第15話 かけるコト
僕の家で行われた勉強会。
僕がテスト範囲を全部復習すると、灘さんから突然ダメなコトをするよ! と言われ、今現在僕は上半身を起こして固まっている。
「えぇ……。もう頭回らないよ……」
「大丈夫! ゲームなら回るって! 楽しいし!」
「それでなこちゃんは何のゲームするつもりなの??」
金髪を揺らしながら頭をかしげる相田さんの質問に、人差し指を顎に当てた灘さんが悩むように答える。
「罰ゲーム? かな! ゲームで負けた人が何かする〜〜的な!」
「ほおほお。普通に楽しそう!」
「でしょ! でもその罰ゲームが全然思い付かないんだよね……。ここマコトくんのお家だし、出来ないこともたくさんあるし」
「うーん、とりあえず三人で案出しあってから決めよ? 出来なさそうなら僕が言えばいいし」
「それもそうだね! じゃあ二人とも! ゲームで負けた人が何するか紙に書いてみて! 書き終わったら伏せてね! 最後にいっせーの! で見せ合お!」
と灘さんに言われたので、とりあえずそれぞれが勉強ノートを少し破って、そこに書き込む。
唐突な流れで罰ゲーム付きのゲームをすることになっちゃったけど、罰ゲームを考えるのは意外と楽しいかもしれない。
でも確かに、いざ三人が平等に受けられる罰ゲームってあんまりないかもしれない。
灘さんが言う通り、僕の家でってなると余計にというか、うーん。
僕の家で、家だからこそ出来る、家にあるもの、あっそうだ!
僕が思い付いたものを書き終えて、鉛筆を机に置くのと同時に、他の二人も紙に書き終えたようだった。
「おっ、丁度みんな書き終えたみたいだね。じゃあいっせーのでめくるよ! せ〜っの!」
三人が同時に紙を捲る。
僕:混ぜた飲み物を一気飲み
灘さん:負けた人が他二人にジュースを奢る
相田さん:私の持ってる無料ドリンクチケットを誰かが貰える
そこには偶然にも全員が飲み物について書いてある内容が揃っていた。
思わず三人とも吹き出す。
「ふふっ、三人とも誰かが飲むことしか考えてないじゃん!!」
「こんなにみんな揃うと笑っちゃうね。あははっ」
「……ふっふふ」
三人とも一通りお腹を抱えて笑い終えると、冷静を取り戻して改めて座り直る。
僕も声が漏れるように笑ってしまう。
「はぁ〜笑った。ふぅ。でもこれ、よく見るとるみちゃんのは罰ゲームじゃなくて商品だね。ご褒美? だ!」
「あ、確かに! 負けた人に私があげるみたいになっちゃうね。どうしよう?」
「じゃあ最後のゲームはご褒美を賭けてとかで良いんじゃない?」
「おっ! 良いねぇマコトくん! ナイス! じゃあ、3回ゲームして、最後だけ罰ゲームじゃなくてご褒美ね!」
「分かったわ! それはそれで楽しそう!」
「分かった!」
「もしるみちゃんが買ったら、私がお菓子を買います!」
「えぇ!! いいのなこちゃん!! 私頑張る!!」
そんなわけで、三人でゲームをすることにした。
遊ぶゲームはピコ5のレースゲーム。昨日灘さんとやったやつだ。
相田さんも家にあってやってるらしく、全員が得意なのでこれを3レースやることにした。
「じゃあ行くよ! まずは混ぜた飲み物を賭けたレース! レディ〜〜ゴ〜〜!!」
灘さんがボタンを押すと、レースがスリーカウントを数え始めて、スタートが切られる。
レース序盤、僕はスタートに失敗してその場でクルクルと回る。
その横を二人のカートがサッと追い抜いていく。
NPCは無しだから画面が少し寂しい。
「やった! 私一番!!」
「え、るみちゃん超早いんだけど!?」
灘さんが目を見開いて驚いているので、僕も追いつくように頑張りながら相田さんの画面をチラッと覗くと、もう随分先にいる。
想像以上に相田さんが上手いことに驚きつつも、僕もアイテムを使う。
それは、飛ぶバナナだ。
投げると1番のカート目掛けて飛んでいき、必ずクラッシュさせられるやつ。
「あっ、バナナ飛んできた!! 不味い! キャ〜〜」
「お先!!」
僕が投げたバナナのおかげで灘さんが一位になる。
だけど相田さんまでまだまだ距離がある。
まだビリ、このままじゃ……。
そう思うと、今度はスーパーナスが当たる。
スーパーナス。レインボーに輝いた顔のついてるナス。
これを僕は食べる。すると、カートが変身し、超速でコースを駆け抜けていく。
灘さんをも追い越し、一位になる。
「ええ、マコトくんずるい!!」
「そうだよ!! まことくん運良すぎ!」
そう二人が言う中で、負けまいと進んでいると、今度は自分に飛ぶバナナがやってくる。
どうやら灘さんが投げたみたいだ。
そして、今度は相田さんが三連ジェットナスを引き当てる。
