第64話 Sルーム(クラスの発表)
古化
「皆さん揃っている様ですね。時間厳守は良い心掛けですし、約束を守る、ルールを守るという事はチームの中ではそれが絶対条件になってゆきます。」
「皆さんはそれぞれの場所へ配属され目標を課せられます。その目標を達成するには、一人では無理です。数人が力を合わせる『チーム』とならなければ、達成は出来ません。そこには絶対的な『信頼関係』が必要になるのです。約束やルールが守れない様では信頼関係も築けないという事に繋がります。」
「信頼関係が強ければ強い程、プロディガルやサポーターは全力を出せるのです。無線などのやり取りで大体の状況は把握出来ると思うが、声を出せない状況下であったり、気絶していた場合等はSOSを発信出来ない。この時に仲間との信頼関係こそが仲間の生死を左右するツールとなるのです。」
「それは、イメージの一環であり『察知(センス)』というスキルです。仲間の安否を思う事でより敏感にセンスが高まるという事です。」
「あっすみません。話が大分反れてしまいました。それではクラスの発表と参ります。 おっと、その前に皆さんに言っておかなければならない事がありました。それは、クラスが決まった後にクラスの玉子となる『ベビーストーン』を体のミゾオチの辺りに入れて頂く事になります。」
「それは、貝に入れられる真珠の様な物と考えて下さい。あなた方の成長に合わせて石もまた成長して行くという事です。」
「体内への入石は、地下8階にある医療施設に従事している『祈祷師』が『祈祷術』によって体内へ収めるという事です。」
「痛みは全く無いとの事ですのでご安心を。」
力人
「マジっすかー? 体の中に石ころを入れるってヤバイでしょう? 胆石じゃ無いんだし。それが全然痛くないとか、信じられないっすよ。」
流聖
「僕は痛みには超敏感ですから、お腹の辺りに石なんて入れたりしたら間違いなく気絶ものですね。」
冷斗
「私も何だか不安になって来たなぁ~。本当に大丈夫なのですか・・・?」
「そういえば、雷次くんや風加さんはどうだったのですか? 私達より先輩なので、もう石は入っているのですよね?」
風加
「ええ、入っています。私はDクラスだったので、ダイヤのベビーストーンが入っています。痛みは全く無く直ぐに終わりました。」
「祈祷師様もとても親切で何の問題も無いと思います。」
雷次
「俺も入ってますよ。俺はEクラスでエメラルドのベビーストーンが入ってるぜ。」
「最初はもの凄く不安だったけど、やってみればなんて事は無い。全然余裕だぜ。」
力人
「ちょっと待ってくれよ。その前に、そもそも俺等の腹の中にベビーストーンを入れる理由が知りたいんだけど。何の為に入れるのか分かんねーし、こっちとしても納得してからじゃねーとOKなんていえねーぞ。」
押花
「私が説明致します。何故ベビーストーンを入れるのかというと、体内に入れたストーンは宿主と共に成長して形も変化して行きます。その変化は体の中にある色々な物質と相まみれて化学反応を起こしながら変化をします。その成長の過程で宿主の魂ともいえる精神と強固に繋がり、宿主を守るであろう『護石』になるとされているのです。」
「いわばプロディガルを守るお守りの役割りがあるという事なのです。」
「お守り=神の力 であり、神に近いとされている祈祷師様の祈祷術により石を収めるという事です。」
古化
「どうだね。納得出来ましたか? 思うほど心配は無いという事です。」
「この石の玉子を埋め込む風習は、日本で真珠を作り出したとされる西暦1890年頃のかなり以前となる西暦1500年前後に行われたとされている。当時、何故体の中に石を入れたのかという本当の理由は分かってはいないが、推測では江戸時代にアコヤ貝のケシ真珠が薬として使われていたという事もあり、真珠=薬=体を守る物=守護石=宝石 となり肌身離さず持つことで自身を邪悪な事から守ってくれるものと、考えられていたという説が有力とされているのです。一応ご参考までに。」
「その風習が少しずつ変って行き、今では祈祷術はもちろん化学の力も加わって現在の形になって行ったという事です。」
冷・流
「なるほど、理に適っていますね納得です。」
力人
「そうだな、説明を受ければ納得できる。これはお願いをした方が良いに決まってる。自分を守るための『盾』みたいな感じがするぜ。」
古化
「それでは、お待ちどう様でした。先生方発表をお願いします。」
先生方:
「それでは、発表します。先ずは 岩山 力人 くん。君はRクラスになります。」
