第22話 帰路に着くコト


 本屋から出た後、僕と灘さんは雑貨屋さんに寄って、最近流行りのアニメのグッズだとか、おもしろグッズなんかを見ていた。


「マコトくん! 見てこれ! 光るアザラシのペンケースだって! 可愛い!!」


「ええ、なんかそのアザラシ溶けてて怖い……」


「そうかな? 可愛いと思うんだけどなぁ」


 灘さんが持ってるアザラシのペンケースをよく見ると、顔だとか体がドロッと溶けていて、目玉も片方飛び出てて、ゾンビみたいな見た目をしていた。


 な、灘さんこういうの好きなんだ……意外だ……。

 ホラーだけど可愛いみたいなやつが好きなのかな?


 なんて思っていると、灘さんがまた変なやつを持って見せてくる。

 今度は本を読んでるラッコのフィギュアだった。もちろん片方から目が飛び出てる。


「見てみて! これ可愛くない!? しかも声出るんだって! 『この本面白すぎて目ん玉飛び出たわ!』」


 はしゃぎながら灘さんがボタンを押すと、急にラッコが叫び出す。

 聞いたこともないセリフに思わず笑ってしまう。


「た、確かに可愛いかもね」


「でしょ! あと、なんかマコトくんに似てる気がするんだよね。この本読んでる感じが」


「えぇ……僕そんな顔してないよ……」


「ええ!! してる時あるよ。なんか私が言うと、驚いた顔で目だけよく見開くし。あと、休み時間に本読んでる時も、面白すぎる!! みたいな顔してる時あるよ」


「そ、そうだったんだ……知らなかった……」


 急に言われたけど、僕そんな顔してたんだ……。

 でも確かに、本面白い時無意識に目を見開いて、そのページを一旦何回も読んじゃうかも。

 だけど、こう言われると恥ずかしいな……。


「じゃあ私このラッコ買おっと! なんか可愛いし! てことでそろそろお店出よ!」


「う、うん」


 そうしてお会計を済ませた後、僕達はそのまま雑貨屋さんを出た。


ーーーー


 雑貨屋さんから出ると、既に17時を回っていて、僕達の帰る時間になっていた。


「じゃあ帰ろっか」


「うん」

 

 僕と灘さんは駅前のコインロッカーに向かって、ランドセルを背負って、電車に乗った。


 電車の中は人でいっぱいで、二人とも押されるようにして乗った。


 駅に着くと、僕と灘さんは人の流れに沿って、改札まで出た。


 改札に出ると、灘さんが自分のスマホを片手に持って時間を確認していた。


「ねぇマコトくん、最後に寄り道してかない? 少しだけ」


 そう言われて、僕が頷くと、灘さんが歩き出したので、その後ろをついて行った。


ーーーー


 しばらく歩くと、目の前にたくさんの自動販売機が並ぶ場所が見えた。


 6台ぐらいの自動販売機の明かりが、空が赤く染まってる夕暮れ時に白く光ってて、すごく目立ってる。


「着いた! ここ! あたし夕方の少し暗い時間に、こういうところで飲み物買って誰かと話すのしてみたかったんだ〜〜ひひっ」


 灘さんはそう言いながら笑うと、自動販売機の方へと走っていった。


「どれ飲もうかなぁ。あ、この冷たいココアとか良さそう! チョコレート入りって書いてあるし、これにしよ!」ピッ


 灘さんが楽しそうに選んで買うのを見て、思わず自分も選ぶ。

 なんとなく、そうした方がいいんだろうなって思う。


「じゃあ僕はカフェオレにしてみる」


「おっマコトくん大人だね〜〜! わたしもカフェオレ好きだよ! 苦いコーヒーは好きじゃないけど」


「僕も同じ。砂糖入れないと飲めない……。でもカフェオレはなんか、甘さと苦さが丁度よくてよく飲んでる」


「やっぱり甘党が正義だよね!」


 なんて会話をしながら、僕と灘さんは自動販売機前にあるベンチに二人で座る。


「マコトくんはその、今日楽しかった??」


 首を傾げながら、僕に聞いてくる灘さん。

 そう言われて、改めて今日を振り返ると、こんなに濃かった日はないってぐらい、楽しいことたくさんあったなと感じる。


「うん、楽しかったかな。すごく。こんなに楽しかったの初めてかもしれない……クラスメイトの湯川くんと先生に会ったのはびっくりしたけど……」


「あはは、確かに。行くとこ全部に誰か居たからドキドキしたよね。」


「うん。ダメなコトしてるからか、余計にドキドキした気がする……」


「そうそう! なんとなくだけど、私的に、ダメなコトしてる時って誰かと会いやすい気がするんだよね。よくわかんないけど」


「僕もそんな気がする。やっぱりイケナイコトしてたらバレちゃうものなのかな……」


「まあ私達の場合はバレても問題ないことを一応してるつもりだけどね! ルールも決めてるし! でも、バレちゃいそうって状況はどうしてもドキドキしちゃう」


 どこか遠くの空を見ながら、笑って話す灘さん。

 段々と夕陽が沈んでいってて、街灯の光が強くなってる気がする。


「とりあえず、最後まで今日やりたかったダメなコト出来て良かった! マコトくんありがとね!」


「う、うん。僕も楽しかったからその……ありがとう」


「どういたしまして! ふふっ。今日はマコトくんすっごい話してた気がする!」


「そ、そうかな? ……そうかも」


「お、珍しく心当たりあるんだ! やっぱりマコトくんはダメなコトが好きってコトだね!」


「そ、そんなことは……ないと思う……たぶん。と、というか、全部灘さんが誘ったことじゃん!!」


「そうだけど、マコトくんの話は別の話でしょ!」


「まぁ、うん……そうだけど……」


「でしょ! まあともかく二人楽しかったならそれでヨシ!」


 そこで急に灘さんが立ち上がって、僕に振り向く。


「じゃあ帰ろっか!」


 そうして僕と灘さんは一緒に駅まで戻ったあと、それぞれの家のある方向へ帰った。


 帰り道、今ランドセル背負って家に帰っていることがなんだか不思議な気持ちになった。

 

 

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