第62話 休憩中
全員で食事をする為に2階の「ホワイトホール会場」内にある食堂に移動をした。このホールも広く、食堂だけでもテニスコート20個分位はあろうかという広さである。
S・F・Cに勤務する従業員数は約1,500名。プロディガル達を含めると約1,700名の収容人数となる。その人数の胃袋を満たす厨房を兼ね備えた食堂であるのだ。食堂は24時間営業しており、いつでも空腹を満たす事が出来るが、基本となる主の料理は「和食」である。料理の基本は「一汁三菜」を掲げてあり、自然に皆の健康を維持管理しているのだ。ありがたい事である。
しかしラーメンや、カレー、パスタ、フレンチといった物も普通に用意されており、味の方もいわゆる一流を意識させる様な味付けであるので食堂に対する不満は一切聞いた事が無いくらいだ。
古化
「皆さんお疲れ様でした。3名の方は、いきなりテストで脳ミソをいじられて、変な映像も見せられメンタル的にも疲れたでしょう。ここの料理は脳ミソに不可欠である『ブドウ糖』がたっぷりと入ったメニューになりますから、どれでも好きなだけ召し上がって下さい。プラス鉄分も進んで摂取して下さいね。」
「それと、食べながらで良いので聞いて下さい。」
「脳を直接ドリームキャップで支配させた理由は他でも無い、リセが脳と密接に繋がっているからです。脳をコントロールする事でよりリセの能力を引出しやすくなり、それによって体に起きた『新化』も一早く引き出す事が可能になるのです。」
「脳は宇宙よりも神秘に満ちていると言われる位、謎や可能性を秘めています。そして、脳から指令を受ける細胞も未知の力を秘めている事になります。」
「最近の研究結果では、リセが脳と直接的に融合し新化前の細胞が出来る。そこに神秘的発想を作り出す脳からの指令を新化した細胞が受け、遺伝子を操作しながら身体能力や身体自身をを変化させてゆく『脳考超越(ブレーンシンクトランスセンデンス)』が起こるのだという事です。この新化は私達人類の想像を遥に超越する素晴らしい可能性を秘めているのですよ。」
「強いて言うなら、新人類の誕生になるのだと考えられてもいます。」
「すみません。皆さんのテスト内容が素晴らしい結果でしたのでついしゃべり過ぎてしまいました。どうぞ、引き続き召し上がって下さい。」
しずく
「流聖大丈夫? 殆ど食べてないけどまだ気分悪いの?」
流聖
「しずく、ありがとう心配してくれて。もう大丈夫だよ。さっきまでは気持ちが悪くて胸の辺りがモヤモヤしていたけど、大分元に戻ったよ。心配させてごめん。」
しずく
「そっか、良かった。では、いっぱい食べて元気出そう。私も食べよ。」
流聖
「すいません、質問ですけど・・・。この後クラスが決まってクラス別に別れた場合、ここに居る皆が別々の生活になるのでしょうか?」
押花
「いいえ、クラスが決まりそれぞれ別メニューで訓練を行ってもらう事になりますが、訓練後は自由に行動して頂いて結構です。皆様で食事をしようが、話をしようが、その点は自由にして頂いても問題ありません。しかし、就寝時間は守って頂きます。ちなみに就寝時間は22時となります。」
冷斗
「結構早いのですね。私はいつもAM1時位に寝ているかなぁ~。」
力人
「俺も22時位迄筋トレをしているし、それから風呂に入ったりするからなぁ~。」
流聖
「そうですね。何だかんだで僕も毎日24時手前位の就寝でしょうか?」
押花
「その点は多分問題無いかと思います。ここで生活をしている大勢の人はほとんどが、就寝時間前にお休みになられています。最初だけで、時期慣れます。」
「皆さんは、只全力で脳内でイメージをした通りに体を操作する練習をする事だけに集中して頂ければ結構です。」
そこへ、誰かが通り掛かり口を挟んで来た。
「そうじゃな。言葉で説明する事は簡単じゃが、その内容は極めて難しい事である。」
「やはりワシが説明した方がええかの?」
押花
「かっ会長?」
古化
「かっ会長!? どうして会長がこの様な所に?!政府との重要な会合に出席されているのではなかったのですか?」
全員:
「かっかっ会長!? この人が会長さんですか? だって、どう見ても年増も行かない少女ではないですか?!ただ、お爺さんみたいなしゃべり方をしていますが。」
古化
「この方はS・F・Cの創立者である『田女谷 馨(ためや かおる)』さんです。中々お会いする事は出来ないお方です、皆さん挨拶してください。」
会長
「古化くん、堅苦しい事は言わんでええ。ここでお会いした事は何かの縁じゃて、一つワシに新人へのアドバイスとして説明させてもらえんかの?」
古化
「そういう事でしたら、是非宜しくお願いします。」
「皆さん会長が具体的にご教授してくださるという事なので、全員で聞きましょう。」「では、宜しくお願いします。」
全員
「はい、お願いしまーす。」
会長
「例えば、分かりやすく説明すると、1・2歳の赤ん坊に食べ物を見せたとする。赤ん坊は食べ物を目で認識しておるのでそれを掴もうとする。しかし、上手く掴む事が出来ん。そして、やっと掴んだ食べ物を口に運ぼうとするが、口に上手く運ぶ事が出来ず、落としたり口の周りに持って行ったりしてしまう。
この様な光景を一度は目にした事は多少なりとも、皆あるじゃろう。これは、脳が自分の手を上手く操れていない事が原因じゃ。手を伸ばす、掴む、口に運ぶ、口の中に入れるといった動作を、脳が未熟であり、経験(データ)が無い為に上手に行えないのじゃ。」
「あなた方の超人的な能力も脳内でイメージして全身に伝え、細胞から呼び出し、コントロールして行かなければ、自由に操る事は出来んという事じゃ。」
「それを、この場所で学んで行くという事じゃな。今はまだ自分を赤ちゃんと同じであると考えてみて下さい。本当の初心に戻り学ぶという事がとても重要になるのじゃからな。」
「古化くん、こんなんでええかな? 分かりやすかったじゃろう?」
古化
「会長とても分かりやすく、自然に受け入れられるお言葉であったと思います。貴重なお時間ありがとうございました。」
会長
「では皆さん頑張って精進して下さい。ほな、失礼するでー。」
全員
「ありがとうございましたー。」
何だか良く分らないが、見た目は少女、口調はおじいちゃん、年齢不詳の会長に対し何だか分からないが、皆深々と頭を下げていた。多分心の何処かで容姿よりもどえらい何かを感じ取っていたのであろう。人間の本能で。
押花
「社長。先生方から連絡が入りました。準備OKだそうです。」
古化
「早いですね。では、今から2時間後に『Sルーム』に集合して下さい。そこでクラスの発表となります。」
「そして、Sルームの隣にある『Mルーム』では、宇野くん、天知さん、水河さんの三名が適応テストを受ける部屋になっています。この適応テストは他の部署からも受講者が見えると思いますので、3人には是非頑張ってもらいたい。」
「では皆さん、2時間後にSルームにお願いします。とりあえず解散!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます