第37話 ガチバトルを無駄にする大火力
(新星歴4814年6月27日)
神々は魔王からあふれ出した『想いの欠片』を回収するために、それぞれができうることを全力で行っていた。
そんな中自他ともに天才と認めるアースノートが、ノアーナの言いつけをすべて守り、必要な機器を揃え、正に珠玉の活躍を続けていた。
「アート、いつも助かる。俺もできなくはないが自頭が良くないんだよ」
「お前がいてくれて本当にありがたい」
そういってノアーナはアースノートの頭をなでる。
無意識にこういうことを、さらっと行う我らが創造主様。
アースノートの募る想いはまさに爆発寸前だった。
「ノアーナ様♡あーしも少し試したいことがありますの」
「エリッちとダニーのところへ行ってもよろしいかしらですわ♡」
変な言葉遣いにアースノートは自らの顔を赤く染める。
思わぬ自爆に湯気が出そうだ。
「お、おう。そうだな、アートにはいつも籠りっきりにしていたから、たまには外に出たいよな。分かった。だがお前は大切な俺の部下だ。一人では行かせない」
「っ!ひとりでは…イかせない?…一緒に…イきたい♡」
真っ赤な顔をさらに赤くしハアハアしながらモジモジし始めた。
どうしよう。
どうするんだ俺?
「ならば、わたしが一緒に行きます。アースノート、準備ができたらお伝えください。私はいつでも向かえますよ」
助けの女神が降臨した。
思わず俺はアルテミリスを拝んでしまった。
「???ノアーナ様、許可をいただけますか?さすがにノアーナ様が連れていかれるのは自殺行為になりかねませんから」
「ああ、頼むアルテ。アートも良いな?」
「解りましたわ♡」
こうしてアートとアルテがモレイスト地下大宮殿のエリスラーナとダラスリニアが戦っている戦場へと転移していった。
まさかあんなことになるとはノアーナも想像だにしていなかったのだが。
※※※※※
「……【静】!!…きりがない」
けたたましく鳴り響く破砕音に包まれながら、ダラスリニアはもう数えきれない権能の使用に、鈍い疲労がたまっていることを自覚し始めた。
「ちびトカゲ!不敬!!吹き飛べ!」
エリスラーナが渾身の右ストレートをロックリザードもどきの横腹にたたきつける。
「ッ!!!グギャ!!!!」
まともに断末魔を吐き出すこともできずに、数十匹を巻き込みながら吹き飛び、インパクトの瞬間には衝撃波が放射状に放たれる。
堪らずバラバラに吹き飛び崩れるロックリザードの群れ。
今の一撃で百に届こうかというロックリザードもどきがキラキラと輝き始め、赤子の様な男の子と成長しきれていないものは黒い粉になり、別の個体に吸収されていく。
「…回収……っ!」
ダラスリニアが魔石をかざし、吸収を試みるもまた違う群れが狂ったように押し寄せる。
もうかれこれ2刻くらいはこれを繰り返しているのだ。
「きりがない。不敬。こうなったら」
「…エリスラーナ…ダメ……もっと強くなる」
「くっ、ホントに不敬!」
イライラが募る。
はじめ、あまりの多さにエリスラーナは龍化し、ブレスで大半を破壊した。
しかし吸収が間に合わず、残った個体が大幅に強化されていた。
ロックリザードもどきは、もともと存在値は50~100程度。
二人の敵ではない。
だが今2柱を囲んでいるロックリザードもどきは、強いもので存在値3000を超えてきている。
おまけに魔法の類はすべて弾かれるというおまけつきだ。
「…来たれ…ウロボロスの御手!!」
ダラスリニアの暗黒魔法で、おびただしい数の触手のような気持ち悪い長い腕が地面からにょきにょきと生え、ロックリザードを縛り付ける。
「……はああっ…ふっ!!」
ダラスリニアが魔族に伝わる武術で拳に闘気を纏い近くから順に殴り倒す。
次々と鉱石に代わっていき、2歳くらいの銀髪の男の子が糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
「…回収……はあ、はあ…」
エリスラーナも物理で叩き壊していくが、ロックリザードの強度が増し、自らも龍化を使用してしまったため、だいぶ苦しくなってきた。
「どうしよう…くっ…ぐすっ…」
思わず涙が零れ落ちる。
怖いのではない。
信じてくれたノアーナに申し訳ないのだ。
「…ぐすっ…ひん……うああ…」
悔しさが伝播した。
「お前たちの方が大事だ。絶対に無理はするな」
そういって抱きしめてくれて送り出してくれたノアーナ様。
二人は同時に思い出す。
二人の瞳に力がみなぎる!!
「ダラスリニア、本気でいく」
「……うん…私も」
二人の吹き上がる魔力の激しい奔流が竜巻を発生させる。
瞬間、視界が消えたのではという位な強烈な光が当たりを包みこんだ。
カッ!--------------ドドーーーン……
空から大量の鉱石が降り注ぐ。
小さい男の子も数えきれないくらい落ちてくる。
「「??????!!!!」」
後ろを見るとそこには
見たことのない超大型なゴーレムが10mはありそうなレールガンもどきを10本ほど携え、銃口から怪しい魔力の残滓がキラキラと立ち上っていた。
「早く回収してしまいましょう。エリスラーナもダラスリニアも手伝ってください」
アルテミリスに言われ、思わず従い吸収を始める2柱。
意味が分からない。
「ヒャッハーですわ♡もうサイッコー。流石はあーし。どうです魔力に頼らない、物理学を応用した究極兵器の味は?ねえ、どんな気持ち?ねえ、今どんな気持ちいいい!!?」
マッドななぞ生物が馬鹿笑いをしていた。
もう、お前が行けよと言いたい3柱だった。
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