テン・サバイバーズ~生き残りをかけた戦い~

おきた

第1話 序列

ここにはたくさんの子供がいる。

だいたい12歳から16歳だと思う。

ここで生まれた者もいるだろうし孤児もいるだろう。

俺はここで生まれたから外の世界は全く知らない。

かといって外の世界に出たいと思ったことは無い。

ここにいれば何不自由ない暮らしをさせてもらえる。

外に出てもここよりいい生活をすることは絶対にできないだろう。

不満な点があるとすれば誰とも話してはいけないというルールがあるところだ。

それだけは参っている。

人と話せるのはたまに大人が来る時だ。

短い連絡をしてすぐに帰るのだがその時に質問をすることは許されている。

最後に大人が来たのはいつだったかな。

時間感覚がないからどれくらい前だったか分からない。


◇◇◇


「ゴーン、ゴーン」


鐘の音が鳴り響いた。

招集の合図だ。

久しぶりに大人が来たということだろう。

慌てて広間に出ようとするが人で道が塞がっていてなかなか前に進めない。

人の波を突破し広間に出ると圧倒的な威圧感を放つ男がいた。

多分この人が連絡をしに来た人だろう。

続々と人が集まるが全員が男のことを避けている。


「全員集まったかな。

それじゃあ今からスキルと魔力属性を調べる。

全員1列に並べ。」


1列に並び順番にスキルと魔力属性を伝えられていく。

全員が自分のスキルを把握した後に数字が書かれた紙が配られた。


「その紙に書いてあるのがお前たちの序列だ。」


俺の紙には890と書かれている。


「それにしても思ったより数が多いな。

1001番から2000番前に出てこい。」


誰も前に出ようとしない。


「早くしろ!」


男が怒鳴ると少しずつ前に出ていく。


「1001から2000番全員出たみたいだな。

残りの奴はもう帰ってもいいぞ。」


皆なかなか動こうとしなかったが1人が帰るといっせいに動き出した。

1001から2000番がどうなったのかは結局分からなかった。



◇◇◇



「いいんですか?

殺してしまって?」


「所詮持っているのはブロンズスキルだ。

別に要らないだろう。」


「ですがオリジナルスキルを持っていたかもしれないんですよ!」


「もう済んだことが言ってもしょうがない。

それにオリジナルスキルならあの程度の攻撃で死ぬわけが無い。」



◇◇◇



俺が持っているスキルは3つあるみたいだ。

ブロンズスキルが2つ、シルバースキルが1つだ。

ブロンズスキル、シルバースキルが何なのかよく分かっていないが確かにそう言われたはずだ。

スキル名はシルバースキルが鑑定眼、ブロンズスキルがそれぞれ再生、ブースター。

鑑定眼の能力はスキルの解析とかだろう。

再生は名前の通り、ブースターは足でも速くなるんだろう。

魔力属性は雷と光らしい。

試しに昔見た魔法を使ってみる。


「ライト!」


真っ暗な部屋の中に俺の声が響き渡るだけで何も起こらない。

ガッカリして床に寝転がり天井を見つめる。

最近は何もすることがなくて食事、排泄、睡眠以外の時間は天井を眺めている。


「暇だな....」


その声もまた真っ暗な部屋に響き渡るだけだった。


どれほど時間が経っだろう。

鐘の音が鳴り響いた。

本日2回目の招集だ。

今まで1日に2回も招集が怒ることはなかった。

急いで広間に向かうと今までの招集の時と違いスペースに余裕がある。

広間の真ん中には今回も例の男がいた。


「全員集まったかな。」


1度目の招集と同じことを男が言った。


「結論から言うとお前たち1番から1000番には殺し合いをしてもらう。」


それを聞きどよめきが起こる。


「静かに!」


男がそう言って持っていた杖を床に打ち付ける。

空気が震え皆が一斉に口を塞ぐ。


「今すぐ殺しあってもらうわけではない。

それに殺しあってもらうと言っても倒した相手を生かすも殺すも君たち次第だ。

戦うタイミングは自由だ。

順位が自分より高い相手に勝てば自分と相手の順位が入れ替わる。

自分より下位の者の挑戦は断ることは出来ないが自分より上位の者の挑戦は断ることが出来る。

これだけ聞けば最下位の者は生き残れると思うだろう。

だが最終的に生き残れるのは1番から10番になれた者だ。

それ以下のものは全員処分させてもらう。」


ふたたびどよめきが起こり今度こそ収拾がつかなくなった。


「もう戻っていいぞ。」


それだけ言って男は立ち去っていく。

こうして暇ながらも平穏だった俺の日常は男の言葉によって終わりを告げるのだった。























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