第24話 取り戻し始めた力

柔らかな光が窓から差し込む。

あまりにも長く求め続けていたぬくもりに、ネルは幸そうに微笑みまどろんでいた。


昨日光喜と別れ執務室で待機していると、突如懐かしいノアーナの魔力が拠点を揺るがすほどの波動とともに光喜の私室からあふれ出した。


「呼ぶから、それまでは一人にしてほしい」と言われてはいたが、そんなことは一瞬で消し飛び、はやる気持ちを抑えながらも光喜の私室へと飛び込んだ。


そこで目にしたのは懐かしい魔力に包まれている光喜だった。

だが様子がおかしく、膝から崩れ落ちるように倒れ始めていた。


200年前、自分の目の前で、存在が分割され徐々に消えていくノアーナの様子と被り、頭が真っ白になった。

思わず光喜を力いっぱい揺すってしまった。


ネルは強い。

強すぎる。

今の光喜ではうっかり殺してしまうほどだった。


でも、光喜は優しくネルを許してくれた。

そして熱い抱擁を…ああ♡


両手で顔を抑えジタバタして


「ああああ、こうきさま…♡」


昨夜のことを思い出して一人悶えていた。


「あはは。おはようネル。」

「っ!!!!!」


超至近距離から、光喜の声が聞こえた。


「…こうき、さま…?…?!!!」


昨晩200年ぶりに寵愛を受けた。


何度も何度も…何度も…


そして意識を失うほどの快感と、満たされた幸福感の海の中で果てたのだった。

光喜様の寝所の中で…?!


途端にネルの顔は真っ赤に染まり、心臓は激しく鳴り響く。

そんな様子を微笑ましそうに見ていた光喜は、すっとネルの頬を両手で包み込み、


「よかった。夢じゃなかった…ただいま。俺の愛するネル」


とささやき優しいキスを交わすのだった。


※※※※※


二人はしばらくお互いを見つめていた。


大切な人が目の前にいる幸せは、本当に世界が変わる程、感動的なものだ。

俺が感動をかみしめていると、ふいにネルは顔を近づけてきて、こそっと悪戯っぽく「昨晩の光喜様、とっても素敵でした♡」

とか言って、色っぽく笑うもんだから…あああっ…


あまりの可愛さに、思わず『お代わり』しようかと思ったけど…

布団の中がえらいことになっていて…


気付いたネルは「はっ、はしたないところをお見せして失礼いたしました。あの、湯、湯あみしてまいります」

といって、真っ赤になりながら脱兎のごとく俺の部屋から出ていった。


うん。

色々と、〇×〇×だったからね。

…すんません。


※※※※※


ネルが私室を後にした後、俺は改めて自分の現状に目を向けた。

ネルと結ばれ、俺は相当な力を取り戻した。


※※※※※


ノアーナ・イル・グランギアドール

【種族】魔王

【性別】男性

【年齢】427725歳

【職業】創造主・極帝の魔王

【保有色】(琥珀・緑)・(漆黒・白銀)

【存在値】10443(276500)/25000(276500)

【経験値】1043602(276500000)/244700(276500000)

【特殊スキル】

『※※※※』『不老不死』

『概念創造』『摂理構築』

『戒律支配』『権能』(創造・破壊)

(力・減退・誕生・衰退・発明・荒廃)

(安定・混乱・真実・虚実・動)譲渡済み

『物理魔力回復』


【固有スキル】

『魔神眼10/10』『権能耐性10/10』

『マルチタスク10/10』『魔王威圧10/10』

『運命操作10/10』『拠点登録・拠点間転移』


【保持スキル】

『念話10/10』『物理耐性10/10』

『魔法耐性10/10』『精神耐性10/10』

『基礎魔法10/10』『召還術10/10』

『精霊術10/10』『聖言10/10』

『古代魔術10/10』『格闘術10/10』


【状態】異常・虚実・ドM・能力制限


※※※※※


ノイズのかかった記憶はかなりの領域までクリアになり、やるべきことも何となく理解した。

ネルの中にあった俺の真核は、想像以上に膨大だった。

俺の真核が力を取り戻したおかげで、抜け殻だったノアーナも復活した。

今は俺の中にいる。


主導権が俺に移行したらしく、話しかけてくることはなくなったが、思いは伝わってくる。

今の俺はあり得ないほどに満たされているのだ。


…実は危なかった。

本当にぎりぎりだった。


ノアーナが焦っていたことが、今なら理解できる。


記憶のなかった俺が抱えていた不安や違和感、焦燥感は、本来残っているはずだったノアーナの残滓が『本当はほとんど残っていなかった』からだ。


【虚実】の権能。


そのおかげでノアーナは俺に伝えることができた。

居ない事を嘘だと認識させていたのだ。

世界に対して。


ふと姿見に目をやる。


そこには20歳くらいのたくましい黒髪銀眼の美青年が映っていた。

抑えきれないほど膨大な、白銀に包まれた漆黒の魔力をまといながら。

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