第81話 一致団結
小守
「一体これからどうしたら良いのですか。マザーも勉さんもいなくなってしまった今、サポートはどうするのでしょうか? 他に誰かサポート出来る人はいないのでしょうか?」
星川
「ちょっと良いですか?」
「さっき私、勉さんを担架に乗せた時に感じたの。意識も無い、痙攣をしている勉さんの手が私の手に触れた時、私の手を軽く掴んだ感じがしたのよ。私はその時直感で感じたわ。『サポートを頼みます』と、勉さんが頼んでいるのだと。」
「そして私は思った。勉さんの想いに応えるべきなんじゃないかと。」
夜見
「私もそう思いますわ。良く考えてみて。何故、勉さんが私達に『模擬実戦形式』をさせていたのかを。こうなる事を勉さんは予測していたから、過酷である実戦的な勉強を早い内から私達にさせていたのだと思いますわ。」
城
「俺もそう思うぜい。マザーが倒れた時に勉さんが言った言葉『弱い自分を捨てる。前に出る。仲間との連携。相手の事を一番に考える。』には、今回の様な状態になった時に、俺等が直ぐに対応できる様にと投げた『メッセージ』だったんだと今は思うぜい。」
利乃
「そうね、私達全員でやるしかないのよ。皆、腹をくくって。ここからは学習じゃなくて、本物の実戦よ!一人ずつ交代しながらなら何とかなるわよ、きっと。」
「一人一人が全力を出し、このピンチを乗り切って全員の経験値にしていくのよ。そして、私達だけでプロディガルをサポート出来る様になれば、安心して二人共ゆっくり休めるってもんよ。」
風海
「ここへ来て、最初は何も分らんかったが、そなた達と毎日一緒に飯を食い、風呂に入り、寝るまで顔を合わせて気が付いた事があったのじゃ。それは、そなた達は皆良いやつばかりじゃ。ワラワもこの様な仲間が欲しかったし、色々な人の役に立ちたかったぞ。」
「でも、勉さんやキャプテンは人使いがあろうて首や肩、手首や腰が痛い時もあったのじゃが、早く認めてもらわんといけんしのー・・・。痛い所にサポーターしながらサポートはできんじゃろ・・・。クククククク・・・。」
小守
「全然面白く無いし、笑いを取る所では無いですから―!。」
宙治と超剛が勉を古化と医療班にに預け戻って来た。
宙治
「戻ったぞ。で、どうなったんだ? 代わりのサポーターはまだか?」
「一応、古化さんには伝えておいた。代わりのサポーターが来るまで待機していますと。」
超剛
「古化さんはそれ処では無いって感じで応えてはくれなかったけど、俺等には指示を待っているしか無いからな。」
利乃
「その事だけど、多分代わりはいないわ。代わりは来ないと思う。」
宙治
「えっ何で? マザーや勉さんの代わりはいないって事? S・F・Cの中には、こんなに人が沢山いるのに? 利乃ちゃん何で代わりが来ないって言いきれるの?」
利乃
「前に勉さんが言っていたわ。『人工衛星Co8739teを操りプロディガルをテレポート』出来るのは、古化さんとマザーと勉さんだけだと。」
「それを考えたら社長を抜いたマザーと勉さんだけなのよ、きっと。それに『マザーが倒れた今、私がマザーの代わりをするしかないの。』とも言っていたわ。」
宙治
「そんなー。では、今戦いながらサポート要請を出しているプロディガル達はどうなってしまうんだよ。」
超剛
「僕達は勝手に動けないし、指示が無ければどうして良いのかすら分からないぞ。」
「モニターを見ていても分かるけど刻一刻と状況が悪くなっている気がするよ。赤いマークも増えてきているし、どうすれば良いんだ。こんな事態が起こるなんて聞いてないぞ。」
そこに、プロディガル教育に携っている 押花美琴 が入って来た。
押花
「失礼します。古化社長の助手をしております『押花 美琴』と申します。以後お見知りおきを。」
「皆さんお願いがあるので聞いてください。皆さんも気付いているとは思いますが、現在とても緊迫した状況下にあります。二人のベテランサポーターが激務の為、倒れてしまい二人共今はICUの中にいます。しばらくは、出て来る事は無いでしょう。」
「そして、社長から皆さんへ伝えてくれと言われましたので、ここへ来ました。その内容は、たった今から受講者13名全員でサポートをしてもらいたいという事です。」
「代わりのサポーターは来ません。いや、いません。代わりを出来る者がいないのです。」
「ですので、あなた達が今・・・」
利乃
「押花さん。その事なら私達はもう気持ちの準備は出来ています。後は指示をもらえれば、いつでも動く事が出来ます。」
押花
「・・・。そうですか、もう察しはついていたのですね。感の良い人達ですね。」
小守
「でも、誰が最初にやるのよ。順番を決めておかないと動揺して上手く出来るか不安だわ。」
