第1.5話 セマラレルコト


 二度聞いた同じ内容。でもやっぱり理解が出来ない。


 どう考えてもおかしい。


 用事があるわけでもなく、友達でもないクラスメイトと放課後一緒に帰るだなんて……。

 別に僕と帰っても面白くないはずなのに……。

 

 そもそも僕は喋るのも上手くないし、おまけにいつも一人だし、それに明るくない。

 それに加えて、灘さんが好きそうな話題は一つも持ってない。


 だから、どうしての疑問だけが頭の中に浮かぶ。


 それに、灘さんは住む世界が明らかに違う人間だ。

 キラキラしてて楽しそうな、そんなみんなといつも過ごしてる、そんな人間だ。

 

 そんな彼女が僕に話しかけるなんて裏があるに決まってる。と思ってしまう……。

 そうじゃなきゃ話しかけてこないだろうし。


 何だろう、罰ゲームとかなのかな……。きっとそうだろうなぁ……そんな気がする……。

 最近読んだ漫画にもこんなことが描かれてたし。一人ぼっちの子と一緒に帰るみたいな罰ゲーム。

 読んでる時に、ちょっと自分もいつか遭遇しそうなシチュエーションだな、とか思ってたから不思議と覚えてる。


 でも、もしそうなら、僕が灘さんのことを断ると、その後に灘さんがいじめられるようなことになっちゃう展開が来るし……。


 どうしようかな。でも断ってその先が僕に向かうこともあるだろうし……。

 じゃあ断れないな……。

 

 そうこうして、勝手なことを想像していると、灘さんがまた急かしたように話しかけてくる。

 少しソワソワしながら、そしてその表情はどこかキラキラしながら。


「それで? どう……??」


 そう言いながらこちらに顔を寄せてくる。

 段々と目の前が灘さんでいっぱいになる。

 

 近い近い近い近い!!


 そして、灘さんの大きな青い瞳と目が合う。

 その瞬間心の奥底、心臓の辺りがドキンと波打ったような気がし、少し痛いような動悸が走る。


 そこから鼓動が早くなり、どこか焦ったような気分になっていく。


 慣れない状況と質問で緊張が膨らんでいく。

 目を精一杯横に逸らして、思わず返事を返してしまう。


「……いいよ。」


 

 そうして今日の放課後、僕は灘さんと一緒に帰ることになった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る