第四章 夏の訪れ
それから、毎週火曜日の朝は喫茶店で彼女と話してから講義に向かうようになった。別に連絡先の交換もしていないし、名前でさえあやふやである。お互い、君とキミで呼び合っているし、中国語の講義が終わると別々の講義に向かう。他の場所で出会うこともない、週に一度、他愛もない会話をするだけの関係だ。そんな日々が続き、季節は過ぎ春から夏になった。
「おはよ〜。」
いつものように彼女は僕の正面に座った、何か違和感を感じたが、僕はトーストを齧った。
「話があるんだ。」
いつも通りのミルクティーを頼んだあと、改まって彼女が言った。
「彼氏ができました〜。ほら見て、指輪。」
満面の笑みで彼女は右手薬指にはめた指輪を見せてくれた。
「そりゃ、良かったねぇ。」
違和感の正体はコレか〜、と思いながら僕は相づちをうった。
そこからは彼女の話に彼氏との惚気話が加わった。誰彼ともなく話してるんだろう…、そんなことを思いながら、僕は毎週話を聞いていた。
そして、夏休み前最後の講義、つまり前期のテストを迎えた…。
「来週から夏休みだねぇ…。」
アイスミルクティーを飲みながら彼女は言った。
「後期もこの講義とってるよね?」
「とってるよ。」
「じゃあ、秋からもこの時間はあるわけだ。」
コップの中の氷をストローで回しながら彼女は言った。
「中国語勉強するぞ〜!!って気になるのよね。」
何を言っているのかはよくわからないが、学生の本分は勉強なんだから、やる気が出るのはいいことなんだろう。
「まずは、今日のテスト、ちゃんと単位取れないと、来年もこんなことになるからなぁ…。」
そう、今日のテストを落としたら、来年も再々履修になってしまう、夏休み前に来年の予定が決まるのは良くない…。ちゃんと勉強してきたから大丈夫だとは思うが…。
「そろそろ向かおうか。」
「そうね、行きましょ。」
僕と彼女は席を立った。
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