第61話 流聖のテスト

司会

(岩清水さん、あなたはテストを受けるまえにビビッて帰るとか言っていましたけど、あなたの様な弱虫小僧が生き残って行けるほど、甘いワールドでは無いのですよここは。)

(少し残酷ですが、ハイレベルなドリームを用意させて頂きました。それをLOOKさせて差し上げましょう。)

(そして、泣き叫び情けない姿をさらしてマイホームに帰ると良いでしょう。フフフ。)


 流聖は眼断の意地悪によってレベルの高い映像を見せられていた。その映像は何もない草原から始まった。草原は薄暗く風が強く吹いていた。気が付くと流聖の隣には一人の少女がいた。その少女はひどく怯えていて周りをキョロキョロしている。すると、二人の頭上から何者かがいきなり降りて来た。それは、正しく怪物であった。怪物は少女の腕を引っ張り引きずり出したかと思うとカマの様なもので少女を殺害したのだ。しかも笑いながらだ。

 流聖は目の前で起きた情景に耐えられず、嘔吐してしまった。


 次に数人の人達が流聖の方に向かって何かを言おうとしている。何かから逃げる様な感じでもある。すると、また上空から怪物が現れ人々を殺し始めた。流聖は咄嗟に叫んだ。「やめろー!」

 怪物達はその声で一瞬動きを止めた。そして、こちらを向き「ニヤリ」と笑ったかと思うと、人々の首を跳ねたのだ。

 この映像は作られた物では無く、実際に怪物と戦った事のあるプロディガルにセットされたカメラで撮影した本物の映像を加工した物であった。


 笑みを浮かべながら人の首を跳ねる行為を目の当たりにした流聖の感情は怒りで満ち溢れていた。流聖の半径1m位に無数の水滴が現れ出し蠢いている。村で行ったテストの時に見られた物より不気味な水の動きをしている。

流聖は何かをしゃべり出した。


「もうやめろ。お前達は何処から来た、何が目的で人を殺す。何故笑いながら人の首を跳ねるんだ。そんな意味の無い事は今直ぐ止めて、地球から出て行け!」


司会

「良いですよ、良いですよ。GOODです。かなり衝撃な映像をLOOKした事で、非常にエキサイティングになっていますね。A,LITELで精神的に潰されるでしょう。良いですね、良いですよ。」

「では、これを試してみましょうか?」


 映像が変わり商業施設で怪物が暴れている映像に切り替わった。この映像もプロディガルによって撮られた本物である。

 こちらに向かって助けを求めて来る人がいた。その人は何と流聖の母親であった。あらかじめ家族構成の情報を提供している為、写真なども容易に入手出来る事を知っている眼断は、実際の映像を加工し母親の顔を合成させたのだ。


 母親は流聖の手を取り「助けて。」と言った瞬間に怪物に襲われ目の前で絶命した。

「かっ母さん。嘘だろ。嘘だろ。何で母さんがここにいるんだよ。母さん返事をしてよ、母さん返事をし・・・血が。俺の手に血が・・・。母さんの血が・・・。」

「よ、よくも母さんを。俺の大事な人を、罪も無い人をー・・・。」


「クソッタレー---!」


流聖の周りに蠢き集まっていた水が上に上がったかと思うと、流聖の動きに合わせて「マシンガン」の様に放たれた。その勢いは凄まじく、もはや水というよりも弾丸そのものである。」


「ババババババババババババババ・・・・・・・・・。」


先生方:

「おいおいおい!こんなのは聞いてないぞ、直ぐにドリームキャップを停止させなさい。」


古化

「ドリームキャップ停止!」


バシューウウウウウ・・・。ドリームキャップを緊急停止させた。


 流聖は膝から崩れ息が荒々しくなっていて目は大きく開き何処か一点を見ている様だ。そしてかなり興奮している状態であり、全身は汗なのか水なのか濡れていた。

 貫通はしていないものの、先生方の前に設置されている超強化ガラスが穴だらけになっていた。壁や床もエグレていて、隅に置いてあるマーズメタル製のマネキンもベコベコに凹んでいた。


先生方:

「先日直したばかりの、マーズメタル製のマネキンが・・・。」

「眼断くん、彼に一体何を見せたのですか? ここまで自身が興奮するようなレベルの映像は設定されていないはずだが。」


司会

「あ、はい。そ、そうですね。ストレンジですね。マシーンの調子がストレンジなのかな? 直ぐに調査してリペアーしましょう。ハハハハハハハ・・・。」


利乃

「流聖大丈夫? 気は確か? 狂ってないよね? こんな状態の流聖は見た事無いわ! ちょっと、このテストやり過ぎじゃない?」


しずく

「流聖こんなに震えていて大丈夫? よほど衝撃的な映像を見せられたのね。」


古化

「眼断くん。後で私の部屋に来てもらえますか。ドリームキャップの事で聞きたい事がありますから。それと、どの様な映像を見せていたのかも確認しておく必要もありますしね。」

「それに、合成映像はこのテストでは使用禁止されているので、まさかとは思いますが、使用されていた場合の対応も考えなければならんのでな。」


司会

「ヒィィィィィィィィ・・・・・。申し訳ございませーん。ウワァァァ・・・。」


司会の眼断は叫びながら何処かへ走って行ってしまった。



     — テスト終了 —



古化

「流聖くんには申し訳無い事をした。すまん。今後この様な事が起こらない様に改善をするつもりだ。」

「では、押花くん続きを頼みます。」


押花

「はい、社長。」

「先生方、能力者3名のテストはこれで終了ですが、いかが致しましょう?」


先生方:

「うむ。3名の素晴らしい能力が確認出来てこちらとしても満足です。」


「この後、話し合いクラスを決めるのだが直ぐにでも次の訓練をしてもらっても良い位だと思いますね。」


「私が言うのも何ですが、3人共良いプロディガルになると思いますよ。急遽テストを停止してしまう不都合もありましたがね。」


「この能力を自分の物に出来れば必ずや人類の為に活躍出来ると思います。」


押花

「では、先生方宜しくお願い致します。後ほど、お呼び下さい。」

「皆さんお疲れになられたでしょう。食事をしてから休憩でもしてください。また、サポーター志望の3名もTルームがかなり壊れてしまったので、清掃と修理を致しますので、ご一緒に行動をお願いします。」

「それと、雷次さんと風加さんと舞さんも私達とご同行お願いします。」

「という事で、全員食事して休憩ですね。うふ❤」


古化

「押花くん、最初からそうに言えば良いじゃないか。可愛いやつだ、この小悪魔め。」


 3名の能力テストも無事終了し、後はクラスの発表を待つだけである。この後は、どの様な訓練が準備されているのであろうか?

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