利乃
「それなら私が最初にやるわ。私の次に出来る人を決めて準備をお願い。私もどれくらい続けられるのか自分でも分からないから。」
押花
「それなら、問題無いわ!」
押花はいきなりキャプテンの前に座り、サムリングを装着した。すると、キャプテン・モニターが作動し始めた。
AI
「押花様お久しぶりです。既に発信はしていますが、マザー様と勉様が体調不良の為強制的にサポートをシャットダウンさせて頂きました。再開の際はお二人のコード番号をご入力下さい。」
「また、押花様のデータを検索しましたが、データはございません。このままサポート業務は行えませんので、ご了承下さい。サポートをする場合は、CEO古化とNASUの許可が無ければなりません。どうされますか?」
押花
「サポートはしないわ。キャプテンお願いがあるのだけれど聞いてくれる?」
「このルームのデータをMルームにあるコンピューターに直接繋ぐ事は出来る?」
AI
「もちろんです。簡単な事です。今繋げました。Mルームにあるモニターと13台のコンピューターに繋げました。私も『マザーズルームとMルーム』の両方に繋がっています。」
押花
「早っ!」
「後、衛星Co8739teの使用許可をお願いしたいの。受講者13名分の使用許可よ。」
AI
「その件は、先ほどCEO古化とNASUの許可が承諾されております。」
押花
「流石社長、行動が早いわね。」
「では、皆さん。今、キャプテンがこの部屋マザーズルームとMルームの全コンピューターをリンクさせました。あなた方の使っていたコンピューター1台1台がマザーズルームのものと同じ様に使えます。」
「皆さんが学んで来た事を全て出して頂く時が来たのです。私には、そうお伝えする事しか出来ません。」
「皆さん、全員Mルームに移動して自分の席に着き待機願います。」
13名全員がマザーズルームからMルームに移動し自分の席に着いた。そして、サムリングを装着し待機した。全員の気持ちはとっくに準備完了である。いつでも来い、全力でサポートしてマザーと勉さんの力を借りなくても、プロディガル達に完璧なサポートをしてやるぞと。
宙治と超剛も皆のヤル気に影響を受け、顔を見合わせてヤル気ポーズをとった。
次々に各自のデータがキャプテンに取り込まれて行く。今まで行っていた練習問題から模擬実戦のデータまで幅広く詳細にその時感じて来た体の状態まで全てがデータ化されインストールされる。そして、全員のデータ書き込みとインストールが終了した。
AI
「13名の受講者様全員のデータが読み込み完了となりました。一旦電源が落ち再起動致します。再起動までに30秒程お時間を頂きますので、少しの間お待ちください。」
と言うメッセージと共に電源が落ちた。そして、30秒後に再度キャプテンが起動し始めた。
「バッ。」突然モニターが明るくなった。再起動した「キャプテン・モニター」は今までとは違う何とも鮮やかなフルカラーになっており、まるで別の画面を見ている様であった。
全員
「おー-------!すっ凄い。鮮やかで見やすい。」
押花
「皆さん、これがキャプテン・モニターの本来の姿です。マザーは老化のせいで明るい画面がどうも苦手になってしまわれた様でしたので、先ほどの様な黒と緑の暗い画面に設定していました。しかし、皆さんは若いですから明るいフルカラー画面が良いと思い設定を元に戻しました。」
「使い方としては今までと一緒です。しかし、今から行う事は実戦になります。実戦は各地で怪物が現れ数件の応援が一斉に送られて来る事があります。その応援要請やプロディガルのメッセージは一旦キャプテンに預けられ順番に配信されます。そのスピードはかなり速いので聞き逃さない様にお願いします。」
「あなた方が装着している『ピアースフォン』で聞き取れるはずですが、万が一応援要請やメッセージを聞き逃した場合はピアースフォンを使い再度聞く事も可能なので、デスクにあるモニターで操作してください。」
「何より重要な事は、応援要請には必ず誰かが対応するという事です。それがプロディガルとカーム・サポーターとの信頼関係を築く第一条件ですから。」
「では皆さん、検討を祈ります。」
受講者13名は突如として実戦のサポートをする事となった。
もう受講者では無い。プロのサポーターとなり、プロディガル達を支える「カーム・サポーター」として気持ちを切り替えなければならないのだ。その一歩を彼らは踏み出したのだ。
模擬実戦が可愛く思える程の、過酷で残酷な「実戦」という戦渦へと・・・。
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