第12話 設立するコト
あっという間にお昼から放課後になり、僕達三人は駅に向かって歩いていた。
昼休みに取り決めた通り、ダメなコトとして下校中にコンビニに寄る為だ。
帰り道に友達とコンビニに寄る。
そんな一見ありふれたようなことが、ものすごく楽しいことのように思えていることに、不思議な気持ちを感じていた。
それに対して、昨日の朝よりかは、あまりダメなコトをしているようには感じていない自分もいた。
そんな僕の前にはキャッキャとする二人の女の子が歩いていて、僕はそのすぐ後ろについて行く形で歩いている。
「ねぇ! 二人ともなんかドキドキするね! こう、冒険してる感じがする!」
「そうだね。私とマコトくんは昨日の朝コンビニに寄ってから学校行ったけど、その時もドキドキしたよ!」
「え、二人ともそんなことしてたの!? 良いなぁ。私も登校一緒にしたい」
「ふふん。るみちゃん、これは私とマコトくんだから成せることなんだよ」
ウキウキとした感じで楽しそうに話す相田さんに対して、何故かドヤ顔でそう言い放つ灘さん。
別大したことじゃないのに……。
なんて思っていると昨日の朝寄ったコンビニに着く。
「さあ入ろ!!」
ーーーー
コンビニの中に入ると、相田さんはスイーツコーナーで目を輝かせながら商品を選んでいた。灘さんは昨日の朝買ったフルーツティーを片手に持ってから、その隣で一緒に悩んでいる。
僕も炭酸飲料のドデカレモンを取ると、その横に向かった。
二人とも何かを見ながら真剣に悩んでいた。
「うーーん。これは食べたい……食べたい……ものすごく美味しそうだから食べたい……ねぇなこちゃん?」
「そうだねるみちゃん……これは是非とも食べたい……」
「……二人とも何に悩んでるの?」
恐る恐る聞いてみると、二人ともその目の前の茶色い粉の振ってあるスイーツを見ながら答えてくれる。
「あのね、マコトくんこの大きな器の特大濃厚ティラミスが食べたいんだけど、ちょっと高いから悩んでるの」
「そうそう、なこちゃんの言う通り。あと量がすっごい多いから食べ切れるかなって」
僕も二人の横に立って覗き込んでみると、確かにホールケーキみたいな大きさのティラミスがある。デカい。
「うーん、でも三人で買って分け合って食べれば大丈夫じゃない……?」
「「!!!!」」
二人とも急に何故か固まり、顔を合わせる。
「マコトくん!! 君はなんてことを言い出すんだ。ねぇるみちゃん」
「そうだよ!! 私達はそんなことで悩んでないよ!」
「え、じゃあどうして悩んでるの?」
「「それは(そんなのは)……」」
「「一人で買って全部食べてみたいからよ!!」」
えぇぇぇ……。そんな理由だったの……。
「マコトくんそんなまさかって顔してるけど、これもダメなコトの一つなんだよ! 普段なら一人で食べられない大きさの甘いものを一人で食べる……それはやりたくても出来ないこと……だからこそ、やる価値があるんだよ!」
灘さんが目を瞑りながら、まるで素晴らしいことを説いてるみたいに語っている。
その後ろで相田さんがずっとうんうんと頷いている。
「それに今日はダメなコトとしてここに来てるから、せっかくだし買ってみたいなと思って。だけど、いざ目にすると量が凄く多いし、値段も思ってた以上に高いしで悩んでたの」
「なるほど……」
「でも今マコトくんに自分で言ってて思ったけど、やっぱり今日は買うべきな気がする! から私は買う!」
「じゃあ私も買う!」
二人はそう言うと、さっさとティラミスを持ってレジに向かってしまった。
心なしか二人ともコンビニに入った時より上機嫌な気がする。
「ぼ、僕も買う!!」
そう言って僕も慌ててそれを手に取って気付く、このティラミスが800円もすることに……。
そうして思わず苦笑いしながらレジに向かった。
ーーーー
コンビニを出た僕たちは、どこか食べられる場所が無いか考え、その結果ビルの間の神社に行くことにした。
(周りの公園だと他の友達と会う可能性もあってそこしか思い浮かばなかった)
電車に乗って僕達の駅に来るとお金かかっちゃうけど、相田さん大丈夫? と聞いたら、相田さんは僕達より奥の駅にある塾にいつも通ってるらしく、定期券の範囲内だから大丈夫! と言われた。
家は逆方向だから普段は一緒の電車に乗れないけど、とさっきの灘さんの件を気にするようなことも言っていた。
そんなこんなで、灘さんに連れられながらまたビルの間をくぐり抜けて、僕達は神社前の森に着いた。
二日ぶりの神社は初めてきた時と同様、現実離れしたような雰囲気を纏っていた。
木漏れ日が神社を照らしていて、そこに続くまでの道がどこか光っているように見える。
「着いたよるみちゃん! ここが私とマコトくんの秘密の場所! ビル奥の神社!」
「わ〜〜凄いねここ! 道中変なところ潜り抜けてきたけど、こんな場所があったのね! なんだか不思議な気持ちになる」
灘さんが今日一番に自慢げな顔で相田さんに紹介すると、相田さんは辺りを物珍しそうに見渡しながら言葉を返していた。
知らない間に僕にとっての秘密基地にもなってたらしい。
だけどなんだかそれが嬉しい。
なんて思いながら、僕達はビルと森の間の広間に荷物を置いて座った。
早速ティラミスを食べようと思ったところで、灘さんが僕と相田さんに話しかけた。
「二人とも! 食べる前に先に話があるの!」
どこか真剣な表情で、だけどどこか楽しそうな雰囲気でそう言い放つ灘さんを思わず凝視する。
「実は今日三人でダメなコトをするって決めた時から考えてたんだけど、私たちのやるこの活動にダメなコトクラブって名前を付けたいんだけど……どうかな? それで、この神社を三人のダメなコトをする拠点にしたいと思うの! 私達の秘密の場所として!」
目を瞑りながら言い切った灘さんを他所に、相田さんが顔を輝かせる。
「いいねいいね!! そうしよ!! ダメなコトクラブ! 私クラブ活動に憧れてたんだ!!」
「良いでしょ! なんかこう、仲間って感じするし! ……えっと、それでマコトくんはどう??」
「も、もちろんいいよ。僕もなんか、そういうの憧れあったし。なんか、やることの実感湧いてきたかも」
僕がそういうと、急に静かになる二人。それで何故か僕の顔をまじまじと見てくる。
なんか変なこと言ってかな……。
「おお、マコトくんがまともに話してる。貴重だ」
「確かに」
「えぇ……ただ感想言っただけなのに……」
「ふふっ冗談冗談。でもマコトくん普段からあんまり喋らないから意外だなぁと思って。ここまでしっかり話してくれることもないし」
「そうね、なこちゃんが言う通り、私もびっくりしちゃって思わずマコトくんの顔見ちゃった。」
「僕だって普通に話ぐらい出来るよ! ……普段喋らないだけで。それで、とりあえずこれは決定になったの??」
からかってくる二人から目を逸らして、とりあえず話を促してみる。
顔を覗き込まれるのは恥ずかしい……。
「そうだね! じゃあこれで決定! というわけで早速今週からダメなコトをバンバンしていくよ二人とも!!」
「う、うん」
「分かったわ! じゃあティラミス食べよ!!」
一連の流れが終わり、みんなでティラミスを開けて食べ出す中で、今週何かがあったようなことを思い出す。
なんだっけ、なんか大切なことを忘れてる気がする。
灘さんと最近遊んでるからあんまり意識してなかったけど、なんだっけ……。
そう思ってティラミスを口に入れた所で、丁度一口食べ終えた相田さんが手を上に上げる。
「美味し!! ……あ、そういえば委員長なのに忘れてたんだけど、今週末ってテストじゃない??」
「「あ」」
思わず僕の食べる手が止まった。
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