第84話 癖のあるプロディガル
小守
「はい。私はサポーターの『小守 音々』と申します。応援の要請でしょうか?」
ズミ
「そうだ、俺一人では手に負えん。誰かこちらに寄こしてくれないか? 怪物の属性は『マグマ属性』だと思う。この属性は聞いてはいたが、かなり手ごわいのだ。俺は水の使い手だが、あの熱量には正に『焼け石に水』状態だ。何の使い手が合うのかは俺には分からないが耐属性の使い手を頼む。」
小守
「了解しました。今探しますので、ちょっとお待ちください。」
ズミ
「早く頼む、俺のランクではダメだ。もっとランクの高い使い手が必要だぞ。」
小守
「はい、大丈夫です。見つかりました。直ぐ近くの隣町にいます。連絡してみます。」
「モッシー、サポーターの小守と申しますが、今お時間大丈夫ですか?」
ヒョウ
「あん・・・?誰や、俺様の昼寝の邪魔をする奴は!何処のどいつや、死にて―のか?」
小守
「ヒィー・・・。す、すいませんお昼寝の最中に起こしてしまいまして。今、応援要請がありましてお近くにいたのが、あなた様でしたのでご連絡させて頂きました。」
(寝起きで機嫌がわるいのですね。ここは、謙虚に対応して話さないと。)
ヒョウ
「俺は忙しんや、他をあたらんかい。暇な奴は他にいくらでもおるやろう!アホかお前は。」
小守
「それが、お暇な方は誰もいなくてですね、皆さん戦闘中の様です。唯一戦っていないのが、あなた様でして一番お手すきかと思いまして・・・。」
(人をアホ呼ばわりしましたわ。ヒドイ。)
ヒョウ
「貴様、言ってくれるな。俺の事を知らん様やな。お前新人か? マザーはどうしたんや? 何でマザーや無いねん。マザーを呼べ。あの野郎に一言いってやらなぁーあかんからよー。」
小守
「マ、マザー様はお倒れになられました。あまりにもハードな激務に耐えきれず、倒れてしまい今はICUに入っています。」
ヒョウ
「そうか、はははは・・・、ザマーねーなぁー。バチが当たったんよ、バチが。いい気味やな。」
「もう一人おったよな。マザーの手下の様な奴が。何っつったっけ、べべべんじょ・・・。」
小守
「勉さんですか?」
ヒョウ
「そうや、そうや。勉だ勉。あいつはどうした? マザーの変わりは勉がやればいいやないかい。」
「あいつはマザーの次やったんやろ。どうしたん、逃げよったんか?」
小守
「勉さんもお倒れになられました。マザー様が倒られて直ぐにサポートしていたのですが、あまりの激務で勉さんも倒られてしまい、マザー様と同じくICUに入っておられます。」
(このお方は何なのですか? 文句ばっかり言って協力する気が全く無さそうです。)
ヒョウ
「ガハハハ、だらしないのう勉も。親が親なら子も子やな。そして、次はお前か?」
小守
「私だけではございません。私達はサポーターとしての受講者です。お二人が倒られたので急遽代役を任されたのです。私達13名は新人ですが何とかお二人の穴を埋めようと必死で、プロディガル様達のお力になれれば良いと頑張っております。」
「ですので、あなた様も一緒に頑張ってもらえませんか? 今、応援要請がかなり入っていて現地で戦っているプロディガルが大変なのです。」
(流石にこれを説明すれば、バカでも納得するはず。後はテレポートすれば良しと。)
ヒョウ
「ふざけるなぁ!何で俺が人の為に助けに行かなければならんのや。バカ野郎。」
「誰かを助けて何か良い事あるんか? 何かくれんのか? 俺の願いを叶えてくれんのか? 俺様に手伝ってもらいたかったら、一生遊んで暮らせるだけの金でも持ってきたら考えてやっても・・・。」
小守
「ぐあああああ・・・。グチグチうるせー奴だなー!うだうだ言ってないで早く助けに行って来いやー! ポチッ。」
「あっ!」
(しまったー、つい感情的になってもーたー。)
ヒョウ
「きっ貴様ぁー!」
「バシャーッ。」ヒョウはテレポートされ、水溜りの上に落ちた。小守により強制的にテレポートさせられたのだ。
ヒョウ
「あのアマ。クソが。戻ったらS・F・Cに乗り込んでしばいたる。」
ズミ
「ヒョウさん、ありがとうございます。見ての通りもうヤバいです。俺の敵う相手ではありません・・・。」
そう言うと、ズミはその場に倒れた。怪物はズミを踏みつけ勝利のオタケビを上げている。怪物はマグマ属性、ランクの低い使い手ではどうにもならない相手である。そこに、ヤル気の無いずぶ濡れのヒョウが送られて来たが、勝算はあるのだろうか? ヒョウは立ち上がり服を絞りながら怪物を見た。
ヒョウ
「うわー、熱そうやなー!踏みつけられてる奴、焼き肉になってへん? 大丈夫なんか?」
「チィッ、ほんまめんどくさいなぁー。何ヶ月も声が掛からんかったから、このままスルー出来ると思っとったのに、いきなり寝ている所を起こされたと思ったらキレられて、水溜りに落とされるわ、びしょ濡れになるわ、こんな熱そうな奴と戦えだと・・・。腹立つなー。何か頭にくるわー!」
