第4話 買い出し

「飯はまだか!!」


「今作りますよ。もう少し待っててくださいね」


 教会に繋がる別棟に行きご飯を作ろうと棚を開ける。減りが速いと思っていたが無くなっているとは思ってもいなかった。


「ご飯がありません。知りませんか?」


「……知らない……」


 昨日の時点では明日の分はあると分かっていた。騎士が来たおかげで予定が狂い買い出しに行けなかったが、しっかりと確認した。


「まぁ、今から買いに行きますが、昨日何食べましたっけ?」


「昨日か? 昨日は確か、キノコのパスタだったな」


「…………」


 キノコは置いてあった。昨日までは、パスタも置いてあった。昨日までは、しかし今日はない。


 無論私は作っていない。


 ゆっくりと近づく。近くなるにつれ冷汗がよく見える。全く目が合わない。視線の高さを合わせても明後日の方向見ている。


「……昨日はパスタを作った記憶が無いのですが、どういう事ですかね〜?」


「いや、……その、あっれー……ははは」


「行きますよ? 買い出しに」


 ズルズルと服を引っ張ってい町まで連れていく。


「測ったな! 牧師! 騙すとは最低だ!」


「勝手に食べるとは最低だ! なんか言い返してみてください」


 すんなりと黙り。無抵抗のまま引きずらる。


「……自分で歩いてくださいよ、重いです」



 ***



「コレと、コレと、あとコレもですかね〜」


「あら、牧師さん今日は多く買っていくのね。こまめに買いに来る人だから近頃来なくて心配したのよー。最近星の欠片がこの辺に落ちたらしいですしね」


「怖いですよねー」


 多分星の欠片は誰かさんが太陽破壊を目論み放った魔法だろう。騎士が出向くわけだ。


「ありがとうー」


 満面の笑みで紙袋を上に重ねる。少しふらつきながらもしっかりと持ってくれている。


「牧師め! 慈愛はどうしたんだよ! こんな事していいのかよ」


「『悪しきものにはそれに対等な罰を与える』ってのもあるんですよ」


 紙袋で顔が見えないが、相当悔しそうな顔をしているのだろう。


「何か最近困った事とかもありませんか?」


 教会は少々遠い。たまに降りてきて話を聞いて回っている。


「最近品薄になってきてねー。何やら魔族がこの辺をうろちょろしているとか……輸入が大変よ」


「なるほど……魔族結界でもばらまいときましょうかね? おやつ抜きとか……」


 紙袋が大きく揺れる。簡単に動揺しているのが分かる。


「そう言えばあの子は?」


「最近引き取った子です。迷子みたいで……多分どこかから逃げてきたんでしょうね」


「あら、それは大変ね。ほらこれオマケであげるよ」


 ありがたくリンゴを貰い、紙袋に乗っける。


「落としたら食えないからな。しっかりと持たなきゃだからな」


「悪魔め……」


「毎度ありー」


 店を後にしてまた新しい店に向かう。


「貴方が一週間前に壊したホウキも買わなきゃ行けませんからね。今日は大仕事ですよ」


「何で今日なんだよ!? 酷いぞ牧師!」



 ***



 紙袋を持ち、ホウキを腕に挟み、木箱を背負いもはや誰だか分からない所まで来た。


 おぼつかない足取りでフラフラしている。


「……大丈夫か?」


「持たせたのは闇牧師だろ!? ちょっとご飯全部食べたからって酷いぞ!」


 ついには筋の通らない事まで言い始めた。


 天罰だろうか、石に躓き体勢が崩れる。なんとか倒れずには済んだが、リンゴが揺れ落ちる。


「──あっ……」


 ギリギリの所で拾い上げ、傷は付かずに済んだ。


「……今日はありがとうございます。手伝いますよ」


 紙袋を手に取り、ホウキも貰う。


 どこか半泣きの様な顔だがやり過ぎただろうか、


「……ごめんなさい」


「良いですよ」


「今日は貴方の好きな物にでもしましょうか」


さっきまでの落ち込んだ表情は一変し、満面の笑みに変わる。何とも忙しい事だ


「本当か!? じゃあ持ってやるよ!!」


「……ありがとうございます」

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