第80話 勉の限界
勉はプロディガルの一人が亡くなってしまった事を「キャプテン」から聞かされ衝撃を受けた。自分のミスにより、自分が間違えた事で一人のプロディガルの命を亡くしてしまった。彼にも家族があり守る物があったのに、自分が彼の命を守れなかったせいで、亡くなった彼は自分の家族も守れなくなってしまった。私のせいだ、私のせいだ・・・。
— プツン —
勉の頭の中で、勉の気持ちを、勉の心を繋いでいた強靭だったはずの一本の何かが「切れた」。勉の気持ちを繋いでいたプロディガル達との「信頼関係」を自分の犯してしまったミスにより「保てない」と思い、自らの考えでそれを断ち切ってしまったのだ。それと同時に、勉の心の崩壊が始まった。
勉は限界だった。勉の心は24時間張り詰めている状態であり1㎜の余裕も無い状態が続いていた。その中起きた「仲間の死」による重圧と責任と絶望感が一気に伸し掛かり心が耐えられなかったのだ。
「サムリング」が勉の異常を一早くキャッチして自動的に「ピアースフォン」でSOSを発信していた。しかしその直後、勉はマザーと同じ場所で倒れてしまった。
2班7名の受講者は叫んだ。
利乃
「勉さん、しっかりしてください。どうしたのですか? 勉さん、勉さん!」
しずく
「利乃ちゃん、勉さん泡を吹いています。横向きにして気道を確保しないと。」
宙治
「Mルームの皆、勉さんが倒れた。こっちに来てくれ。担架もお願いする。急いで地下8階の医療施設に運ばないとヤバイ。」
土崎
「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。一体どうしちまったっていうんだよー、勉さん!」
夜見
「ですわ、ですわ、ですわ、大変ですわ。何とかしないとダメですわー!」
古化
「皆さん、勉さんがどうかしたのですか? ピアースフォンにはSOSの知らせが来ていたが、まさか・・・。」
利乃
「古化さん、勉さんが急に倒れたと思ったら口から泡を吹いています。少し痙攣もしていて、直ぐに病院に運ばないとマズイ状態です。」
古化
「分かった。勉さんを直ぐに地下8階へ運べますか? 私は医療班に連絡をしておくから、直ぐに連れて来てくれ。」
利乃
「了解しました。直ぐに連れて行きます。」
「早く担架来てよー。」
星川
「ヤヨ、担架が来たら直ぐに乗せるからお願いね。二人じゃ無いと無理だから。」
天空
「任せな。私一人でも担架に乗せてやんよ。」
超剛
「担架を持って来たぞー。勉さんは何処だ!」
天・星
「こっちよ、こっち。早くして、1分1秒を争う事態だよー。」
「せーの、よいっしょ!乗せたわよ。早く行って。」
超剛
「任せろー。誰か一緒に来てくれ。病院の行き方が解かる人いないか?」
宙治
「俺が行く。一度見舞いで医療施設へ行ったから分かるぜ。」
山竹
「ここ、ここさ。エレベータ止めておいたからさ、早く乗って。」
超・宙
「サンキュー、山ちゃん。今度、唐揚げ奢るよ。」
山竹
「本当!12個入りの大きいやつでお願いさー。」
そして、勉は医療班に渡され何とか事なきを得た。だが、マザーと同じく「ICU」送りになってしまった。サポートの任務は脳を使う精神業務でもある為に、皆が思っているよりも遥に闇落ちしやすく、人によっては簡単に崩壊へと導かれてしまう過酷な任務であると悟った出来事であった。
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