独り言を言っているヒョウに向かって怪物は極熱な息を吹きかけた。しかし、ヒョウには一切効かない。怪物はもう一度さっきよりも極熱な息を掛けてきた。だが、ヒョウは熱がる処か、またブツブツ独り言を言っている。
怪物は「カチン」ときたのか、ヒョウに近づいて大きく口を開けて煮えたぎる超極熱な炎の息をヒョウに向けて勢い良く吹き掛けた。しかし、ヒョウはあくびをしている。全く効いてない様だ。
怪物は流石に頭にきて【獄炎パンチ】でヒョウに殴り掛かった。すると・・・。
ヒョウ
「さっきから臭い息を吹き掛けてやなー、お前歯磨いてないやろ。」
と言って、怪物の顎を掴むと《スキュア・アイス》と言った。するとヒョウの手から氷の串が怪物の顎を貫いた。
「グガァァァァァァァァ・・・。」怪物はもがいている。
ヒョウ
「あっごめんな、痛かった? それだとしばらく何も食えんなぁ。」
怪物に刺さった氷の串は直ぐに溶けて無くなったが、怪物の口からは青色をした血液の様なモノが垂れている。怪物はおとなしくなったが、ヒョウの方を見ている。
ヒョウはそんな事はお構いなしに気絶しているズミの所へ行き声を掛けた。
ヒョウ
「おい、お前大丈夫かいな? 生きとるんか?」
ズミ
「ううう・・・・・。」
ヒョウ
「生きとるな、うん大丈夫や。背中踏まれながら焼けてたけど・・・うん問題無しや。」
「では、このザコをとっとと片付けて帰って寝るかぁ~。いや、S・F・Cに乗り込むんが先や。」
そして怪物の方を見ると、怪物はこちらを見ながら変身しているではないか。それは、正に「マグマ」の如く煮えたぎる噴火口の様である。体中を溶岩がうねりながら動いている感じだ。
ヒョウ
「うわ~、何やあれ!体溶けてるんとちゃう? 気持ち悪ぅー。」
と顔を一瞬そむけた次の瞬間、ヒョウの目の前に怪物が移動した。それはヒョウも初めて体験するスピードだった。そして、怪物はヒョウに何かをした。
ヒョウは何が起きたのか理解出来なかったが、その場に立っていられず膝を付いた。と同時に口から血を吐きうずくまった。
怪物はヒョウの腹に一撃入れたのだ。ヒョウは自分の周りにアイスシールドを張っていて灼熱の息は防いでいたが、ボディーへの一撃はシールドも簡単に破られていたのだ。
ヒョウ
「どっどうなってるんや? 動きが見えへんかったぞ。しかも、俺のアイスシールドも簡単に破りやがったで、ホンマに。 グフ・・・。」
うずくまり動けないヒョウを怪物はボコボコに蹴り飛ばしてくる。それはまるでサッカーボールの様である。そして、マグマ状態になっている怪物の指が紐の様に伸び出した。すると【マグマウィップ】と言いながらヒョウを叩き始めた。
それは檻の中で鞭により、しばかれている獣の様である。正に猛獣使いがネコ科のヒョウを鞭で手懐けているのと同じ様な光景であった。いや、笑い事では無い。
怪物
「モエテキレテハイニナレー!ガハハハハ・・・。」
マグマの灼熱と鋭利な鞭と叩く強さでヒョウの体は削られてゆく。
ヒョウ
「ぐぁぁぁぁぁぁ・・・これは思った以上にヤバいぞ。再生が追いつかねー。」
《アイスシールド強》
「これで行けるんか? て言うか、言葉しゃべっとたぞアイツ。」
ヒョウは先ほどより強いアイスシールド強を使った。するとようやく怪物の攻撃を交わす事が出来た。しかし、怪物は更なる技を使って来た。
怪物は落ちている無数の石を口に入れ叫んだ。
【マグマミーティア】
怪物は叫ぶと口から無数のマグマ化した石をヒョウのシールドに目掛けて流星の如く叩き付けた。すると、アイスシールド強も粉々になってしまった。
ヒョウ
「クソー、シールド強もダメか。じゃーこれでどうや!《グラシアスシールド》やー。」
ヒョウが叫ぶと氷河の如く頑丈なシールドが立ちはだかった。このシールドはメチャメチャ固い氷で作られる鉄壁のシールドである。そう簡単には破られない。ヒョウはシールドを盾に負傷した傷を回復させていた。
ヒョウ
「ほな傷を治しながら、攻撃をしますか。」
「これでも喰らえや、《フリージングチェーンソー》。」
ヒョウは体を治癒しながら、両手から氷が繋がり円となった激しく回転するフリージングチェーンソーを怪物に投げた。その氷の円は見た目の通り回転するノコギリの様である。二つの氷の輪は怪物目掛けて走って行き、一つは交わされたが、もう一つは怪物の右腕にヒットしてダメージを与えた。
「よっしゃー!やっぱ、俺は天才やなぁ~。」
怪物は負傷した腕をかばいヨロケながら、使える左腕を地面に当てて何かブツブツ言っている。そして、力を込めて叫んだ。
怪物
【ボルケーノ・エイム】
ヒョウ
「ボルケーノ・・・って火山やないかい。嘘やろ、ホンマにここに火山でも出すんかい? 火山を出して俺の出したグラシアスシールドを溶かす気なんかい?アホやなぁ。」
