第68話 ミッション-Ⅰ
3人はミッションが表示される大型モニターの前に立った。すると、いきなりカウントダウンの音声と共にモニターに数字が表示され始めた。
10、9、8、7、6、5・・・・0
「ミッションを開始致します。 I Wish You Good Luck。」
モニターの前でミッション内容を確認しようと立っていた3人にそれは突然訪れた。
3人
「のぁー・・・・。かっ体が重い。 たっ立っていられねー。 めっ目の前の視界が・・・。」
突然襲って来た「鉄分コントロール・ミッション」は3人にとって、とてつもない程強烈に体の自由を奪ってきた。先ず立っている事が出来ないのだ。体の上にエアーズロックが伸し掛かっている様である。血液の流れも変わる為、血圧異常、酸欠状態になり横になっている事も辛い状態である。酸欠の為、視界も極端に狭くなり呼吸も乱れ恐ろしい程の脱力感に見回れる。3人は横になった状態でモニターに表示されている、ミッション内容を確認している。
力人
「お、おい。最初にやる事は何だ? 流聖確認出来るか? 俺は目が霞んで良く見えねー。」
流聖
「ぼっ僕も目を開けているのですが、視界が狭く焦点も合わないので何て書いてあるのか分からないです。」
冷斗
「私が見ましょう。目を細めれば何とか見えそうです。えー・・・『散らかっている・・・積み木を・・・おもちゃ箱の中に全てしまう。』と書いてあります。」
流聖
「そ、それだけですか? でも、積み木は何処にあるのですか?」
冷斗
「5mくらい先のソファーの前にあるのが、そうだと思います。首も動かないです。」
力人
「俺に任せろ!根性でソファーまで行って、こんなミッション直ぐに終わらせてやるぜ。パワーで勝負だ!」
流・冷
「リッ君頑張って、でも無理はしないで。」 「君がいると心強いよ。」
— ミッション開始から3時間が経過した。 —
力人
「ハハハハ・・・。無理だ。体が動かせねー。積み木の場所にさえ行けねー。何なんだこの状態は、動くのは口だけだ。体の自由が奪われ過ぎだぞ。」
冷斗
「私は唾を飲み込む事さえ容易では無いですよ。何か、床がビチョビチョです。」
流聖
「で、でもリセが細胞強化をした直後は体が軽くなり動かせる様になると言ってませんでしたっけ? それっていつ頃起こるのでしょうか? 個人差があるととも言ってましたが。」
すると、突然冷斗が立ち上がった。最初に細胞強化が終了したのは冷斗だった。やはり個人差はある様だが、それが個人的な潜在能力の差では無い。
冷斗
「体が動くぞ!最初のミッションは私に任せて下さい!体が動けば何てこと無い作業ですから。チョイチョイで終了です。」
冷斗はソファーの前に散らかっている積み木を箱の中に戻そうとした時に、ソファーの前で倒れた。
流聖
「冷斗さん、どうしたのですか? 体調不良ですか? だっ誰かぁー・・・。」
冷斗
「流聖くん、違います。ただ単に体が動かせません。まぁー気分も、凄く悪いし脱力感も充分にありますけどね。」
「さっきと同じ状態ですね。動かせる時間が短すぎる。」
その次に、力人の体が動く様になった。力人は急いでソファーの前に行き、積み木を手に取りおもちゃ箱に入れ様とすると、いきなり積み木が「鉛」の様に重く感じたのだ。そして、冷斗と同じくソファーの横で積み木の様に崩れ落ちた。
力人
「うっ嘘だろう!体が動かせる時間が短すぎる。しかも、この脱力感と重圧感が半端ねぇし、気持ち悪りぃー。このミッション本当にクリアー出来るのかよ?」
「積み木の前で倒れてちゃー、俺等が『積み木崩し』みてーだな。」
「順番からして次は流聖の体が動く順番だから、頼むぞ流聖!このミッションを終りにしてくれ。」
数分後、いきなり流聖が立ち上がった。そして、スピードが大事だと思った流聖は冷斗と、力人が倒れている積み木の場所に「ヘッドスライディング」をした。しかし、スライディングしただけでそのまま動けなくなってしまった。
力人
「お前何やってんだよ。アホか?」
流聖
「すっすみません。 気持ち悪い・・・オェ~・・・。」
力人
「でも、3人共ソファーの前で倒れていて、まだ一つも積み木を箱の中に入れる事が出来てないとは・・・。想像を絶するな、このミッション。」
