異世界転生者の大失敗

弥生

第1話

あれ、身体が上手く動かない。

誰かを呼ぼうとしても「うぁ~、だぁ~」と声にならない。


家で寝たと思っていたけど事故にでもあって病人に入れられたのか?


ふと天井を見上げると古い木造の家のようだ・・・

左右を見ると近くに小さな手。


フリフリ、これ、俺の手!?


何が原因か分からないけど死んでしまって生まれ変わっているってこと!?


ここはどこだろう。

親はどんな人かな?

お腹空いたかも・・・「うぇ~ん」と大きめに泣いてみた。


バタバタッと誰か走ってくる。

バンッと大きな音がしてドアが開いた。

お母さんかな!?20歳前後っぽい茶色い髪と眼をした素朴な感じの女の人がきた。


・・・ごはんタイム・・・


やっぱりお母さんらしい。授乳とオシメ交換をされて放置された。

多分家事が忙しいのだろう。腹も膨れたことだしひと眠り。


次に目が覚めた時は部屋の中は薄暗かった。ちょっと怖くて泣いてしまった。

お母さんが来て、電気をつけるかと思ったら【ライト】と唱えて光を生み出した。


な、何と魔法がある世界のようだ。単なる生まれ変わりじゃなくて異世界転生!

ドキドキワクワクが待っていそうです。




何もすることもなく3歳になりました。


魔法があるってことはきっと俺にも魔力があるはずだと、ラノベで読んだように体の中に温かいものが無いか探してみたり、瞑想してみたりと色々やりながら使ってみようとしたけど全然使えない。

ステータス!って誰もいない所で叫んだりもしたけど何も出てきません。

小さいから一人で外には出してもらえないからレベルアップもできません。

そもそもレベルってあるの?


出かけるのは教会のみで、週に1度は家族全員でお祈りに行っている。

神父様のありがたいお言葉とやらを聞きながら皆が真剣にお祈りしている中で、俺は話をよく聞きもせずにひたすら魔力を探している。

いつ、魔法を使えるようになるんだろう。




6歳になりました。

今日は教会で選定とやらをされるらしい。そこでどんな職業に向いているかとかスキルとかが判明するという。

そうか、選定までは魔法なんて使えないのが当たり前の世界なんだな。

俺は転生特典できっと良いスキルが貰える。この農村を出て王都で有名な冒険者になってやる。


教会へやってきた。

同い年の子は3人だけど、選定の場所には大勢来ていた。

どんな職業やスキルなのか気になっているのかな?


1人目の女の子・・・農民/水魔法・栽培

2人目の男の子・・・猟師/風魔法・解体・罠作成


農村だから当たり前な感じの職業でそれなりに喜んでいた。


俺の番だ。皆を驚かせてやる!

・・・・・

・・・・

・・・

・・


職業:無し/スキル:生活魔法


あ、あれ、どういうこと。転生特典は!?


バシッ、お父さんに思いっきり殴られた。

【ちゃんと神様にどんな職業やスキルが欲しいか祈ったのか!】と


え、皆が毎週必死に祈っていたのってそれで職業やスキルが決まるからなの!?


俺が聞き流していた神父様のお言葉でちゃんと言っていたらしい。

神へ祈ることで6歳の選定の日に職業とスキルが貰える。その後も神へ祈りが届いているとスキルが増えるから全員選定の日には集まるとのこと。


職業は滅多な事じゃランクアップしたり新たに得ることはできず、生活魔法は何もスキルが無い人全員に与えられるらしい。

コップ一杯の水、指先から出せるマッチ程度の火、小部屋をちょっと明るくできる程度の光が出せるだけ。


前世があるがゆえにラノベの情報を信じて魔力を探していた俺は・・・負け組になった。


異世界は俺が思っていたのとは全然違う異世界だった・・・



終わり

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異世界転生者の大失敗 弥生 @ya_yo_i

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