「でも、エイム?って何や。エイム、エイム、エイム・・・分からんなぁ。」
「おい、さっきのサポーター。聞こえてるか?エイムって何やねん。知っとるか?」
ヒョウはピアースフォンで小守を呼び出し、質問をした。
小守
「あっ、はい。エイムですね。えーと・・・はい『狙う』だと思います。」
ヒョウ
「狙うか。ありがとよ嬢ちゃん。狙う・・・・火山。ん? まさか・・・。」
するといきなりヒョウの足元の地面が赤くなり始めたかと思うと、地面から突き上げる様な噴火を起こしたのだ。
「バゴオオオオオオオオオーーーーーーン!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・。」
ヒョウは噴火により十数メートル空中に吹き飛ばされた。その時の灼熱により両方の足に大きなダメージを負った。地上に叩き付けられる寸前でアイスシールドで身を守り事なきを得た。しかし、両足が負傷しただれている。この傷を回復させるには時間が掛かる事をヒョウ自身は認識している。とりあえず、自分の両足を氷で固めた。
ヒョウ
「ヤバイ、これじゃー動けんやないか。俺としたことが油断してもーたな。次あんなの喰らったら俺もおしまいやな。どないするか、考えんとなぁー。」
「おっそうや、これやー!」
怪物はもう一度、同じ攻撃をしようと手を地面に付け下を向いている。
ヒョウはグラシアスシールドを操り空中に上げた。そして、空中でシールドをバラバラにして叫んだ。
ヒョウ
「アイス・メテオー----!」
ヒョウの放ったバラバラになった氷は隕石の様に容赦なく怪物に降り注いだ。それは、怪物の肉をエグリ、骨を砕き、穴を開け、右目を潰したのだった。
怪物は見るも無残な状態であったが、かろうじて生きてはいた。しかし、体からは蠢いていたマグマの感じは無くなりおとなしくなっている。
這い蹲りながら移動をすると、自分が火山を起こした穴に入り、ヒョウの方を見ると「ツギワコロス」と言って地面に潜り何処かへ行ってしまった。
それを見てヒョウは安心し、その場で大の字になって寝ころび空を見ていた。
ヒョウ
「ヤバかったわー。何やねん、あの怪物は。今までの中でかなり強い方やったな。」
「アイス・メテオが効かんかったら、マジで死んでいたかも。あのアマのせいや。クソー。」
「そう言えば、焼き肉野郎は回復しとるんかな? 大した怪我でもなかったしな。」
ヒョウは、倒れているズミが気になり視線をやると「救護班」が来て治療をしていた。
ヒョウ
「なっ何ー-!もう救護班が来とるやないかい。活躍したのは俺様だっていうのに、ワシも怪我しとるのに、こっちにも救護班寄こさんかい!」
「オイ、女!聞いとるか? 救護班を寄こせ。俺は両足がやられて立つことも出来んのや。俺の方から先に治療しろ。」
小守
「少しお待ちくださいってば。先に戦っていたズミさんは気絶しているじゃないですか。救護するのにも順番があるのです。」
「先ずは、怪我の程度が大きい方が優先なのです。」
「私達は自己中心な考え方はやめて、先ずは仲間の事を一番に考えろと教わりました。正にこの時の事をいっているのです。あなた様もその様に習わなかったのですか?」
ヒョウ
「自己中心的だと・・・。まぁ良い。俺は疲れた。救護班はもい良いから、このまま家に帰してくれ。休んでいれば時期傷は癒える。」
小守
「了解しました。このまま自宅まで転送します。」
「先ほどは感情的になってしまい暴言を吐いてしまい申し訳ありませんでした。でも、私も初めての実戦でしたし、プロディガル様達のメンタル的な方まで補う事はまだまだ難しいと思います。」
「ですが、誰かの役に立ちたい、困っている人を救いたいという気持ちにズレはありません。ヒョウ様も、もう少し周りを見て協力をして頂けると助かります。」
ヒョウ
「・・・・・。家に送れ。」
小守
「・・・・・。ポチ。」
小守は何も言わず、無言でヒョウを元いた自宅に転送した。
小守
「何なんですかあのヒョウというおやじは!自分の事ばかりで人はどうでも良いって感じですかぁー!」
「キィー、気分悪るー。あんな人がプロディガルにいるだなんて思ってもいませんでした。」
「ああいう自分勝手な人は豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえば良いのだー!」
小守のサポーターとしての最初の出来事は、最悪? であったのだろうか。ただ、プロディガルが全員快くサポーターの言う事を聞いてくれるとも限らないのである。これ以上に「クセのある」プロディガルがいてもおかしくは無いのだ。
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