第4話 水分

 それは「水分」である。

現在、他の惑星からの水分調達はされて無く出ていったら増やす事が出来ないからだ。その水分を他の惑星から調達出来ないものかと調べてみたが、水の惑星など地球の近くには存在しないのだ。


 しかし、約束事を守らない輩がいるのが人間である。


「ルールだがレールだか知らないけどよ、約束は破る為にあるんだよなぁ。ルールを守ったからといって誰か褒めてくれるのかよ。ルールなんか守らない方が都合が良い事が多いじゃねーか。」


「だな。俺等の事なんか何も考えないで作られたルールなんざ、くそ食らえだ。上の連中は皆良い物食って、着て、遊んで暮らしてやがる。こっちはその日をやっとの思いで生きてるってーのによ。ふざけるな!」


「俺等は皆ファミリーだ。上のアホ共とは違う。いつか、ギャフンと言わせてやる。」


 などと言って「イキッて」いる奴らだ。だが、こいつ等もただのアホでは無いので「水」だけを宇宙に捨てても何のメリットも無いし意味も無い。むしろ、この水を利用し大きく儲けられる案を考えているのだ。


もちろん、ルールなど無視した方法でだ。


 水分は厳重に管理されていて取り決めが二重三重と厳しい。ただ、管理の緩い所も一部存在するのだ。世間で言う「光と影」的なものであろう。厳しく厳重な場所も有れば、甘く緩い場所も有るのが人間社会なのである。

 そして、この水分が高値で売買される所がある。その場所が「宇宙で働いているエリート作業員達の職場」である。


 宇宙や惑星で働く労働者は地球で言うエリート中のエリートであり、一般の人間ではこの作業に着任出来ない。宇大(宇宙大学)の宇宙科を卒業した後、難関である「コスモ・ザ・ホウルワールドイグザム」に合格しなければならないのだ。

 また、試験合格後に体力試験や面接試験、コスモ適正資格を取得しなければならない。言わば、地球上の優れた人間達の集団なのだ。


 宇宙での仕事には宇宙空間でマシンを操る者、惑星で鉱石を掘削する者、食事等を運搬回収する者、その他未使用部材の配給や使用済み物資の回収をする者と、さまざまな作業を分業している。これらの仕事には、必ず宇宙船の操縦やロボットの操作が必要になってくるのである。


 そして、このエリート集団が常に良質な物を依頼し続ける物資が、新鮮な食材でありそれ以上に「おいしい水」であるのだ。


 水の管理は国ごとに任されており、我が国では大手飲料水メーカー三社からの物でしか送ることが出来ないのである。

 この飲料水は、宇宙空間で生き延びる為に必要な、宇宙で失われがちな「Ca・Vk・Vd・タンパク質・Na・Rn」等が配合されており、お世辞でもおいしい水とは言えない物である。


 そこに目を付けたのが「ルールを無視する輩」である。奴らが目を付けた物は、清掃やシャワー等に使う大型船で運搬する「巨大貯水船」だ。その巨大貯水船のタンク内に、ほぼ加工されていない「山からの湧き水」を「ペット容器」に入れた物を混入させ運搬するという計画であった。


 奴らは、あらかじめ「おいしい水」を格安で購入出来る入手ルートを構築していて、いつどんな時でも作業を行える様に入念な下準備をしていたのだ。そして、この日が来るのを首を長くし待ち望んでいた。


 給水担当である地球側の作業員は、監視の目を盗み貯水タンク内に「ペット水」をどんどん放り込む。ペット水はズボンの中やポケット、バッグの中といった所に隠し、次から次へと担当作業者に渡されたのだ。


「大きい声じゃ言えないけど、こんなに沢山のペット水を入れたら、掃除やシャワー用の水があまり入らないぞ。トイレも使えなくなるんじゃねぇ? ククク・・・。」


「知った事か。エリート連中に水を沢山買ってもらい、その金で俺等も今よりも良い暮らしをしねーと割に合わねー。そんな事一々心配するなって。」


「そうだ、そうだ。先ずは俺達の生活を考えようぜ。問題が起きたらその時に考えれば良いさ。今は『金』の方が大事だ。エリート連中から、がっぽり稼がせてもらおうぜ。」


 この計画には大勢の人間が関わり連携しないと上手く行かない「裏方」の仕事であったが、宇宙作業とは違い地球上の最下層付近で働く人々の暮らしは貧しく、常に生活は苦しい状態であった。その為、人数を集めるのに苦労はしなかった。


 また、生活貧困者達を食い物にする、宇宙で働くクソエリートがいるのも事実なのだ。この話を持ち出したのも数名のクソエリート達であり、ペット水を売った金の〇%を徴収して小遣い稼ぎをしているという事だ。


 その鮮度の良い湧き水は、かなりの高値でエリート達の手に届くこととなっていたが、高収入のエリート達の良質な水を求める欲求は留まる事は無かった。

 しかし、その巨大タンクは定期便で運営されており決められた周期で動いていたので、一度に運ぶ「ペット水」の量も決められてしまい、中々数量を増やす事が出来ないでいた。数量が増やせないと、皆に渡る「裏金」も増やす事が出来ない。すると、これに携わる人間は焦ってくるのは必然的な事であろう。


【何故、エリート達が「おいしい水」にこだわるかというと、彼らは酒飲みが多く仕事が終わった後は必ずと言って良いほど皆酒を飲んでいる。地球で貯蔵された「ウイスキーやブランデー、日本酒やワイン」等をISSの中で熟成させると地球上で味わう物より3倍~5倍は「風味と味」が良くなると言われているらしい。更に水で割って飲むアルコールに対して「おいしい水」が絶対的に必要であり、この水で作った「宇宙のダイヤ」と呼ばれる「氷」で飲む水割りは、格別に旨いと言うのだ。】


▼ちょっと待ってくれー! この酒が格別に旨くなるってのは、ホンマかいな?


▽これはその通りだ。 私も、もらって飲んだ事があるがこの水割りを飲んでしまったら最後、他の酒は旨く感じなくなるかもな。

少なくとも、地球上にこれを超える水割りは存在しないと思うぞ。


◆そうね、私もそう思うわ。

あの時頂いた「インフィニティーレモン」の水割りは、今でも脳裏に焼き付いて考えただけで、唾液が溢れ出てきそうだわ。


▼クッソー! 俺だけ知らんてかぁー。

お前らズルいぞ。俺が酒好きな事知っとるやろ。 何故、教えてくれんのや。


▽お前は酒が入るとダメ人間になるだろう。それを知ってて教える奴はいないと思うぞ。今教えてしまったが・・・。


◆あー、これ読みながら「インフィニティーレモン」飲みたいわね。

お酒の事考えちゃうから、続きを読むわよ。

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