第8話 救世主……?
雑に担がれ揺らされること数分。視界が反対に見えるが木の上にロザンヌさんがいる。そしてその下にはロザンヌさんに吠える犬がいる。大体の察しは付いた。
「もう大丈夫だぞ! 牧師様が来てくれた!」
そう、牧師様が担がれてきた。現在自力では何もできない牧師が来た。あの状況でなぜ連れて来たのか理解ができない。
「ささ、牧師様!」
と、言われましても、だ。どうしろというのか餌になれば良いのだろうか。解決策も何もない。こんな時に限って厄介事というのは起こる。どうにかしようと考えている時に体を持ち上げられる。嫌な予感しかしない。
「犬の病気にはかかりたくたくありません。どうかお一人でお願いします!!」
遠心力と剛腕による投擲。思ったよりも綺麗に犬の方へ飛ぶ。受け身も取れずに地面に倒れこみ転がる。仰向けになり視界に犬が食べようとしているのかよだれを垂らしながら低く太い声で唸る。
「平和に行きましょう。神は争いを望んではおられません」
しかし牙は見えたまま止まる事を知らない。短い人生だった今日は神に会う事が出来ると悟りを開き顔にかかるよだれを受け入れるしかない。
「――ブレイズ・アビス!!」
空からまるで隕石の様に魔力を放射しながら何かが落ちてくる。魔力は燃え盛る火炎の様に揺らめいている。段々と姿がハッキリしていきそれが誰かが分かる。
犬も死を感じ取った様で逃げ出すが、魔力を吸われ力が入らずに逃げることが出来ないのでもろに食らう以外の選択肢は無い。
激しい轟音と共に地盤が崩れる。土埃も舞い落ち、やり切った感を出す厄介者を眺める。こちらに気付き親指を立てるがなにも良くない。
「とりあえず助けてください」
一歩間違えたら死んでいただろう。怒りたいのも山々だがそんな力も出てこない。
「ロザンヌ!」
「貴方~!」
「ロザンヌ!」
「貴方~!」
毎度の如くの呼び合いが始まる。軽々と持ち上げられその場を離れる。二回目となればアレはどうしようもないという事を理解したようだ。
「今日はもう寝ますね。早く回復をしないといけませんし」
「そうだな。よく寝ろ!」
なぜこうなかったと言えばコイツが原因だというのに何目線で言っているのかと思うがそれも今日は置いておく。
意外と帰るのに時間がかかりさすがに一人運ぶのは大変だったかのか疲れ切っている。ベッドまで運んでもらい何とか今日は休める。
「ありがとうございます。今日のご飯は何でもいいので食べてください」
「余も疲れた」
ベッドに倒れこみ気を失うかのように眠りにつく。犬一匹を脅すためにあんな技を使うからである。
「お疲れさまでした」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます