第13話 外の様子
外に出て少し歩いていると分かったが、自分が居たドーム(コンプリート・J)は都心の場所に位置しており周りは高層ビルに囲まれていた。外部との連絡も出来ず、外の音すら聞こえないので、まさかこんな都会の中にあるとは思ってもいなかった。
細い路地を抜け何やら大勢の声がする方へ行ってみると、わりと広めな公園に出た。
公園には家族で来ている人やカップル、園内を歩いたり走ったりしている人、お年寄りや動物の散歩をしている人など様々な人達が楽しそうにしていた。雷次は久しぶりに沢山の人達を見た気がした。
雷次も三十歳手前に来ていて、恋人や家族の事を考える時もあった。公園に来て少しゆっくり出来て、楽しそうな人々を見れて「何だかんだ言っても地球、地上って良いもんだなぁー。」としみじみ感じていた。
今の仕事に着任する時は、あこがれの「コスモスタッフ」になる事が出来て、これが自分の天職であり「これ以上の仕事など世の中何処に行っても無い。」と考えていたのだが、今回宇宙事故で地球に戻され感じた事があった。
コンプリート・Jという施設に入っていたが「恋人もいない、家族もいない、友達も仕事で見舞いに来れない。」顔見知りや知人との繋がりが一切無い状況の中で「自分の人生これで良いのか? このまま終わってしまうのか?」と、強く疑念視を抱く様になっていた。
公園の芝生に寝ころび空を見ながら雲の流れを見ていた。小さな雲の一つ一つが、さっきまで一緒にいた半地下街の子供達の顔に見えてまた涙が溢れて来た。
雷次は思った「自分も結婚し家族をもとう。」と。
しばらく、雲の動きを見ながら時間がゆっくりと過ぎて行くのを感じていた。とても有意義な時間であった。
少しすると、何やら騒がしい音と共に何かがこちらに近づいて来た。それは、ドーム内に配備されている警ら隊の足音だった。
雷次は咄嗟に「ヤバイ、俺が外に出たのがバレたのか?」と思った。
しかし、私服に着替えている雷次を大勢の中から探し出す事など簡単にはいかない。
見つかる可能性は極めて低いと感じた。
雷次はあわてる事無く普通に振舞っていると、予想通り警ら隊は間もなくして何処かへ行ってしまった。
「セーフ。」と一息付きホットした。
ドームの外に出たのがバレたのか? いや、そんなはずは無いと色々考えていた。
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