗き込む。
すると、そこには棘のある肩パットを付けて、サングラスをしているイカついウサギのぬいぐるみが飾られていた。(30cmくらい?)
オラついた感じなのに、なんかかわいい。
なんて思っていると、灘さんがさっそく500円を投入してその台を遊び始める。
「じゃあわたしからやるね! 見ててよ二人とも! 私のUFOキャッチャーテクを!」
そう言いながら、光るボタンを押して動かし始める灘さん。
右に左に動かして、ぬいぐるみの真上にUFOを持ってくる。
そしてそのままボタンを押すと、UFOがぬいぐるみを掴んで……アームが綺麗にすり抜けていく。
それを見て固まる灘さん。だけど苦笑いで二回目、三回目……とプレイする。
「えーーーー!! なんで取れないの!! もう次で六回目なのに!!」
「アームが弱い台なのかもしれないね〜〜」
「でもネットの動画だと簡単そうに取れてるじゃん! わたしもそれ真似してるつもりなのに……全然取れないじゃん!」
「まあまあ、ここは一旦落ち着こ! 最後の一回で取れるかもしれないし!」
「う、うん。よし、取るよ!!」
そして意気込んで灘さんが押すも、五回見た光景がまた繰り返される。
「ええええ!! もうやだ!!」
そう言うと灘さんが肩を落として、珍しくシュンとしてしまう。
そして、その肩に相田さんが手を置いて、話しかける。
「任せてなこちゃん!! ここは私が、取る!! そして取れたらなこちゃんにプレゼントするよ!」
「るみちゃん……!!」
自信満々な顔でそう宣言する相田さん。それを見て顔を明るくする灘さん。
500円がまた投入されて、ボタンが光り始める。
そしてぬいぐるみにアームを引っ掛けて……。
「どうしてこれ取れないの!! もう六回目だよ!?」
相田さんも見事にアームがすり抜けていた。
ぬいぐるみが大きいわけでも無さそうなのに、スルッと抜けていた。
相田さんもさっきの灘さんみたいに、落ち込んでしまった。
「ごめんなこちゃん……取れなかったよ……」
「良いんだよるみちゃん、気にしないで。きっと次は取れるから! わたしもう一回やるから!」
二人は肩を抱き合いながらそう話していた。
なんとなく僕の存在が忘れられてる気がする……。
そう思って、僕もその台の前に立つ。
「あ、あのさ! ……その、僕もやってみていいかな」
「もちろんいいよ!! わたしたちの仇を取ってマコトくん!」
「う、うん!」
そう託されて、僕もとりあえず500円を入れてみる。
そしてボタンを動かして、アームをパンクうさぎの首元に入れてみる。
確かよく見てる動画でこうやってた気がする。
なんて思いながら見ていると、徐々に下がったUFOがぬいぐるみから少しずれて落ちる。
そして、首元に引っかかって、ぬいぐるみがヒュッと持ち上がって、ブラブラと浮いた後に穴に落とされる。
思わず三人とも、一瞬その場で固まってしまう。
そして目を見合わせて……。
「あ、えっと取れたよ! たまたまだろうけど……」
「凄いよ凄いよマコトくん!! 才能だよ!!」
「本当にそうね!! 私ぬいぐるみ全体を掴むことしか考えてなかった!」
灘さんと相田さんがそう褒めてくれる中で、まだボタンが光っていてあと五回も出来る。
「じゃあ、もう一回やってみるね。今度は今とったやつの隣狙ってみる!」
「任せたマコトくん! マコトくんなら出来る!!」
「ファイト!!」
二人からの声援を受けながら、今度もまた首元を狙ってみる。
すると、さっきとは違い、首元の肩パットにアームが食い込んで、ぬいぐるみが持ち上がる。
そして、また取れる。
「ええええ!!!! マコトくんこれ本当に才能なんじゃない!? ねぇるみちゃん?」
「う、うん。なんかここまで取れるとさっきまでのこと忘れちゃうね」
なんて言われながら、残りの四回をプレイする。
三回はアームがすり抜けてしまい、ラスト一回になる。
やっぱりさっきまでのは偶然だったのかな。
でも、二回取れてるし、最後もう一回だけ取れないかな……。
そう思いながら、位置を調整して落としてみる。そしてアームが首元に入って……すり抜ける。
あぁ、そう思った瞬間アームの先がタグに引っかかって、ぬいぐるみが持ち上がる。
そして、穴に吸い込まれていく。
「あ、取れた」
そして結果的に、僕の手元には三体のパンクうさぎが並んでいた。
怖い見た目なのに、並ぶとなんか可愛さの方が勝っていた。
「えーー本当に凄いよマコトくん!! わたし何回やってもダメだったのに!!」
「本当そうだよ!! 私なんてなこちゃんにあんなこと言って全然取れんかったのに……」
人に褒められることがあんまりないから、すごく嬉しいなと思いつつ、だけど偶然取れただけだとも思って、なんとなく複雑な気持ちになる。
そして、ふとそういえばこの二人にこの前のテストの時のお返しが出来てないなと気づく。
「あ、あのさ! その、灘さんと相田さんこのぬいぐるみあげる! その、この前テスト勉強教えてくれた時すごく助かって、初めてテスト解けて嬉しかったから、そのお礼というか……」
そう言って二人にぬいぐるみを渡すと、二人とも目を丸くして、「えっ」という表情で固まる。
そして1秒後、飛び跳ねて喜び出す。
「いいの!? 本当に!? やったーー!! ありがとうマコトくん!! わたしその、本当にこのパンクうさぎ大好きだから……嬉しい!!」
「え、そんな悪いよ! ええ、でも……マコトくんがそう言うなら貰うね! 私もすごく嬉しい!!」
想像以上に喜ぶ二人を見て、なんとなく僕も嬉しくなる。
そうしてその後も他のUFOキャッチャーをしたり、メダルゲームをしたりしていたら、あっという間に帰る時間になってしまった。
帰る頃には、ぬいぐるみがもう3つ増えていた。
ーーーー
「はぁ〜〜楽しかった!! もうマコトくんのおかげだよ!! こんなにぬいぐるみ取れたし!!」
「本当だね! 私もこんなにUFOキャッチャー取れるの見たの初めてだった! カッコよかったよ!!」
「う、うん。僕も楽しかった」
遊び終えた僕達は地下通路を通って駅前に向かっていた。
それぞれがゲームセンターの袋を手に持ちながら、人混みの中を歩く。
「今日のMVPはマコトくんだね!! まさかこんなに凄いことが出来たとは……」
「私も異議なし! ほんとね! 他の台でもポンポン取ってたし、これは才能と言わざるを得ないよ!」
「そんなことないよ……たまたまよく観てた動画の通りに出来ただけだし」
「私も同じやつ観てたのに取れなかったからそれはない!!」
そして僕も、二人と一緒に苦笑しながら歩いていると、ふとあることに気付いて立ち止まる。
「あ」
「ん? マコトくんどうした?」
「忘れ物??」
「そうじゃなくて、えっと、その……これ取ったやつ持ち帰ったらバレちゃうなと思って」
「「あ」」
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