第2話 名も無き島

俺は今船に乗っている。

目が覚めたら船にいたので、おそらく寝ている間に運ばれたのだろう。

あの真っ暗な部屋からやっと出れた。

今日初めて外に出て気づいたことがある。

太陽はとても眩しいということだ。

直接見つめることはとてもじゃないができない。

今まで薄暗い場所にずっといたから余計に眩しく感じる。

目を細めながら横を見ると何人か吐いている。

俺も船に揺られて吐き気はするが、初めて触れた外の空気は気持ちよく新鮮な気分になる。

空に目をやる鳥が群れをなして飛んでいるのが見えた。

思えば鳥なんてものは本の中とスープの中でしか見たことがない。

初めて鳥を見れたのは感動だ。


当たり前のようにこの船は動いているが風は全く吹いていない。

だがこの船にはそんなこと関係ない。

風の力で動いている訳では無いからだ。

風がないのに進める理由はこの船が魔力で動いているからだそうだ。

名前は魔導船と言うらしい。

1隻造るのに莫大な費用がかかると聞いたことがあるがこの場には少なくとも3隻はある。

そんなにお金が沢山あるなら部屋にベッドの1つぐらい置いて欲しいものだ。

ベッドがないおかげで背中が痛い。


波に揺られながら魔導船が進んでいく先には島が見えた。

真ん中に大きな山があってその周りを森が囲んでいる。

自然豊かで動物もおおそうだが山からは煙が出ていて見るからにやばそうだ。

島に近づくにつれ風も強くなりさすがの魔導船も大きく揺れた。

しかし全く減速することなく突風の中を突き進んで行く。

そのまま順調に進み魔導船は島に到着した。


「全員降りろ!」


強面のおっさんの掛け声で全員船から降りる。

左眼には眼帯をしておりいかにも怖そうな感じだ。

腰にさげた剣は黄金の装飾がされていていかにも高そうだ。

多分何かしらの能力を持っている魔剣なのだろう。


船が3隻はあったおかげで人数が3等分されていたので比較的楽に船から降りることが出来た。

魔導船の出入口がかなり広いというのも一因だろう。


島に降り立ち砂に触れると何かが混ざっていることに気がついた。

これは人間の骨と歯だ。


「早く集まれ!」


強面の男は少しキレ気味に言っている。

もしかしたら怒っているわけではないのかもしれない。

だが顔のせいで常に怒っているように見える。


強面の男は全員が集まったことを確認すると話し始めた。


「貴様らには今日から3年間この島で殺しあってもらう。

ただし3年経たないうちに残り10人になれば強制終了となる。

それと序列だが既に貴様らの腕に刻んでおいた。

自分よりも序列が高い相手に勝利すれ腕の数字が自動で入れ替わる。

自分よりも低い相手に負けた時も同様だ。

説明しないといけないことは以上だ。

あとは各々で考えてやってくれ。」


それだけ言って船に戻っていく。

少しすると魔導船は動き始めた。

何人かが急いで魔導船を追いかけようとするが追いつけるはずもなくそのまま地平線に消えていった。

それでも追いかけようとするものも何人かいたが見えない壁にはばまれそれ以上進むことができない。

俺はその場で呆然と立ち尽くすことしかできなかった。






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