「このミッションが始まってから、5時間くらいが経つが状況が変わっていないとは・・・。キツイ」
3人はこの様に「動ける動けない」を繰り返しながらミッションを終らせようとしたが、結局終わらないまま、1日目が過ぎて行った。食事も無し、ベッドで寝る事も出来ない状態で長い夜を過ごした3人は絶望感に見舞われていた。地下であり、窓も無い為に、今の時間を知るにはモニターに表示されている、時計を見るしか無いのだが、目も霞んでいて良く見えない。
すると「ポン」と音がして画面に大きく表示された。3人は目を見開き、良く見ると「朝食の時間」と表示されていた。
そして、その直後部屋の扉が開き助手である「押花」が入って来た。手に持っている籠の中には3人分の朝食が入っていて、ダイニングテーブルの上に綺麗に置かれた。
押花
「皆様、朝食の時間になりました。各自朝食を摂りミッションの遂行をお願いします。尚、朝食の時間は8時までとなりますので、時間内にお召し上がりください。時間を過ぎますと強制的にお片付け致します。」
力人
「ちょっちょっと待ってくれ。殆ど体が動かないのに、どうやって朝食を食えと言うのだ。少しの間でも良いからこの状況を解除するとか、別の場所に移動するとか無いのかよ。」
押花
「この訓練は課せられたミッションをクリアーするまでは、継続されるシステムになっております。朝食が食べたいのであれば、どうぞ自力でお召し上がりください。前も言いましたが、お手伝いは一切致しません。」
「古化社長も言っていましたが『普通に慣れる』という事が目的であるミッションですので、どうか勘違いをなさらないで下さい。では。」
押花はそう言い残すと、部屋から出て行った。
冷斗
「ヤバイ、このままだと朝食にありつけないまま片付けられてしまうぞ。何とかしてこの状態を打破しないと。」
流聖
「でも、どうやったら体が動く様になるのか? 昨日と殆ど変わって無い感じだし、フッと動かせる時がありますが、直ぐに動かせなくなる。その周期は多少短くはなっていると思うけど、それがいつなのか?・・・。ごはん食べたいですよー。」
力人
「いや待てよ。昨日と何も変わってないと言ったけど、俺等腹減ってないか?」
流聖
「それはお腹空きますよ、昨日から何も食べて無いし、飲んでも無いのですから。」
冷斗
「私達は動けないだけで、生きていますからお腹が減るのは当然ですが、それが何か?」
力人
「問題有り有りだぜ。昨日ここに連れられて来た時は、体の色々な所に不具合が生じて酸欠状態、脱力感も有り、気持ちも悪く、とても何かを食おうなどと思えなかったけど、今はどうだ? 腹が減って朝食が食べたいと思っているよな。」
流聖
「全くその通りです。食べたい。」
力人
「という事は、少しずつだがこの状態に体が順応している証拠じゃないか?」
流聖
「なるほど、そうですね。昨日は食べ物を見ただけで吐きそうな状態でしたが、今はどうしても食べたいくらい、飢えています。」
冷斗
「確かに、力人くんのいう通りですね。メッチャお腹減っています。」
力人
「そうだろう。つー事は、少しずつ体も動く様になるという事だぜ。気合で動かすしかねー。」
3人は、各々が気合を入れて「朝食を食べる」という事に意識を集中させ全身に動く様にと頭の中で命令をした。すると、ゆっくりだが体が動く様になっていた。繰り返し行われた「細胞強化」のお陰である。3人は意識の集中を切らす事なくダイニングテーブルまでたどり着き、朝食にありつく事ができた。しかし、3人の食べる姿はもはや人間とは思えない獣の様である。
そして、何とか食べ終わり積み木の前まで這い蹲りながら戻りミッション遂行を考えていると、モニターに何かがUPされた。それを良く見ると。
「本日の朝食:糖分〇〇g。鉄分〇〇〇gです。」と表示された。表示を見た3人の体はまた動かなくなってしまった。」
3人
「嘘だろう!この朝食鉄分多過ぎー! 食べ過ぎてしまったー! もうイヤー!」
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