第14話 学ぶコト 


 灘さんと遊んだ翌日の昼休み。

 一昨日と同じ空き教室で、僕と灘さんと相田さんは話していた。


 昼休みに話す為に、頑張って給食を時間内になんとか食べ切ったからか、今はお腹がいっぱいで意識が朦朧として、とても眠い。


「それで結局昨日は勉強会なのに全然勉強出来なかったんだよね。マコトくんに教えてあげるつもりが私のせいでこんなことになっちゃって……」


「う、うん。まあ僕は楽しかったから良かったけどね」


 昨日の話をしている中でも、灘さんは勉強会なのに勉強出来なかったことを悔やんでるみたいで、どこか不思議だった。

 いつもなら気にせずにケロッとしてるのに。

 なんて思っていると、相田さんがフフッと急に笑った。


「どうしたのるみちゃん?」


「いや、なんかなこちゃんがそんなに一つの物事を気にしてるのが珍しいなって思って。あと、マコトくんもなんか話すこと増えてるし、明るくなったなって」


「え、そうかな? ……灘さんが珍しいのは僕もそう思うけど」


「るみちゃんとマコトくんが同意見って珍しい! まあ私的には、今週マコトくんを振り回しちゃってるから、せめて勉強で教えられる範囲ぐらいは教えなくちゃと思ってたのに、私のせいで遊んじゃったから、その、ごめんって思って……」


 灘さん僕を振り回してる自覚あったんだ。

 それでもそんなこと思ってたなんて知らなかった。

 てっきり遊ぶのとセットで勉強会誘ってくれたんだと思ってた。


「ま、まあともかく! そんなわけで今日も勉強会するから、今日はちゃんとしようと思って」


「今日もするの??」


「うん。昨日帰る前に約束したから」


「テスト明日だし、せめて教えられる部分は教えたいなと思って!」


 僕と灘さんがそう言うと、相田さんが身を乗り出して目をキラキラさせる。


「じゃ、じゃあ私も行っていい?? 勉強会!」


 ーーーー


 そうして学校が終わって、今日は三人で僕の家に向かうことになった。

 昨日と違って、今日はドキドキ感があまりない。


 そして家に着くと、相田さんが昨日の灘さんと同じような反応をしていた。


「ええ!! 凄い! 綺麗!!」


「でしょ!! マコトくんのお家本当にすごいでしょ! でも中も凄いんだよ!!」


 それを灘さんがすかさず何故か自慢するという光景を目にしながら、僕は先に家の中に入った。


ーーーー


 中に入ると、昨日と同じように僕はリビングの奥へ行き、先にお菓子とジュースを用意した。

 だけど今日の僕は同じ失敗をしない。

 灘さんと相田さんが玄関で靴を脱いでいる間に、ささっとリビングのテーブルにそれらを置いて、その横に勉強道具と教科書を展開した。

 これで待ってればすぐに勉強が始められる。


 なんて思って待っているのに、一向に二人とも来ない。

 なんでだろうと思って玄関に行くと……。


「本当だ! かわいい〜〜ほっぺムニムニしたいぐらい柔らかそう!」


「だよね! これ5歳のマコトくんなんだって! 可愛いよね〜〜」


「ふっ二人とも早く勉強やろ! あと恥ずかしいから!」


 僕は強引に二人を急かして、リビングに連れて行った。


 ーーーー


 なんて言うやりとりをして、ようやく勉強会が始まった。


 テーブルに対して、僕の右隣に灘さん、でその灘さんと向き合う形で相田さんが座っている。


 席につけば早いもので、さっきまでの楽しかった雰囲気は消えて、真剣な表情で二人とも根気よく分からないところを丁寧に教えてくれた。

 今は僕の苦手な数学を教えてくれてる。


 そして、改めて思う。

 二人ともすごく頭が良いなと。

 教え方も上手で、スラスラ頭に入る。

 いつも分からなかったところが分かるから、なんだか勉強が楽しく感じる。


 灘さんは学年で一番頭が良いし、相田さんもその次ぐらいに頭が良いし。

 テストなら二人ともほとんど満点を取ってるし、授業中も難しい箇所は大体二人が答えを黒板に書いてる。

 僕はいつも分からなくて、授業が終わっても黒板の内容をノートに書いてる。

 やっぱり勉強の仕方が違うのかな? それとも頭の良さが違うのかな。

 

 なんて思いながら問題を解いていると、隣に座ってる灘さんが横からノートの上を指で差してくる。


「あ、マコトくんそこはそうじゃなくて、こうやって計算するんだよ」


 そう言いながら、灘さんノートの隅にスラスラっと数学の公式を書いてくれる。


「そこって間違えやすいよね〜〜私もこの前塾で間違えちゃった」


 僕の間違えたところを覗き込む形で見た相田さんがふふっと笑いながらそう話す。


「ふふっ、実は私もこの前授業中に解いた時うっかり間違えそうになっちゃった。意外とうっかりが多いよねこの計算式」


「だよね。だからマコトくんも間違っても大丈夫だよ。次から解ければいいし!」


「そ、そうなんだ」


 二人のなんてことない会話を聞くとどこか安心する自分がいる。

 それでいて、教えてもらった通りにやれば出来る。


「おおっ、解けた」


「お! マコトくん出来たね。しかもこれでほぼテスト範囲終わったし! お疲れ!」


「お疲れ〜〜!」


「つ、疲れたぁ〜〜」


 思わず後ろに倒れ込む。リビングの絨毯が気持ちいい。天井が高い。

 頭が疲れたからか、ボーッとしたくなってくる。


 なんて思っていると、視界の右側から、灘さんが僕の顔を覗き込んでくる。

 そしてその何かを企んでいそうな顔で察する。

 きっとダメなコトをしようとしていると。


「さて、マコトくんがテスト範囲をとりあえず一通り終えたので、ここからは息抜きにお遊びタイムにしようと思います!」


「いいね! 賛成! 私も遊びたい!」


「えぇ……」


 勉強を教えてくれていたのにも関わらず、全く疲れてなさそうな二人の声を聞いて、思わず驚いてしまう。

 

「てことで、今からダメなコトをします!」


 やっぱり!!

 

 

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