「Rクラスの石は『ルビー』です。ルビーの石言葉は『情熱・自由』であり、君には仲間を思う熱き情熱や自由な発想感を感じました。まだ、スタートラインに立った所ではあるが、気を引き締めて頑張ってくれたまえ。」
力人
「ありがとうございます。Rランクとして日々精進してゆきたいと思います。」
利乃
「仲間に対する情熱より、料理に対する・・・よね。プッ」
力人
「お黙り!」
先生方:
「次に 岩清水 流聖 くん。君はCクラスになります。」
「Cクラスとは『クリスタル』です。クリスタルの石言葉は『純粋・無垢・完全』を意味します。君には純粋や透明感を感じました。自分の気持ちに正直に、仲間や大事な物の為に、ぶれない気持で頑張ってみてください。」
流星
「はい、やってみます。今は純粋に不安で、純粋に怖いのですが、こんな僕にも出来る事があるのだと純粋に感じています。皆さんの助けになれる様に頑張ってみます。」
利乃
「流聖上手い言葉で締めたわね。座布団一枚って感じ。真打に昇格ね。」
流聖
「利乃さん、やめて下さい。僕は純粋にそう思っただけですから・・・あっ。」
全員
「プッ。」
先生方:
「では、最後に 竜宮 冷斗 くん。あなたはPクラスになります。」
「Pクラスとは『パパラチア』です。パパラチアの石言葉は『誠実・愛情・徳望』であり、あなたには何か特別で誠実な愛を感じさせられました。それが、何であるのかは君自身分かっているのか、分かっていないのかかはこちらでは知る由も有りません。その深き誠実な愛が、強い愛情こそが皆さんの気持ちを一つにすると信じています。ここで本物の愛を見つけてみて下さい。」
冷斗
「了解しました。先生方には恐れ入りました。全部見抜かれた感じでちょっと恥ずかしいです。」
「私もこのS・F・Cの一員となれる様、日々訓練に励みたいと思います。そして、いつか真実の愛を掴みたいと思います。」
利乃
「先生方には何が見えているのか解からないのだけど、何かを感じているって事よね。誰かを愛しているのか、愛に飢えているのかどっちなのよ? この人。」
しずく
「私は後者だと思いますけど・・・。」
冷斗
「利乃さん、しずく、勘弁してくださいー。そんなにどん欲に見えますかぁ~。」
古化
「先生方クラス発表お疲れ様でした。新人のテストでは危険な思いもさせてしまい、申し訳ありませんでした。しかし、3人の素晴らしいスキルも観覧でき、体験出来たので満足感は感じれたのではないでしょうか?」
先生方:
「そうですな。久しぶりに私達もビビッてしまったし、興奮もしましたよ。」
「ですね。ドキドキとワクワク感でいっぱいでした。これからの活躍が本当に楽しみですなぁ。」
「3人の顔は覚えました。ワシの推しメンにしておきましょう。期待しております。」
「今度はもっと頑丈なマーズメタル製のマネキンを開発しなければならんな。これでは、予算を大幅にオーバーしてしまうでな。」
「では、皆さんしっかり頼みますよ。ほな失礼します。」
全員
「ありがとうございました。」
古化
「皆さんお疲れ様でした。クラスが決まったという事で、ひとまずは安心されたと思います。次にやるべき事はさっきも説明のあった祈祷師様からの入石ですね。」
「押花くん、後の事は頼みました。」
押花
「かしこまりました社長。」
「では、皆様ご説明させて頂きます。先ずクラス別で階が変わります。D・Rクラスの方は地下4階になります。S・Eクラスの方は地下5階です。A・Pクラスの方は地下6階となり、T・Cクラスの方は地下7階になります。」
「以上、何か質問のある方は?・・・無ければ次に移ります。」
「ここで待機している案内ロボ『エスコータAR』の後を着いて行き、岩山さん、岩清水さん、竜宮さんの3名は地下8階で、先ずベビーストーンの入石を終了させて下さい。入石が終わりましたら『エスコータAR』の後に続き、移動をお願いします。」
「光様、五十嵐様はそのままご自分のクラスへお戻りになられて結構です。舞様は1階のお部屋にお戻りください。」
風加
「じゃあね舞。皆と仲良くするのよ、喧嘩なんかしちゃだめよ。」
「お姉ちゃんは少ししたら、迎えに行くからね。」
舞
「はーい。お姉ちゃん頑張ってね。早く迎えに来てね。」
3名のプロディガル志望者のクラスが決まり、着々と準備が進められて行く。慣れない地へ来て、慣れない事の連続だが、忙しくさせ あまり考える時間を与えない方が、悩まなくていい事もある。古化もそれを分かってやっているのだ。
悩んで解決をすることもある。だが悩まなくていい事は、忙しさと共に消し去ってしまった方が良い時もあるのだ。
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