第7話 足りない……
「ぼ、牧師……助けてぇ〜」
いつも通りに昼近くに起きて来たと思ったらコレだ。何らいつもと変わりなくしっぽを引きずりダルそうにしている。
「たり……ない」
そう言って地面に倒れた。また変なことをしているのだろうと思ったが一向に動かない。
「え……? あの、え?」
突然過ぎて何が起こっているのか分かりきっていないがこの状況はマズいと感じる。
「と、とりあえず治しますね!」
病気、はたまた呪いなどか、分からないが幸いにも牧師である。呪いも病気であろうと治療はできる。
「ホーリー――」
「ギャァァァァァアア˝ア˝ア!!!」
今までに聞いた事のない悲鳴と共に元気そうにのたうち回る。魔族に『ホーリー』は毒だった事を忘れていた。
「ごめんなさい! 間違えました!!」
聖属性の加護がダメならば打つ手は無い。これ以上は何も出来ない。だが、意識は覚醒した子で何とかなる事を祈るしかない。
「で、何があったんですか?」
「たりない……ちょうだい……」
ゆっくりとしがみついてくる。重さで倒れ込み上に乗り上げられ身動きが取れない。
「あ、あの……何をしようとしてます……?」
フラフラと揺れながらこちらを薄く開けた目で見てくる。何が起こるかわからないままその目をとりあえず見返し見つめ合う。
ゆっくりと手が胸まで伸びてきて体の熱がそこに集まるかのようにとても暖かい。
「ごめん牧之……」
何が始まるのかと恐ろしく感じた瞬間体の力が入らなくなる。力の抜けた体は地面に倒れ込み天井を仰ぐ。視界の片隅に恍惚とした表情を浮かべながら周りに魔力が漂う。
「ありがとな! 助かったぜ!」
魔力を吸われたのである。魔族の魔法、牧之または聖女の使う加護はどちらも同じ魔力を使用し発動する。誰が使うかによって差別され、魔族は根絶やしにされてきている。
「なんてことするんですか……!」
「しょうがないだろ? 角を他のやつに見られないようにするにも魔力を使う。しかも昨日ずっと聖属性の札を浴びてたし、こっそり強化までしてやってるんだからな!」
魔力を吸われた経緯は分かった。だがしかし納得はできない。教会が機能しなくなるのは普通にまずい。そしてこのまま床にずっといるのも良くない。神聖な服だというのにこの様だ。
「まぁ、任せておけ! 牧師の昼ご飯も作ってやるからな!」
はっきりソコはどうでもいい。村の人が来ないといいんだが、などと思っていた矢先である。勢いよく教会の扉が開き男が叫ぶ。
「牧師様! お助けください! ロザンヌが!!」
横たわる自分を凝視してこの状況を理解しようとしているのだろう。目線が交差し謎にうなずかれる。軽々と持ち上げられ担がれる。力が入らないので抵抗のしようがない。持ってかれるがままである。
「ちょっと!? 牧師をどこに連れてくんだよ!」
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