第2話
居ても立っても居られないな。
一体。トイレに何がいるというのだろう?
私は、立ち上がり電車の揺れに気を付けながら、トイレへと近づいた。
他の乗客は、私が急を要したと思ったのか、素直に道を譲ってくれた。
ノックをしても、反応がないので、私は勢いよくトイレのドアを開けた。
中には……。
奇妙な事に、誰も便座に座っていなかった。
だが、トイレの個室の壁には至る所に落書きがびっしりと書かれている。
奇妙でしかない。
そして、私はトイレでこの世のものとは思えない落書きを見つけた。
それは、ちょうどトイレの便座の下部にある。
トイレットペーパーの芯が、散乱しているところに、描かれていた。
三人の顔だ。
それもよく知った顔。
今の時間帯は、家にいるはずの妻と娘と息子のドロドロと溶けている苦悶の表情が、落書きしてあった。
「おまえは あんたは てめえは!」
「後ろ 後ろだ 後ろで ……」
「トイレに トイレに 何かいる ……」
私の家のトイレに、何かいるのだろうか?
いや、いたのだろうか?
落書きは、何かを私に知らせたかったのだろうか?
……
そういえば、朝家を出る時に、隣近所にある動物園の檻から南アメリカから運ばれた巨大なアナコンダを一匹だけ誰かが盗んだと、不審がられていたんだった。
染み 主道 学 @etoo
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