第71話 Mルーム
— 第五章 —
冷斗、力人、流聖の3人が祈祷師にベビーストーンを入石してもらう時と同時に宙治、利乃、しずくの3名もまた、適正体験を行う為に『Mルーム』へと移動した。
MルームのMとは「Material(物質・材料・原料)」の頭文字のMを意味する部屋という事である。Mルームで行う事はプロディガル達が現場へ送られ敵となる怪物との戦いで「相性」を見分け、有効な戦士を判断し情報を送るという計算が主となる任務である。
「Material×Material=プラスの効果」が無くては敗北が確定してしまう戦いとなり、それは排除しなければならない。この掛け算においてプラスの効果が出る戦いであれば、素早く勝利に繋げられる勝因にもなる。
戦いの中でメンタルと体力を抉り取られるのは長期戦となる事であり、プロディガルにとっても一番辛い事だ。戦いが伸びれば伸びる程、本来の能力を出せなくなってしまうからだ。相手の体力がBLACKだとしたら、それは敗北に繋がる可能性が有り「死」にも直結してしまう事にも成り兼ねないのだ。
(※BLACK:底無し。体力や攻撃力の表現方法。他 PURPL・RED・GREEN・YELLOW・BLUE)
Mルームでは「適確性、判断力、スピード、リカバリー力」等が問われるテストを行うのだ。3人はMルームの前に立った。
宙治
「いよいようち等もテストを受ける時が来たね。緊張するなー。」
利乃
「そうね、でも心配だわ。私自身にプロディガルをサポート出来る様な能力があると思えないし、本当は私がサポートしてもらいたい方なのよね実際。」
しずく
「私も心配ですけど・・・ワクワクもしています。誰かのお役に立ちたい、誰かのお手伝いが出来たら良いなと、ズーっと思っていたの少し楽しみでもあります。」
宙治
「でも、君達がいてくれて本当に良かったよ。俺一人だったら心細くて気が病んじゃうよ。」
「おまけに君達二人共可愛いしね。」
利乃
「なに下心満載って感じでしゃべってんのよ!変な事したら許さないからね。」
宙治
「おいおい。そんな目でなんか見ていないから大丈夫だって。俺はこれでも紳士だよ。」
利乃
「どうだかね~? 眼が怪しいわよね。いや、顔が怪しいわ!何か、女性を必要以上に追い掛け回しそうな顔をしてるわ。キモ。」
しずく
「ご自分で紳士とかあまり言わないですよね~。自分の本質を見抜かれない様に紳士という言葉の仮面で胡麻化している感じがします。キモ。」
宙治
「うゎ~、信用ないなぁ~。俺ってそんな風に見えてたのか? ショックー。俺、帰ろうかな?」
利・し
「アハハハハハ・・・。何落ち込んでんのよ。冗談よ。 頼りにしてますよ。」
宙治
「だよね。やっぱりね。 では、中に入りますか?」
利・し
「立ち直り早!」
3人はMルームの扉の前に立った。3人のバッジをセンサーが読み込んだ。
「プシュー。」
扉が開き中に入ると、既に複数名の人達がいて全員がこちらを見た。
3人
「うゎ~、恥ずかしい。何で皆こっち見るのよ。見せもんじゃないっていうの。」
中には1人の講師がいて適当な席に座るように指示をした。受講者の人数は男女合わせてちょうど10名いて、宙治達を含めると合計13名のようだ。席も13席と全て埋まり講師が注目する様に手を叩いた。
講師
「皆様、ご苦労様です。本日よりあなた方の講師を務めさせて頂きます『勉 強華(べん きょうか)』と申します。宜しくお願いします。」
「今日このMルームに集まって頂いた理由は、表舞台で戦っているプロディガル達のサポートの任務をして頂く為の『方法』を学ぶ為に、お越し頂いております。」
「しっかりと、方法を学び1日も早くプロディガル達のお役に立てる様になってください。」
「このMルームでは『総合的判断力・適確認知力・スピード反応力・応用リカバリー力』を主に学んで行きます。従ってここで学ぶことは、戦場にいるプロディガル達に適確な情報を与え戦渦での対応や対策をきっちり伝える事が出来る様にならなければならないのです。」
「あいまいな情報、遅い情報や対応では返ってプロディガル達を不安や混乱に導いてしまい兼ねません。判断(Judgment)適確(accurate)スピード(speed)応用(application)の頭文字を取りJASA(ジャサ)と呼び、これを学んで行きます。」
「ここにいる13名の方はサポーターとしての素質を十分に兼ね備えていると判断され選ばれてこの場所にいるのです。どうぞ、途中で諦める事無くJASAを習得して下さい。」
「それでは、13名の方は多分『初めまして』の方も多いと思いますので簡単なお名前と顔見せを致しましょう。」
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