一つで一気に加速して、三つだとスーパーナスより速くなるアイテム。
結果、ゴール付近で二人に抜き返されて、僕がビリになってしまった。
「ゴ〜〜〜〜ル〜〜!! やった! あたし一番!」
「私二番だ〜〜悔しい〜〜。このコース家だと負けたことないのに!」
「ビリになってしまった……」
みんなそれぞれで1レース目の感想を言い終えると、灘さんが僕に迫ってきて肩にソッと手を置く。
「ではマコトくん……冷蔵庫行こう!」
笑顔でそう言われて、三人でキッチンに向かう。
冷蔵庫の中にあったのは、牛乳、豆乳、麦茶、オレンジジュース、レモンソーダ、グレープジュース、コーラ。
甘党なお父さんの趣味と豆乳好きなお母さん、そして僕の好きなオレンジジュースがそこにはあった。
これを全部混ぜるらしい……。
と言うわけで、仕方なくコップに全部入れて混ぜてみると、そこには灰色の炭酸ジュースが出来上がっていた。
どことなくヤバい色をしている気がする……。
「うっ、想像以上にヤバそうだけどまことくん大丈夫??」
「ホントだね……飲めそう??」
「が、頑張ってみる……」
息を整えて、一気に喉に流し込んでみる。
すると、甘くて酸っぱいけど、牛乳味のある味が口の中に広がる。
そして最後、飲み切った後に急に豆乳の匂いが来て吐きそうになってしまう。
うううう。ふぅ、危なかった。
僕が飲み切ると、二人が肩を叩いてきた。
「マコトくん!! よく頑張った!! すごい!! 私じゃ飲めなかったと思う……!!」
「なこちゃんの言う通り! 私も多分出来ないから、本当にすごいと思う!!」
あまり嬉しくないことで褒められた。
そんなこんなで、次のレース。
張り切って三人臨んだ結果、灘さんがビリになってしまった。
灘さんも自分が提案した他の二人にジュースを奢ると言う内容で、帰りに相田さんを駅まで送る時に買うね! と言い残して、最後のレースが始まった。
最後のレース、土壇場で灘さんが1位に躍り出て、相田さんが灘さんにジュースを買ってあげることになった。
そんなわけで、結果僕はビリ、二位、ビリ。灘さんは一位、ビリ、一位。相田さんは二位、一位、二位となった。
二人ともゲームも強くて、僕のダメさがまたもや浮き彫りに……。と震えていると、灘さんと相田さんが帰る時間になったので、駅まで向かうことにした。
「んーー!! 楽しかったね!! 罰ゲーム付きゲーム!」
「そうだね! 意外と楽しかったから、また三人でやりたいかも! 飲み物混ぜるのは禁止にしたいけど……」
「う、うん。あれはみんなやらない方がいいと思う……」
背伸びをしつつ楽しそうに話せ歩く灘さんと、その横に並んで話す相田さん。
そのさらに横で僕も歩きながら二人に反応する。
今日はなんだかんだ楽しかったなと思う。
「じゃあ、さっき話した通り、私はマコトくんとるみちゃんにジュース買うね! それでるみちゃんから私はドリンクチケット貰って飲み物買う! 全員がそれぞれ何かあげる形になっちゃった」
灘さんは笑顔でそう話しながら、腕を後ろに組んでいる。
「でも僕だけ灘さんにあげてないけど大丈夫?」
「あ、それは大丈夫! ほら、昨日もマコトくんの家でお菓子とかジュース貰ったし、それに比べたら私の方が少ないぐらいだし! これで丁度いいの!」
「そ、そっか」
そう念押しされるように言われて、僕も思わず頷く。
そんなやり取りをしていると、相田さんが不思議そうに左右の僕と灘さんを見る。
「二人とも本当に仲良いよね〜〜」
そう言われて、灘さんがそれを掻き消すように話題を振る。
「とりあえずそこでジュース買ってくるから二人とも待ってて!」
目の前にあった自動販売機に灘さんがかけていく。
ーーーーー
灘さんからジュースを渡されて、相田さんも灘さんにドリンクチケットで飲み物を買って渡した後、僕たちはそれを飲みながら駅まで歩いた。
そして、相田さんと改札前で別れることになった。
「じゃあ、二人ともまた明日ね!! 今日はすっごく楽しかった!! ありがとね!!」
そう言うと、相田さんは手を振りながら走って駅のホームに消えていった。
「じゃ、わたし達も帰ろっか! マコトくんはまだテスト勉強するだろうし!」
「そ、そうだね。テスト明日だし、今日教えてもらった分頑張るよ」
「それじゃあ私も帰るね! あ、そうだマコトくん」
「うん?」
「明日の学校終わりにデートしよ! じゃあね!」
そう言いながら灘さんが街中を駆けて行った。
「え?」
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