第22話 風加の力の理由

 風加は毒による痺れで後席で横たわっている。宙治は風加を介抱しながら横顔を見て「可愛い」と思っていた。

施設に向かっている途中、助手席に座っている雷次は運転している古化に風加が使った能力(力)が備わった理由を聞いた。


雷次

「自分は、俺の体に電気に対する色々な能力が備わったのは、生死を彷徨っている俺の体に『リセ』を投与した事により夢を通して脳からリセを介し細胞覚醒が起こり細胞新化が発動したと聞いていますが、彼女も自身の体に生死を彷徨うような重大な事が起きてリセを投与されたことによる新化が原因なのですか?」


古化

「いや、ちと違うな。リセを投入した事は間違いないが、彼女の場合は状況が少し違うのです。」

「風加の誕生日の買い物をしていた両親が怪物に襲われたと言ったが、そこには妹さんも一緒にいたのだよ。」


雷次

「えっ妹さんもですか?」

「でも、妹さんは無事だったのですよね。S・F・Cにいるという事は・・・。」


古化

「うむ、風加の妹は両親と一緒にいたのだが運よく命は奪われなかったのです。しかし、かなりの重症を負っていて直ぐに病院に救急搬送されました。しかも、このままでは助からないと判断され医師も半分諦めていたのです。」

「もちろん、リセの投与を計画したが妹は年齢も体も小さく、この年齢での臨床結果は有りませんでした。しかも、もう一つ問題があった。」


「それは、先天性の病です。リセは正常な臓器や骨、肉が激しく損傷しても修復して完治に導くが、先天性の病気等が有る場合は修復が出来ないのです。多分、遺伝子的な要因が原因であると考えられています。」


古化

「だが、続きがあります。諦めかけている医師に対して風加は土下座をしてお願いをして来たと言うのです。」


【私の血液と妹の血液の型は同じです。だから私の臓器も使えるはずです。妹の壊れた所に全て使って下さい。妹を助けて!私の命に代えても救ってください。】と。


古化

「しかし、それでは風加自身が生きられないでは無いかと考えるのが普通だが、やはり医者は賢いな。ある提案をしてきたのです。」

「それは、風加の臓器を完全に取り除き移植するのでは無く、必要な分だけ切除し妹に移植するという案だったのです。」


宙治

「風加さんの通常の臓器を必要な分だけ移植したのですね。」


古化

「その通り。そして、ここからが凄い事です。」

「先ず妹の異常のある臓器と傷付いた臓器を全摘する。そして、風加の体から健康な臓器を切除し妹の体に移植するということだ。この手術は妹のカルテを見ながら先天性の悪い所を見極め悪い臓器が残らぬ様に行わなくてはならない。人間業では無い。もはや神業であります。」

「その無謀とも言える手術は行われ、何とか無事に手術は終了しました。妹の体力も良くぞ持ってくれたと思う。そして、両者に『リセ』を投与したのだ。」

「リセを投与した二人の体は時間と共に治癒して行き、風加と妹の体は驚くほど綺麗に治っていたのです。その結果を見て手術は成功したという事が証明されました。」

「その後は妹が抱えていた先天性の病も全て消え、普通の女の子と同じ生活も取り戻しています。」

「この手術を提案し、実行した医療チームは〇〇〇〇医学賞を受賞したらしいぞ。」


古化

「これが、風加のもう一つの話だ。彼女は家族思いのとても優しい女性だ。私が若かったら、嫁にしたいくらいの良い女だよ。怒ると怖いがね。」


雷次

「なるほど、そんな事があったのですね。あの気の強さは性格では無く、家族を愛するが故の『心の強さ』なのですね。」


風加の話をしている間に車は目的地へ到着した。


古化

「よーし、到着しましたよ。ここが君達がこれから働くS・F・Cの本拠地だ。君達の新しい職場だ。」

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