第67話 最初の訓練
古化
「戻りましたか。どうでした、ベビーストーンを入れて頂いた感想は。」
「祈祷師様の姿は見る事は出来ましたか? 驚いたのではないですか?」
流聖
「それはもうビックリでした。いきなり怒られるは、お腹の中に石が入るは、老婆から可愛い女子になるは、プロポーズするって発言するは・・・頭の中の整理が追いつきませんよ。」
古化
「まぁまぁ、誰しもビックリする所であるが、それが私の狙いでもあるのです。良い勉強になったと思いますが、プロポーズとは何のことやら・・・?」
「気持ちの整理が付かない中で申し訳ありませんが、先ずこれからあなた方が受ける最初の訓練は『慣れる。』という訓練になります。」
「特別な機械を使ったり、特別な運動や筋肉強化をする訳ではありません。少しだけ特殊な部屋に入り、普通の何でもない事をしてもらうだけの訓練です。」
「この際、3名一緒の部屋で行ってもらおうか? 押花くん例の部屋は3名同時でも問題は無いかな?」
押花
「はい、全く問題ありません。ちょうど3名が生活出来る位の広さの部屋になっていますので、そこなら同時に3名様の成長ぶりが確認出来ると思います。」
古化
「そうですか、それは良かった。では、このままその部屋に移動しましょう。」
押花
「了解です。既に準備は整っています。プロディガル志願者の登竜門である部屋ですので。」
そして、5名はその部屋へと移動をした。その部屋は3階「ア・ホール会場」の一画にあった。特殊な部屋の殆どが3階に集約されているらしい。そこには、古化の部屋もあるので、アクセスの面でちょうど良い位置になっている様だ。
押花
「この部屋になります。」
3人は部屋の前に立った。壁、床、天井のほぼ全てが白が基調の綺麗な部屋である。部屋を見た限りでは特に変わった所の無い普通の部屋である。しっかり整頓整理されていて清潔感もばっちりだ。ソファーやテーブル、キッチンまでもが備わっていて、この部屋にもトイレやバスも完備されており、奥の一画にはベッドもあった。普通に生活が出来てしまうほど、快適そうな部屋だ。
そこに、たまたま風加が通り掛かった。
風加
「あっ皆さん、お疲れ様です。これからこの訓練ですか? 大変ですね。頑張って下さいね。」
力人
「あぁどうも。風加さんも、ここで訓練をしたんだよな。この部屋では何の訓練をするんだ? 大変て、何が大変なんだ?」
風加
「私の口から言うよりも、押花さんが分かりやすく説明してくれるわ!」
「私もまだ駆け出しですが、今の所この訓練が一番大変かもしれないわね。」
「気持ちに負けない様に頑張って下さいね。じゃー。」
風加は意味ありげな「大変」という言葉を残しながら去って行った。
押花
「皆様、これから行う訓練の内容をご説明します。」
「ここでの訓練は、今から入る部屋で普通の生活を送って頂くだけの訓練となります。普通の生活といっても、毎日のカリキュラムが指定されそのミッションをクリアーしながらの生活になる訓練です。」
「これと言って特別なミッションでもありませんし、難しくもありません。私達は皆様の生活を観察させて頂くだけです。お手伝いは一切致しません。」
冷斗
「それだけですか? それが訓練になるのですか? わざわざこの特殊な部屋に移動したという事は、何か特別な事をさせられるのかと思ったのですが、私の勘違いですか?」
押花
「流石最年長、只の恋愛バカでは無い様ですね。」
冷斗
「れっ恋愛バカ?・・・・・・・」
押花
「あっ、コホン。失礼しました、つい・・・。この部屋で特別な何かをするのでは無く、この部屋自体が訓練をする空間なのです。」
「とりあえず、トイレを済ませ落ち着いた頃合いでご説明させて頂きますので、どうぞ・・・。」
3人はトイレを済ませ、戻って来た。
古化
「では、皆さん聞いてください。これより最初の訓練が始まります。この訓練はプロディガルになる為に必要な登竜門となる訓練です。殆どの方がここを乗り越え、次なる訓練へと昇華して行きます。是非早く慣れてもらい全員が『普通』を手に入れてもらいたい。」
「押花くん申し訳ないが3人に説明をしてやってもらえないか?」
押花
「お任せください。では、説明します。この訓練は、人間の体内にある『鉄分』をコントロールさせてもらい、体の自由を奪わせてもらう訓練になります。」
「石を入れてもらう前に召し上がって頂いた食事にも、ふんだんに鉄分が入っています。食された鉄分は、血液中に入り体全体に行き渡ります。その鉄分をコントロールされると体の自由が奪われ、血液の流れが変わり、酸素の量も不規則になります。すると、とてつもない疲労感や脱力感そして矛盾感に全身を覆われます。その結果、筋肉の調整や関節の稼働に至るまで自分の意思で動かす事が困難となります。その指令と違う結果が脳にアンサーバックされ脳が異常を感知するのです。」
「その食い違う結果を脳が体の異常と錯覚しリセを通して体全体の細胞に『異常な場所を探し修復しろ』と指令を出します。指令を受けた細胞は脳の指示とは違うコントロール出来ない箇所の修復(強化)を行い始めるのです。この作用のスピードには個人差がありますが。」
「そして、強化が完了すると一時的に体が軽くなり鉄分コントロールの状態から解放されたかの様に体が動かせるのですが『動く=修復完了。』となり、強化は直ぐに終了してしまい、また直ぐに体の自由が奪われるのです。」
「脳→リセ→細胞強化 が繰り返し行われる事で徐々に脳内コントロールが出来る様になり、更なる細胞強化の育成となって行く事が証明されています。」
「この繰り返しこそが、強固な細胞を育成しプロディガルにふさわしい最速の再生ボディーを作り出すという事です。」
「しかし、これだけではこの部屋での普通は手に入れられない事をお伝えしておきます。」
「説明は以上になります。ハァー・・・。」
古化
「押花くん長い説明を完璧に伝えてくれてありがとう。後で、花蜜パフェを驕りますよ。」
押花
「ゴチになります。❤」
古化
「皆さん、先ずはプロディガルにふさわしいボディーと精神を手に入れる事を目指して頑張って下さい。宜しくお願いします。」
押花
「全てのミッションは部屋にあるモニターに映し出されますので、そのミッションをクリアーして下さい。」
「では『FeCM』(鉄分コントロール・ミッション)スタートです。」
プシュー・・・・。 3人を部屋に残し扉が閉まった。
果たして3人は登竜門となる、この「鉄分コントロール・ルーム」のミッションをクリアーする事が出来るのであろうか。
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