第9話 リセの研究組織

 しばらくして、雷次はドーム内にある医療機関に呼び出された。奥の部屋に入る様に案内され恐る恐る扉を開けると、そこには医師数名とスタッフ数名が彼が来るのを待っている様であった。雷次は中央にある椅子に座る様に指示され、座るや否や医師達は複数の質問をしてきた。


 質問の内容は事故が起きた後の夢の事、今現在体に感じる感覚や変わった事の全てだ。雷次は記憶をたどり少しずつ思い出しながら話しをし始めた。


 自分の身に起きた事故直後、気絶をしていて当然その時の記憶は残っていない。

しかし、地球に送られリセを投与された後、意識が戻りつつある中で見ていた夢の事は何故かはっきり覚えていたのだ。


        — 夢 —


【電気は面白い。宇宙の任務を終え地球に帰ったら半永久的な発電システムを完成させよう。それと、離れた場所に電気を飛ばし動力させるシステム(チャージコード・レス・エレクトリック)の開発や、電磁波を利用した空中を移動出来るスーツの作成等に着手し、皆を驚かせるんだ。そして、エネルギー代が必要の無い豊かな暮らしが提供出来る社会を世界中に広めて行くのだ。自分は電気と共に有り、新たな電気社会を構築する事に貢献したい。そして、自らも電気を発電する「ディスチャージ」になりたいと。】


医師1

「君が常日頃から思い描いている事、考えている事や思いが「夢」となって脳内に表れる。その夢を電気信号化し「リセ」を介し全身の細胞に指令が行く。指令を受けた細胞は体内で遺伝子革命を起こし、細胞覚醒が起こると言うのだ。」


「そして、喧嘩を止めに入った時にC・P・Cで殴られ全身に電流が流れ込んだ事により、それが引き金となって「細胞新化」が起こったのだと推測する。」

「君がC・P・Cで殴られた時に気絶しなかった事も、既に細胞の新化が少しづつ起きていて、何らかの仕組みで電流を無効化していたのだと思われる。」


医師1

「このリセの優れている所はもう聞いておると思うが、動物の細胞との良質な融合性である。脳内でイメージすればする程鮮明に、より強力に細胞が覚醒しその体に都合良く細胞新化が起こるという事。」


「また、その新化は脳内で見ている『夢』の影響を強く受ける為、どの様な夢を見たかにもより、体内のメカニズムは大きく変化して行くと言うことだ。」


また、別の医師が言う。


医師2

「君は『電気と共に有る』と言っていたが、私の思う所 体が電気に対し強力な耐性を備えたのだと思う。君の体なら電気そのものを操れたりするのではないかな?」


 その答えは・・・その通りであった。雷次の体は電気に対しての絶対的な耐性が備わり、どんな電気でも体に与える影響はゼロである。しかも、普段の生活の中にある「静電気」でさえ体内に貯めておくことが出来る様に新化していたのである。


医師2

「雷次君、すまんが自らの意思で電気を操れる様に練習をしておいてくれないか。そうする事で、いざという時に人々の役に立てるかもしれない。」

「君の体に備わった能力は大なり小なり人々の危機を救ってくれるかも知れんからな。」


質問をし、状況を聞いた医師とスタッフ達は部屋から出て行った。

そして、残ったスタッフが今後の説明をした。


スタッフ

「後日、光様のお部屋に私が行きます。それまでに、これからお渡しするメニューをこなし電気を操れる様にしておいてください。では、お願い致します。」


 スタッフは事務的に要件を済ますと部屋から出て行った。

広い部屋に残された雷次は「電気を自分の意思で操る? バカバカしい。」と思いながら、しばらくその場所で考えていた。

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