まだ自分が小さかった頃、

夏休みに田舎のおばあちゃん家に泊まりに行った。


夜、どこからか楽しい笑い声が聞こえてきたので、こそっと家を抜け出したら、神社でお祭りをしていた。


沢山の人で賑わっていて楽しそうで、何より、そこにいた人達が笑顔で手招きするもんだから、混じろうと鳥居をくぐろうとした瞬間に、

後ろに引っ張られた。


見ると、怖い顔をしたおじいちゃんがいて、なんで一人でこんなところに来たんだと怒られた。


振り返ると、寂しそうな顔をした人達がいた。


高校生になって、おじいちゃんにその時の話をした。


なんでも、夜中にごそごそと音が聞こえて出てみれば、私が一人でサンダルを履いて夜道を歩いていたらしい。


何度声をかけても、止めようと掴んでも、ピクリともせず、とうとう真っ暗な神社へとたどり着いた。


鳥居の先、境内を見ておじいちゃんは絶句した。


無数の、真っ白な人形の何かが棒立ちになり、こちらを向いていたのだが、それらの顔には白い布が巻かれており、そこに一文字

“顔”と書かれていたそうだ。


それを見ていよいよまずいと思ったおじいちゃんが、力いっぱい私の体を引き戻すと、それらはふっと消えていなくなってしまったらしい。


もし、おじいちゃんが止めてくれなかったらと想像するだけでゾッとする。

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